十話 入れるか入れないかどうするか。
と、まあエクレアがチームに入れてくれ、と言って来たわけだけど。
どうしようか……よし!
腕を組み。
一瞬で色々と考えて、俺の決めた答えは一つ!
「エクレア、俺達と一緒に冒険をしよう!」
俺は頭を下げているエクレアに向かい、手を差し出す、もちろんそれを繋いで貰えればこれはオッケーということで、繋がれなかったらダメってことになる。
エクレアは一テンポ遅れて顔をあげる。
その顔は紛れもない笑顔だった、さっきまでの不思議そうで不安そうな、何か胸に残っているかのようなそんな顔とは正反対。
お菓子を始めて食べたときの子供みたいな笑顔だった。
そして間もなくしてエクレアは俺の手を繋──。
「はい、すとーっっぷ!!」
──ぐその瞬間、エルミルが間に割って入った。
「おいおい、今いいとこだったのに!」
「そうですよ、今はとてもいい感じでした!」
あのエクレアでさえも乗っているというのに、エルミルは何をしようとしているんだ?
エルミルは俺にしか聞こえないような声で「ちょっとこっち来なさい」と言い、エクレアには「エクレアちゃんはちょっとそこで待っててね!」と言い、俺を少し離れた所へと連れて行く。
◇◇◇
エクレアを置いて少し移動する。
さっきまでほふく前進体勢で疲れた俺はその場の木の株に座った。
それで、
「どうしたんだ急に?」
せっかくここまでつれてきてくれたエクレアを置いて俺を連れてきて。
「どうしたもこうしたもないわよ、ダメでしょあの子をパーティーに入れるなんて」
「ダメ……なのか?」
「ダメよ、そんな上目遣いで私を見つめてもダメです」
ちぇ。
「だったらなにがだめなのか聞かせてもらおうじゃねぇかエルミル」
こういうときは強気でいかないとすぐ押されちゃうからな、俺は堂々と聞く。
「いいわ、教えてあげましょう。実はさっき名前を聞いて思い出したんだけど、エクレアって実は世界でも有名なのよね、ほらあの子可愛いじゃない」
「そんなに有名なのか!?」
驚いた、可愛いしめちゃくちゃ可愛いとは思うけど有名人だったとは……あとでサインもらお。
「そりゃあ一国の王女があんなに可愛かったらすぐに有名に決まってるじゃない。噂によるとこの国の国家予算の三分の一はあの子のファンによる貢ぎ物、だそうよ」
すげぇ、オタクもここまで集まるとすごいんだな。と言うかその資金をほかのところに回せばまた新しく一国ができそうだ。
たぶん名前は…エクレア王国とかになりそう。
「でも、それがだめな理由とどうつながるんだ?」
「あんな子を連れていたら戦闘なんてできたもんじゃないでしょ、しかも仮にあの子が入ったとしてすぐに私たちは国に追われる羽目になるわ」
確かにエルミルのいってることは一理あると思った。
現状戦闘力となり得るのはエルミルだけだし、そんな不安定なところに一人増えるとしたら大変になるのは当然だ。
そんなことを考えていると。
じゃあ今度はメグの意見を聞かせて貰おうかしらと、エルミルは言う。
「じゃあいわせてもらおう、まず一つ目、可愛いから」
ふんふんと、納得するエルミル。
さすがにこれはわかってもらえたらしい。
「そして、仲間は多い方がいいから」
これにもエルミルはうんうんと頷く。
仲間がいると行けるクエストも増えるし、何よりも楽しい。
昔からみんなでわいわいするのは好きだしな。
「で最後、可愛いから」
「……二回目じゃない!」
なんと! なんでばれたんだっ!!
でも焦ってるとは思われたくないから言い訳をする。
「だってかわいいじゃん!」
俺がいうと、エルミルは全く筋違いのことを言ってきた。しかもなぜか名探偵みたいな感じで。
「さてはメグ、エクレアのことが好きなのね!」
そりゃあ助けてくれたし、好きか嫌いかで聞かれたら好きだけど……。
「どちらかというとエルミルの方が好きだぜ?」
当然だろ、一緒にミルクを飲んだ仲じゃないか。
「なっ、なななんてこというのよ!」
「なんてことって、どっちが好きかって話だろ?」
「もう、ほらエクレアちゃん……」
話題を逸らそうとしたのか、エクレアがいたほうに顔を向けるエルミル。
すると固まった……どうしたんだ?
エルミルに続いて俺も視線をエクレアがいた方へと向ける。
「いない!」
そこにはおよそ、エクレアと呼べるものはいなくなっていた。