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お礼の言葉は

「いろいろなことで時間が足りないな……。門紅の討論会の準備に、記者への対策、文化祭前の準備。まったく、どうしてこうも色んなことが重なるのか……」

「優先順位を決めて高いのからこなしていけばいいだけです」

「言われなくてもわかってる。愚痴を言いたかっただけだ。とりあえず私は仕事を片付ける。もうすぐ終わるからその間に古野濱を探してきてくれ。昇降口で合流しよう」

「わかりました。それじゃあ先輩探してきます」

「ああ、あとでな」

 湧哉と阿良田はパーテーションの囲いの中から出るとそのまま職員室から廊下へと出た。

「俺先に教室に鞄取ってきます。阿良田先輩はどうします?」

「俺も荷物を取りに行こう。古野濱も教室にいるだろうから声をかけてくる」

「じゃあ俺も行きますよ。うちの教室途中ですし」

「いや、そのまま昇降口に向かってろ。こっちに来る必要はないからな」

「え、そんなに大した距離じゃないんですから別に……」

「いいから。先に行ってろ」

「は、はい……」

 どこか釈然としなかったが阿良田と別れ湧哉は自分の教室へと向かった。

 教室内にはまだ人が残っていた。屋台の装飾品やカツサンドを持ち運ぶための籠を作っている。そのクラスメイト達に軽く声をかけ、自分のロッカーから鞄を取り出した。

「あ、畑原」

 ロッカーの扉を閉めるとそこへ高坂と木梨がやってきた。

「どうしたんだ?」

「いやあ、ええっと……」

「?」

「さ、澤から文化祭でおすすめのクラスがあるって聞いたんだけどどこのクラス?」

「あー……そういえば何組かは聞いてなかったな。そのクラスの先輩とこれから会うからあとで連絡しようか」

「あ、ああ! そうしてくれると助かる。じゃあよろしく!」

 それだけ言うと高坂は木梨を残して一人でどこかへ行ってしまった。

「なんか様子が変じゃないか、あいつ」

「うん」

「大丈夫かよ……」

「ほんとは君にお礼が言いたかったらしいんだけど、紗季はそういうのに慣れてないんだ」

「礼って別に大したしてないぞ……」

「紗季にとってはいいきっかけになったからね。あの子的には言っておきたかったんだよ。まあ言えなかったんだけど」

「なんか印象変わるな」

「うんうん。このままいい方向に転んでくれることを願ってるよ。あ、わかったら三年生のどのクラスか教えてね」

「ああ」

「それと美術部の作品も見に来てね」

「あの絵、完成、したんだよな?」

「うん。じゃ、よろしくね」

 木梨は手をピッと顔の横まで上げるてあいさつすると高坂の後を追っていった。

(これはこのまま先輩たちのところに行けば降りてきたときに教えられるよな)

 そう考え湧哉は鞄を手に三年の教室がある上の階へと向かった。

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