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友人カドカド

「それじゃあ今日はここまでだー。次回までに五十七ページの英文を翻訳してくるように」

 四限目の授業が終わり昼休みになった。英語担当の谷口が教室を出ていくと皆昼食の準備をし始めた。席を立って学食、または購買に向かう者、自分の弁当を広げる者と様々だ。

 午前中、休み時間ごとに西谷にちょっかいを出されるという悲劇にあった湧哉だったがさすがにこの時間の襲撃はなかった。そのことに安心しつつ教室の後ろにあるロッカーから財布を取り出した。同時に一緒にしまってあった例のデジカメを手に取る。

(奥崎先生のところに持って行った方がいいか?)

 教頭が校内で撮った写真と奥崎は言っていた。ならばこの中にそれがある可能性は高い。昨日の電話を最後に奥崎から連絡はない。今日の授業の準備もあるのだろうから仕方がない。実はどこかの休み時間に職員室に持って行こうとは思ったのだがそこにいるとは限らない。それに教頭が出くわすことを考えるとわざわざ職員室に行くのは憚られた。どちらにせよ、西谷の相手をしていて無理だったのだが。

「ハタハター、今日飯どうするのー?」

 湧哉のことをハタハタと呼ぶ人数は限られている。振り返るとそこにはおとなしそうなぽっちゃり男子と気が強そうなスポーツ女子が。 

 男子は門紅かどべに ゆう、隣の女子は門白かどしろ ゆう

 一見すると訳の分からない組み合わせだが、この二人は幼馴染で昔からの知り合いらしい。湧哉とは去年同じクラスだったことがきっかけで知り合った。

「俺、今日は学食だ」

「また学食? 最近付き合い悪くなーい? 彼女でもできたの?」

「言うほど悪くないだろ。昨日は一緒に食べたわけだし。それと俺にはお前たちみたいな浮いた話はない」

「僕たちは―――」

「―――付き合ってない!!!」

「相変わらず見事な連携で……」

 名前も似ていて息もピッタリ。長い付き合いの賜物だろう。

「なんで私が悠と付き合ってることになるのかわかんないんだけど」

「それは僕のセリフだよ、僕はもっと大人の女性が好みなんだから」

「それは私が子供っぽいってことか?」

「遠回しにそう言ってるんだけど」

「痛い目にあいたい様ね」

「ちょっと!? ぼ、暴力反対!」

 結が悠の首に腕を廻し締め上げようとするが悠は腕と首の間に手を挟み何とか抵抗している。まるで夫婦漫才だ。付き合っているとからかわれても仕方ないだろう。

 この流れになると長いので湧哉はここを離れることにした。学食も早く行かなければ席がなくなってしまう。

「んじゃあ俺、学食行くから」

「ハタハタ、僕を見捨てるのか!?」

「ああ、ガンバレヨー」

「ちょっとハタハター!!」


 悠の叫びを堂々と聞き流した湧哉はデジカメをブレザーのポケットにこっそりしまうとロッカーを閉めて教室を出た。

 奥崎は普段、昼食は学食で済ましている。行けば会えるだろう。

 廊下に出た湧哉の耳に悠の悲鳴が聞こえてきたが、やはり気にする様子はなかった。


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