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百物語。  作者: 日曜
2/9

二話 灰皿

 「俺がバイトしてたカラオケの話なんだけど、怖いってわけじゃなくさ、気味悪い話があったんだよ。


 その部屋はさ、所謂いわくつきってやつでさ、別に幽霊が出るわけではないんだけど、エアコンもつけてねーのに寒いだとか、勝手にグラスが落ちただとか、モニターの電源が勝手に落ちるだとか、いくら調整してもハウリングするとか、しょっちゅうスピーカーがイカれるだとか、そういう怪奇現象未満の事情が矢鱈多い部屋だったんだよ。


 バイト連中も、できるだけその部屋には人を通さないようにしてたんだ。別に人を入れても、絶対に何か起こるってわけでもなかったから人が多いときなんかは入れてたけどな。


 でよ、だんだんそのカラオケ、さもありなんって感じで人気がなくなってったんだよ。幽霊騒ぎってわけでもなかったから、お祓いとかもしなかったんだよな。そのせいか、悪い噂つーの?それが広まっちゃったみたいでさ。肝試しなのかなんなのか、わざわざその部屋を指定する奴等までで始めた頃、そいつは来たんだ。


 そいつは普通のサラリーマンみたいなただのスーツ姿でよ、あんまり印象は残ってねーんだけど、1人で『その部屋』を指定したんだ。

 肝試し連中で慣れてんで、俺は普通にその部屋にその男を通したんだ。


 部屋にはさ、曲を選曲するためのリモコンとマイク、それと灰皿が2つづつ用意してあったんだ。この部屋だけじゃなく、全部の部屋がそうだった。


 でよ、2時間1人でその部屋にいた男は、何事もなかったように去っていった。まぁ、何も起こらない日もあったし、俺は別段気にもせずその部屋を片付けに行ったんだ。


 そこで、それを見た。


 荒らされてるとか、グラスが割れてるとかじゃない。言うなれば、それは俺らが見慣れた、客が帰った後の光景だった。マイクやリモコンがテーブルに乗っていて、モニターではアーティストが自分の曲の宣伝をしてた。ごく普通の光景。

 だけどよ、だからこそ異常な光景だった。


 マイクもリモコンも、そして灰皿も、2つとも使われていたんだよ。


 そこにあるのは、俺には見慣れた光景だった。何人かで入った部屋ならな。


 ま、それだけなんだけどよ。その後、その部屋では異常は起こらなかったってだけの話。


 部屋か?そのまま片付けたよ。奇妙だったけど、別に怖くはなかったからな。


 まぁ、片方の灰皿の吸い殻に口紅が付いてたのだけは、不気味だったけどよ」





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