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今と昔

 湧哉が連れられたのはロータリーにあるケーキ屋だった。男だけで入るには少々可愛すぎるような内装だったが同じロータリーの店だからか店長は気にすることもはなかった。

「とりあえずここで。ここの店は男子だけではいるのはハードル高いから大丈夫だろう。さてと」

 店長は店の隅に湧哉を立たせると普通に買い物を始めた。

「あいつ、どこ行きやがった」

 そっと外の様子を窺うと店の前で岩木がきょろきょろと辺りを見回しているのが確認できた。いかにも機嫌の悪そうな顔だったが、あきらめたのか退屈そうに店の前から立ち去った。一方の記者の姿は確認できなかった。ここまで追いかけてきたことを考えるとまだこの辺りにいるはずだ。姿が見えないの落ち着かなかった。

「そろそろ大丈夫か?」

 会計を終えた店長は先に外へ出て辺りを確認した。安全を確認した店長は手で出て来いと湧哉に手招きをした。湧哉は恐る恐る辺りを確認しながら店の外へと出てきた。

「大丈夫、そうです」

 辺りには記者も岩木もいなかった。記者がどこに行ったのかはわからなかったがとにかく駅ロータリーにいないことは確かだった。

「なんとも物騒そうなのに追われてたみたいだけどありゃなんだったんだ?」

「待ち伏せされて話聞かせてくれって言い寄られたり、因縁つけられてそれに友達が噛みついたり……」

「災難続きってことか」

「そんなところです……」

「とにかくここじゃなんだし店まで行こう。そのほうが落ち着けるだろう」

 湧哉は店長の提案でひとまず喫茶店『MANNER』こととなった。

 

 昨日と同じく店長の私室へと通された。

「ほんとに助かりました」

「大したことはしてないって。これでも食べて落ち着いてくれ」

 店長は先ほど買ったケーキを湧哉の前に差し出した。

「いや、悪いですよこんなの」

「いいっていいって。君の先生につけとくからさ」

「奥崎先生にですか……?」

「ああ」

「お金払います」

「ハッハッハ。冗談だよ。今回は俺のおごりだから遠慮しないでくれ」

「それなら……」

「クックック。あいつも相当怖がられてるな」

「そういえば奥崎先生とは高校の同級生って聞いたんですけどどんな生徒だったんですか? 本人は何も教えてくれないんですよ」

「そりゃそうだろうな。あいつの学生時代は嵐の中心地にいるようなもんだった。昔はもっとなりふり構わない感じだったけど今じゃすっかりおとなしくなっちまったな。人間変わるもんだ」

「なりふり構わないのは今もありましたけどね……」

「あいつ、相変わらず嵐のど真ん中にいるのか。そういうところは変わらないのな」

 店長は学生時代を思い出しているのかその顔は奥崎が時たま見せるものに似ていた。昔を思い返すときはみんなこんな顔をするんだろうか? もし自分が奥崎や店長と同年代になったとき今のこの状況を思い返してあんな顔ができるとは湧哉には思えなかった。だが店長が言ったように人は変わる。きっと湧哉もその時が来れば同じ顔をするはずだ。

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