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十九話 エルミル慌てる

 

 俺とエルミル二人で仲良く手を繋いで歩いている時。

 いきなり目の前から「ギャーリア充!!」と言う叫び声が聞こえてきた。

 聞こえてきた、聞こえてきたのはいいんだけど……姿が見えない!! 

 この辺りは霧のせいで明るいんだか暗いんだか訳の分からない景色だし、地面はじめじめだしで場所は完全に心霊スポットなわけで。


 そんな中ギャー!! っと叫び声が聞こえたんだからもう、怖くないわけがない。いうならホラー映画の効果音もなしにいきなり出てくるお化けよりも怖かった。


「ぎゃぁぁぁ! お化けぇー!」


 エルミルなんて声が聞こえた瞬間お化け判定してたし。

 俺はまぁ、声を上げるまもなく腰が抜けちゃった訳だけど。


「ちがーう! お化けじゃないですー」


 でもその人いわく、その人はお化けじゃないらしかった。


 ◇◇◇


 「ゼル……私はエゼル! エルフだよ!」


 明朗快活。

 ツインテの小柄な女の子、背中に明らかに身の丈に見合わない弓を持っているのが特徴のその子は言う。

 無いような胸に手を当てて。


「ちょっと待って、早い」


「早くないし! エルフはみんなより行動が早いんですー」


「じゃあ早いじゃん!」


 彼女はぷいっとそっぽを向いてぷんぷんすかすか。


「そうじゃなくって、あなた達が遅いって言いたいんですー! ほら早く名前を言って!」


 はいはい! と催促する。


 まだ会ってから三十秒もたってないんだけどなぁ。でも相手から名前を言われたらこちらもちゃんと自己紹介をするのが武士ってもんだ、やってやるぜぇ!


「おいどん、吹浦家の長男メグミってもんでぇい! てめぇの身長がおらより低くてちょっとうれしいんでぇい!」


 とりあえず一騎打ちをする前ぐらいの莫大な声量で自己紹介してみたけど……。


「…………???」


 目の前の女の子、エゼルと自己紹介した女の子は頭にハテナマークを三個ほど浮かばせて首を傾げていた。

 かわいい。


「メグって自己紹介するとき毎回こんな風にやってるの?」

 

 エルミルは聞いてくる。


「勿論、格好いいでしょ!」


「え、えぇ。かっこいいわね?」


 初めの方は武士の自己紹介の仕方を徹底してやってたんだけど途中からどんなのか忘れちゃって最近ではほとんどがオリジナルになってきちゃったんだよな。

 別にかっこいいからいいけど。


「えっと、私はエルミル。種族はサキュバスよ!」


「ええ! サキュバスが何でこんなところに!?」


「聞かないで……」


 急にシュンとなる、エルミル。

 やっぱり頭の羽が垂れ下がる。あれは犬の尻尾みたいな機能がついてるのかな。

 ともあれやっぱりサキュバスと言う上位種がこんな所にいるのはおかしいらしい。


「うーんと、よくわかんないけどエルミルさんとメグミちゃんよろしく!」


「メグミちゃん!?」


「だめ?」


「だめじゃないけどさ、流石にちゃんって着ける年齢じゃないし」


 男だし。


「でもメグミちゃん、ちっちゃいし」


「それはいうな! てかエゼルの方がちっちゃいじゃんか!」


「女の子は小さい方がモテるのよ! ふふん!」


 ね! そうでしょ! と言わんばかりにエゼルはエルミルの方に標的を変える。


「な、なぜ私の方を見る! ベベベ別に私だってモテてるわよ」


 エゼルとは比べものにならないほどの巨大な胸に手を当ててえっへんと威張るエルミル。

 その様子を見たエゼルは何かを思い出したように小声で呟くと、変な質問をしてきた。


「そう言えばあなた達リア充だったっけ……付き合ってるの?」


 今の状態は付き合ってる……っていうのかな? だいたい一緒にいるし、二人でパーティーだし。


「付き合ってるんじゃないかな?」


「メグ!?」


「やっぱりかぁー!」


「やっぱり!?」


 やっぱりってなんだよ。

 あれ? 俺の発言ダメだった?

 思いのほか二人とも混乱してる気がする、特にエルミル。


「え、え、私メグと付き合ってるの!? さっきの手繋ごうっていうのもそう言う意味!?」


 頬に両手を添えてふるふるとしている。

 頭の羽なんてパタパタと高速で羽ばたいて今にもとびそうである。

 犬の尻尾かよ。


「そりゃそうでしょー! 男の子から手を繋ごうなんていわれたらそれはもう付き合ってくれっていってるようなもんだって!」


 混乱しているエルミルに、都合のいい合いの手をどんどんぶち込んでいくエゼル。それ洗脳だからな。

 しかもそれでちゃんと混乱しちゃうエルミルもエルミルなんだけど。


「まてって、何でそんなに慌ててるんだよエルミル。俺たちはパーティーだから付き合ってるようなもんだって意味なんだけど……」


「もう! 大胆!」


「いや、なにが!?」


 顔を真っ赤にして照れているエルミルはもう話をきこうともしないでいる。

 畜生、これだけは言いたくなかったがエルミルの秘密を言って落ち着かせるしかない!


「エゼル聞いてくれ」


「なになにー二人のエッチな話?」


「んなもんねぇよ!」


 エゼルは一体俺らになにを求めてるんだよ、というかまだあって何分とかなんだけど。あと、俺らが付き合ってるの前提で話さないでほしい。


 俺はエルミルに聞こえるように、わざと大声を出す。


「今からエルミルの秘密を話しまーす!」


「おお! どーいうの?」


「エルミルってな、サキュバスなのにエンダァァァーーー!!」


 今起こった事を説明するぜ!

 俺はエルミルがちっとも落ち着かないからちょっとだけ秘密をばらしてやろうとおもったんだ。

 別にあの有名な曲のサビを歌いたかったんだじゃなくて、エナジードレインができないんだと、言いたかったんだ。

 でも、言おうとした瞬間、化け物じみたスピードで俺の頭に鉄球が飛んできたんだ!


「あら、何を言おうとしたのかしら」


「とある有名な曲を歌いたかっただけです」


「それは良かったわ」


「あぁ、エルミルが落ち着いて本当によかったよ」


 負ったダメージはあまりにも大きすぎるけど。


 ひとまずエルミルが落ち着いた所で気を取り直して。


「そう言えばエゼル? ちょっと聞きたいことがあるんだけど、あなたエルフなのよね?」


「そうだよ?」


「私たち迷ってるんだけど、できれば道を教えてくれない?」


「いいわよ! さぁゼルについてきなさい!」


 まさかこんなに元気よく言ったのに、数分後また迷うだなんて誰が思うだろうか。


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