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第二話 再会

 人肌に暖めたタオルで体を擦るとすぐに元気を取り戻した。今度は触っても噛み付いたりはしなかった。猫の前に暖めたミルクを置くがまったく飲もうとしなかった。

「おーい飲まないのかよ」

 ミルクに指をつけ差し出してみた。すると匂いを嗅ぐと指を舐めた。それを何度か繰り返して皿を出したが自分で舐めようとはしなかった。結局全部指で飲ませた。

「一人で飲めるようになろうな」

 頭を撫で俺は寝ることにした。

 布団の冷たさは嫌いだ。すると、足元から猫が入ってきた。俺の顔のところまで来て丸くなって眠り始めた。その時初めてこいつは雌だとわかった。

「飼うなら名前を決めなきゃなあ」

 枕元にある写真立てに手を伸ばす。そこには俺と女の子が写っている。思い出の大切な写真だ。

「よし、お前の名前はアイカだ。よろしくな」


 朝、昨夜雪が降ったせいで寒くて暗い朝だ。幸運なことで学校は休みだ。一人だと時間を好きに使えていいこともある。

 寒さに耐えられなくなった俺は腹の側にいるであろうアイカを引き寄せるために手を伸ばした。が、アイカはいなかった。布団をめくってみても毛がついているだけで本人がいなかった。

 こたつの中もテレビの裏も部屋中探したがアイカはいなかった。

「どこに行ったんだ」

 部屋を見渡していると首筋を冷たい風が撫でてきた。白く曇った窓が少し開いていた。完全に閉めていたはずなのに猫一匹が通れるぐらい開いていた。

「あいつ」

 急いで外に出ると地面は薄っすらと氷が張っていた。俺は転ぶことも考えず辺りを探し始めた。


 家から出て猫がいそうなところをくまなく探して走った。雪が少し積もっていたがどこにも猫の足跡など無かった。もしあったのだとしても人間の足跡で消されていた。

 分かれ道、ここでした俺の判断がもし違ったらアイカを拾うことは無かった。それどころかアイカはもう……。嫌な予感が走りアイカのいたところへと走った。

 

 箱があった場所にアイカはいた。雪の上に座ってただじっとしていた。

 アイカの前には小さな女の子とその母親の二人がいた。女の子はアイカに何か与えていたようだがアイカはそれを食べようとしなかった。俺はそれを遠くから見ていた。

「ママ、猫さん連れて帰ってもいい?」

「どうしましょうかねえ」

 アイカを連れて帰る。それもあいつの生きる道なのだろう。俺に飼われるよりあのこの方がずっと可愛がってくれそうだ。

「お願い!」

「わかったわ、いいわよ。連れて帰っても」

 女の子がアイカを抱きかかえる。これでいいんだ。俺は何も言わずここで見送ろう。

 熱くなった。久しぶりに心が熱くて何かが溢れ出そうになった。

 突然、アイカが落とされた。女の子に噛み付いたのだ。

「アイカ!」

 無様に地面に落ちたアイカを呼んだ。俺に気付いたアイカは俺の胸の中に飛び込んできた。冷たい。冷たいアイカを強く抱きしめた。

「貴方の猫なの?」

「はい、そうです」

「そう、気をつけなさいね」

 泣きじゃくる女の子を連れて母親は帰っていった。

「どうして出て行ったりした。心配したんだぞ」

 アイカを強く抱きしめその場に崩れるように座り込んだ。服が濡れるとか人の目がとかそんな物どうでもよかった。頬にアイカを押し当てアイカの存在を確かめた。

「アイカ、もう俺の前からいなくなったりしないでくれ」

 アイカは熱く流れる俺の気持ちを舐めながら小さな声で鳴いた。


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