貴女を知る
俺は、今自分の食欲からユイを逃がした筈なのに。飢えがどんどん酷くなる。このままだと、俺が俺で無くなってしまいそうだ。ユイ。やっぱり俺の側にいて欲しい。貴女を守りたいと言いながら、貴女を食べてしまいたいと思う俺。あまり、我が儘を言わない俺が、貴女に対しては、色々と我が儘になってしまう。
その時、後ろから、ドアが開く音がした。振り替えると、そこには、お父さんとお母さんがいた。そしてお母さんの腕には、
―ユイ。
そう思うや否や我ながらあり得ないスピードでユイに迫った。しかし、それをお父さんが俺への脳天チョップで止めた。
「お前、そんなにがっつきすぎると、嫁に嫌われるぞ。」
その言葉で俺はハッとなる。ユイには嫌われたくない。それにしてもお父さん。人間の姿で俺を撃ち落とすあたり、すごいなと思う。落ち着いた俺はユイを見る。安らかに眠るその姿は、俺の荒んだ心を癒してくれる。貴女に対して食欲は、消えない。寧ろ、貴女を守りたいと思う気持ちと、食べてしまいたいとがせめぎあうこの心理状態は寧ろ心地よく感じる。
「ブラッド。遂に花嫁を見付けたのね。あなた、欲しいものや我が儘を言わないから心配してたけど、あってよかった。」
―はい。お母さん。
「あら?いつものようにママといってくれればいいのに。」
―恥ずかしいのです。
「ふふっ。そう。私はね、ブラッドに一目惚れさせたあの子のことをもっと知りたい。そこでね、彼女には本音を話してもらおうと思って」
ギクッと俺はなる。やっぱり刻印を刻んだからといっても内心不安だ。
「相互理解。今回は多少一方的だが、仕方ないだろう。」
その言葉に俺はうなずかざるおえなかった。そしてお父さんは、ユイに魔法をかける。