↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
86/150

ベランダの少女

 美術部のベランダからは校舎の西にあるグラウンドが見渡せた。今はグラウンドには誰もいないようだった。

 高坂は湧哉がいることに驚いた顔をしていたがすぐに眉をひそめた。

「なんで畑原君がいるわけ?」

「紗希の事探してたから連れてきた。それからこれ。買ってきといたから」

 木梨は機嫌の悪い高坂に対して全く動じた様子を見せず、手に持っていたビニール袋を手渡した。高さはは座ったままそれを受け取った。

「じゃ、私戻るから後よろしく」

 木梨は私の出番は終わったと言わんばかりに去ってしまった。一方、高坂は袋の中から紙パックの紅茶を取り出しながら湧哉に要件を聞いた。

「私を探してたって、なんか用なわけ?」

 高坂は相変わらず不機嫌オーラを振りまいてはいる。彼女がベランダにいるとは思わなかったので準備ができていなかった湧哉だったが、ここまで来たら何もせずに帰るわけにもいかない。とりあえず要件を伝えることにした。

「学校に来てるならなんで教室に顔出さないんだよ」

「別に。私がいなくても問題ないでしょ」

「そういう問題じゃなくてだな」

「じゃあ何が問題だっていうの!?」

「澤がこのままじゃ高坂がどんどんクラスで孤立しちゃうんじゃないかって心配してたぞ」

 高坂は全く湧哉の方を見ることはなく外を見ながらが湧哉の言葉を聞いていたがに澤の名前が出るとこちらを振り向いた。

「……詠嘉が?」

「高坂がどう思ってるかは、まあこの間の話から少し想像できるけど、澤はお前の事心配してるみたいだぞ」

 高坂は困惑顔をしたままグラウンドに目を向けた。手に持っていた紅茶も床に置き、膝を抱えてしまった。

 澤の名前が出たことで心境が変化したことはわかったが、何を考えているのかまではわからない。どうなったにしろ今すぐにここから動くことはなさそうだった。

「じゃあ俺そろそろ行くから」

「……」

 高坂は湧哉の言葉に反応を見せなかった。

 窓から体を離し、美術室内に顔を向け、今度は木梨の姿を探した。澤は高坂だけではなく、木梨のことも心配していた。彼女にも一言伝えるべきだろう。

 木梨は他の生徒たちと同じようにキャンバスに向かっていた。ただ、彼女の場合は真剣な顔と言うよりはただただ無表情だった。

「木梨、こっちのこともあるんだろうけど、クラスにも顔見せろよ」

「……」

 集中しているのか、木梨は反応を見せない。高坂は感情が表に出てくるのでわかりやすかったが、木梨はそういうことがないので聞いていたのかどうかすらわからなかった。

 木梨がいったい何を描いているのかと湧哉はキャンバスを覗き込んでみた。

「これ……何描いてるんだ?」

 思わず口に出てしまった。木梨のキャンバスは色々な色の絵の具がぐちゃぐちゃに置かれただけに見えた。周りの生徒のものを見渡してみるが肖像画だったり、風景がだったりと見ればすぐにわかるものだった。木梨と同じようなものを描いている生徒はいないようだ。

「紗希何か言ってた?」

「え? いや、具体的には何も。でも澤が心配してるって言ったらおとなしくなったな」

「そっか」

「なあ、あの二人って何かあったのか?」

「ううん」

「でも高坂のあの反応は―――」

「何もなかったからああなっちゃたんだと思う」

「?」

「あの二人、元々仲良かったから」

 木梨は筆をおくと高坂のいるベランダの方を見た。

「お互いに思うようにいかなくてすれ違っちゃったんだと思う」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。