息子の拾ってきたもの
「セバス。ノックもせず、部屋にはいるとは。」
「も、申し訳ありません。余りの一大事に我を忘れておりました。」
私が妻と仲睦まじく過ごしているところに、セバスがやって来た。普段なら、どんなことがあっても、ノックを忘れない彼が、忘れるとは、どんなことが起きたのか。そして......
「ところでセバス。貴方が持っているそれは何かしら?」
妻のリルムが尋ねる。
「それと言ってはいけません。このお方は坊っちゃんの花嫁なのです。」
「何だと!!息子はまだ8才だぞ。」
そうだ、あり得る筈がない。確かに私の種族特有の黒のオーラに包まれているのは、息子と同年代の人間のサイズだ。でも、あり得る筈がない、そもそもまだ人形をとることすらできない息子は、本来の姿のままだ。それを怖がらずに接してくれるものはいない。私でも、100年かかって最愛の妻と出会えたのだぞ。
「まぁ。あの子好きな子が出来たのね。」
異常事態なのに妻は、マイペースだった。そこが私の好きなところだが、それを分かって言っているのだろう。
「リルム。」
「あなた。私たちが、たった、100年で結ばれたのだから。私たちの息子が8才で見つけてもおかしくないわよ。」
「何か飛躍しすぎていないか。」
「そこは、気にしないで頂戴。ところで、セバス。あの子は、もう人形をとれているのかしら?」
「はい、人間のサイズで8才くらいの子供です。」
「ホントに!?」
妻は目を輝かせてそう言った。妻は息子の幼少時代の人形の息子を見たいと言っていたから。嬉しそうだ。本来なら。人形をとれるのは十五才位くらいからだ
「っと。その前に息子のお嫁さんを見てみないと、」
妻に頼まれて、私は息子が纏わせたオーラを解く。そこには、人間の中でも格別美人の仲間入りを果たす顔。そして何よりも
「ねぇ、あなた。この背中の模様。これって。」
「息子が、本当に嫁を持ってきたぞ。だが、ますます信じられない。この模様は、お互いが認めないと出来ないし、そもそも自分の嫁が拒否れば、死んでしまうのだぞ。この子は、それを理解しているのか?でなければ今頃無惨な死体となっている筈なのに.....」
「ねぇセバス、何であの子は、貴方に自分の花嫁を預けたのかしら?」
「はい、このままだと。自分の花嫁を食べてしまいそうだとおっしゃっていました。」
「何だと!」
もう、今日はどれだけ驚けばいいのだ?だが、ヤバイぞ。このままだと、その鬱憤が、城に当たられたら、確実に壊される。
「リルム。この子を連れて息子のところに行くぞ。」
「分かったわ。」
色々と言ったが本当は、息子の嫁が来たことの喜びとわずか8才で見つけた息子に対する嫉妬を抱え、息子の待つところに向かう。