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十五話 次に向かうのは……

「知らない天井だ……」


 目覚めた目線の先にあったのは見たことのない、知らない天井だった。


 全体的に真っ白で、等間隔に縦長い光魔石が取り付けられている。それがどうにも蛍光灯みたいに見えて一瞬現代に戻ったのかなんて思ってしまう。


 ええっと時間的には王城にエクレアを送った次の日とかだよな……。


 ううむ、どうにもエクレアを王城に送ってからの記憶があやふやだ。


「あら、起きたのね」


 そう言うのはエルミル。

 エルミルはもしかしたら起こしてくれたのかもしれない。


「おはよっ……!」


 起き上がろうとした瞬間何故か頭が痛む。

 こめかみあたりとかじゃなくて全体的にぎゅっと絞られる感じ。


「どうしたの?」


「いや、別になんでもない……んでここはどこなんだ?」

 

 もう起きあがらないで寝たまんま仰向けでエルミルに訊く。


「ここは宿屋よ、普通の宿屋」


 そうなのか、とりあえず一安心。

 またとらわれてるなんて言われたら困ってしまった。


「で、何で俺はここにいるんだ?」


「え、覚えてないの?」


 と、そう不思議そうな顔をするエルミル。

 傾げた時にエルミルの髪がふわっと垂れる、エクレアとは違ったいい匂いがした。

 その匂いに気を取られつつも俺は考える。


「うーん覚えて……ないな」


 さっきも言ったよう、なんだか送り出した後の記憶があやふやだから考えた所で何にも出てこない。


「まぁ、それはそれでいっか。もう朝だし、そろそろ出かけましょ」


「そうだな、あ、ちょっとトイレに──」


 俺の疑問をあっさりと捨て、足早に外出の支度(布団を畳むだけ)を始めるエルミルを横目に、そこまで言って俺は思い出した。


 ◇◇◇


 そう言えばこんなことがあった。


「それにしてもっ今日のメグ強かったじゃない!」


 おもむろにエルミルはそんなことを言って来た。

 その目はまるでヒーローを見るようなキラキラとした目だ。


「へ、 俺が?  馬鹿なのエルミル?」 


「馬鹿って……? さっきあんなにバッタバッタ倒してたじゃない?」


 エルミルはまたしても唖然とした顔。不思議そうにそんなことを続ける。

 バタバタってそれは……何故か勝手に倒れていっただけじゃないか。俺なんて関係ないよ。


 全く、エルミルは分かってないなぁ。


「俺はエルミルに助けてもらわないと生きていけないんだぜ! だって俺は弱いもん!」


 ふふんと、胸を張る。


「ドヤ顔で言われても全然かっこよくないわよ」


 またもエルミルがため息つく。

 何故かどうしてエルミルのツッコミには覇気がない。


「でもあの時のバカ正直な所……かっこよかったなぁ」


 小さく細々と何かエルミルは呟く。

 ……何て言ったんだろ。

 ト、い、なぁ……ぐらいしか聞き取れなかった。


「なんて言ったんだ?」


「なっ、何でもないわよ!」


 柄にもない訳じゃなく焦ってわちゃわちゃとするエルミル。

 

 と、い……そろそろ夜にさしかかって来て赤いような黄色いような空が見え……黄色……あ!


「トイレか?  トイレだな?  なんだよー恥ずかしがらずに言えよ仲間じゃないか」


 そんなの焦ってるエルミルが目の前にいるってのに煽らない訳がない。

 とは言え、トイレに行きたいなら普通に言えばいいのに。強さによらず恥ずかしがり屋さんなんだな。


「ちっ、違うわよ!」


 その叫びとエルミルの左手が光り輝くのを最後に俺の記憶はここで途切れていた。



 ◇◇◇



「どうしたのメグ? そんな私が恥ずかしがって魔法を撃って気絶させたとこに気づいてしまった、みたいな顔して」


「そんな具体的な顔はしてねぇ!」


 もう俺がツッコミに回った。


「って、エルミル。まさか俺に光り輝く鉄球を撃ち込んだのか!?」


「つ、ついよ、本当につい感情的になっちゃっただけなの! だからごめんなさい!」


 急にごめんなさいとその言葉通りお辞儀をする。

 まじかよ、本当に撃ち込んだとは。

 じゃあ記憶が無かったってのは俺が気絶してたからって事か。


「いや別にそこまで謝らなくったっていいよ。気にしてないしね、じゃあどっか行こうか」


 逆にあんなにしっかりと謝られたらこっちが困ってしまう。

 それが気恥ずかしくなってわざと話題を逸らした。


「わぁ、メグやっさしぃー」


 ヒューヒューとはやし立てるようにしてくるエルミルと共に俺は宿屋を後にした。

さぁて……どこに行こうか。

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