ゴルゴタからエマオへ
「・・・めよ、目覚めよ」
私は誰かの声に気付き、眼をあけた。どうやら私はカタコンベのように薄暗く狭い部屋に横たわっていたようである。
次に声の主を見つけようと上体を起こして、周りを見渡した。赤色の液体に満たされた数十個の水槽、テレビのようなモニター、無数の巨大な時計の針、さながらSF映画の1シーンのようであった。しかし映画のセットとは違い、ところどころ塗装が剥げていて明らかに人が使っている形跡があった。
しかし声の主らしき人は見当たらなかった。私の幻聴であったのだろうか、そもそもここは一体何処なのだろうか。私は今までのことを思い出そうとした。
「確か私はクーデターに参加し、そして撃たれて・・・」どうしてもここまでしか思い出せない。しかし、あの時受けた傷はそのまま残っていて、しかし出血もなく、銃創ははどす黒く固まっている。もしかしたらギリギリのところで助けられたのかもしれない、だとしたらクーデターはどうなったのか?いろいろと思いを巡らせていると、さっきの声がまた聞こえてきた。
「我が名はマーカス。残念ながら貴様は死んだ。銃で撃たれてな」
信じられない
確かにあれだけ撃たれたら死なないほうがおかしいとは理解できる。しかし死というものはそう簡単に納得のいくものではない。そもそも死んでいるとしたら私は一体どうなっているのか。
「ここはどこだ、なぜ私は死んでいない」
「だが、機会を貴様に授ける」
その声は私の質問を遮るように続けた。
「貴様は死の直前に自らの進むべき道と敵を見つけることができた。よって適正資格ありと判断し、第8区画に転生させる」
私はなにを言っているのかよく理解できなかった。いったい何を言っているのか転生とはいったい?
「存分に志を遂げよ」
直後、薄暗かった部屋は一気に明るくなりまるで昼のようになった。同時に、巨大な時計の針が動き出し、赤色の液体は沸き立った。そしてテレビジョンは風景を映し出した。
青い草原、石でできた民家、そして城塞のような建造物、歴史の教科書に載っている大昔の風景のようであった。
「ここが貴様の転生先。地球において中世のような世界ボルゴニア。用意は整った。今すぐに送る」
マーカスはそう宣言すると、水槽から一気に赤い液体があふれ、、
私の体を飲み込んだ。