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百物語。  作者: 日曜
1/9

一話 影

 「始めに言っておくと、これはただの作り話だ。




 俺が小学生のとき、たまたま1人で校庭にいたんだ。何の用があってそこにいたんだかは憶えていないけど、その時の光景はよく憶えてる。


 俺の通っていた小学校にはさ、鉄棒のとなりに登り棒があってな、その隣にはうんてい。その奥には桜の樹が植わってたんだ。鉄棒の反対には確か………、小さな畑と小山。あと百葉箱なんかがあったよ。


 でな、その鉄棒の前を通って帰ろうとしたんだけどさ、ある事に気付いちまったんだ。


 もしかしたら気付かないでいられて、それはすんげー良いことなんだろう。あり得ないものを見ずに、気付かずにいられるってのは、幸せなんだぜ?


 ………何に気付いたかって?




 鉄棒の影だけ、他の影と逆に伸びてたんだよ。




 夕焼けに染まる校庭で、ほとんどの影が校庭の端のフェンスに伸びているのに、鉄棒だけが校庭に向かって伸びてたんだ。


 な? 気味悪いだろ?


 だけど当時の俺はそれを気味悪いと思わず、面白がって近づいていったんだ。


 近付いても影は校庭に向かって伸びていた。夕日が眩しくて、鉄棒が真っ黒に見えたのを憶えてる。

 そんでな、俺は面白がってその鉄棒をくぐる事にしたんだ。その真っ黒に見える鉄棒を。


 やめろ?


 いや、もう過ぎた話だしな。実際、くぐっても何もなかった。それで興味を無くした俺は、そのまま家に帰ったとさ。え? オチがない? 怪談なんて普通はオチがなくて当たり前なんだよ。


 オチがあったら、俺は今ここで話してないかもしれないんだぜ?


 ただまぁ、安心しろ。この話にはオチもある。何せ、作り話なんだからな。


 翌日な、俺は学校に行って皆にこの話をしたんだ。もちろん信じてもらえなかったし、証拠なんてあるわけがねぇ。だから放課後、皆をつれてもう一度その場所に行ったんだ。だからって、例に漏れずその場所は普段通り。全ての影が同じ方を向いていたよ。




 夕日を浴びて、全部校庭の方を向いてな。




 クラスメイトは俺を嘘つき扱いしてたけど、俺はそれどころじゃなかったね。だって、それってつまりあの時逆を向いていたのは鉄棒以外の影だったんだから。


 え? 作り話なんだろって? そうだよ。作り話。




 くぐるわけないじゃん」





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