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町の変化

 アルバムをめくっていくと湧哉も知っている教員の顔が見られるようになった。最後の方には奥崎の姿もあった。

「今残ってるので一番古い先生って誰なんですか?」

「一番古いのは田島先生だ。あの人は開校当初からいる」

「田島? ……誰ですか?」

「……」

 田島が誰なのかわからない湧哉に対して奥崎は冷たい視線を向けた。今日で何度目だろうか……。

 考えては見たがやはり誰だかわからない湧哉は悠に助けを求めた。

「田島先生は校長補佐だよ。行事の時はいつも校長の隣に座ってるじゃないか」

「全然わからないぞ……」

「長身で眼鏡かけてる。ほんとにわからないの?」

「正直、授業受けてない人はほとんどわかんねえ……」

「他の先生ならわかるけど……。入学式の司会とかもやってたんだよ」

「学校行事への関心がないんだろう」

 悠、奥崎共々あきれ顔だ。そんな顔をするほどなのか疑問なところだが二人からすると知らないほうがおかしいらしい。知らない者の方が少ないは確実だが。

「まあ俺のことは置いといて。開校した時からいるんなら旧校舎のこと反対だったんじゃないですか?」

「確かにそうだが結果としては取り壊された。今となってはそれはどっちでも関係ない。さっき門紅にも言ったが重要なのはこれからどうするかだ」

「田島先生も何か活動しているんですか?」

 みんなに知ってもらう活動をすることにした悠が興味を持ったようだ。田島が何か活動してるなら参考になりそうだ。

「田島先生は記念館の管理責任者として地域行政と連携して何か催しができないか掛け合っている」

「地域行政ですか……。それはなかなか難しそうですね……」

「そうなのか?」

「今この辺は開発が進んでてどんどん新しいものを取り入れてるんだ。だからあんまり古いものには重点を置いてないんだよ」

「じゃあその田島先生がやろうとしてることは―――」

「町の上役からすれば迷惑だろうな。今更片づけたものを引っ張り出されても歓迎はされないさ」

 駅の周りは現在も新しい建物が増えている。学生からしてみればそれは喜ばしいことだ。特に寮生である湧哉は歩いていける距離で買い物もできることは便利なのだ。

 その一方で昔からあるものは町の片隅へ。駅を中心に広がる新しい波は昔からある風景を飲み込んでいるのだった。

「新しいものが増えてくるのはいいですけど昔からあるものが邪魔者みたいに扱われるのはなんだか悲しいです」

「これからそうならないように頑張るんだろ?」

「はい。僕、頑張ります」

「やりたいことがあるっていいな。俺もなんかあればいいんだけど」

「畑原、お前にもやることがあるだろう」

「へ?」

「課題が山積みだろ? 期限は来週だ」

「うげぇ……」

 しばらくは課題をやりながらの日々が続きそうだ。遊んでる時間もとれないだろう。

「やることっていったら奥崎先生だってここ来てから何もやってないじゃないですか。仕事があるから来たんじゃないんですか」

「なに、急ぎの仕事じゃないからな。私は気長にゆっくりやるさ」

 どうやら奥崎の期限は先の様子だ。余裕の表情の奥崎にはこれ以上何も言う気にはならなかった。

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