51:真実Ⅳ
アゼルたちが去り、国王夫妻が去り、サシュも帰っていった。そうして訪れた静かな時間。ステラが何を言おうか迷っていると、微かな笑みと共にカーラが口を開いた。
「国王様夫妻と一緒でねぇ……私達にも子供が出来なかった……」
否、だからこそ、国王夫妻と懇意にすることができたのだ。子供が欲しいのに子供ができないという悩みを共有していたから。自然王妃の話し相手になることの多かったカーラは、カシムが城にいる間はほぼ王妃と共にいた。時折得意の菓子を持参して小さなお茶会などを開いたりもしていた。
「だから、あの方々に子供が出来た時は本当に嬉しくて、四人で泣いたのよ……」
「それがまさか、双子だったなんてな……」
先に生まれたのはアネーシャの方だったらしい。ステラは一瞬もしも自分がいなければと思うが、それを汲み取ったのかカーラは厳しい顔になってステラを睨んだ。
「言っておきますけど、国王夫妻も私達も、あなたの事を愛していますからね」
ステラはきゅっと唇をかむ。
愛していないはずがない。念願の子供。たとえ国の言い伝えに凶兆と書かれていたとしても、それで愛が冷めてしまうほど単純なものではない。むしろ、愛していたから、大切だったから、国王夫妻はカシム達に片割れを託したのだ。
「秘密にしようということになった。私は適当な理由をつけて御殿医を辞め、下街に居を構えることにした。下町は、あまり国王などの顔を見る機会はないからね」
「あなたの名前は、彼らがつけたのよ」
ステラは、泣きそうになるのをスカートを握りしめながら耐えた。何故か、泣いてはいけないような気がしたのだ。
「突然の事で混乱しているだろう。だけれど、一つだけ言わせてくれ。ステラ、自分を蔑にするのはやめてくれ」
「そうよステラ。私達には、結局子供は授からなかった。あなたが生まれてきてくれたおかげで、私達は子供を持つことが出来た。あなたは、私達の大切な子供なの。そしてもちろん、国王夫妻にとっても」
ゆっくりと、カーラの手がステラの頭を撫でる。カシムが、ステラの肩に手を置く。
「ねぇステラ……あなた、ノクールの王子様が好きなのでしょう……?」
びく、とステラが震えた。ちらりとカーラを見れば、カーラは慈愛に満ちた笑みを浮かべてステラを見ている。
「お見通しよ」
あなたは私の大切な娘ですもの、と、言葉にしなくても伝わってくるような気がした。
ぽろ、とステラの瞳から涙が溢れた。カーラはステラをやんわりと抱きしめて、あやすように背中を撫でる。
「自分の気持ちに正直になりなさい、ステラ」
きっとその道は障害だらけになるだろう。だけれども、愛する人の隣にいること、その人も自分を愛してくれること。その幸せがあれば、きっと乗り越えられるものだ。
「難しいことは考えなくていいわ。幸せになって、ステラ」
「私達は絶対にお前の味方だ。だからステラ、自分を蔑にするな」
そんなことできるはずがない、とステラは思っていた。けれど、今なら素直になれる気もしていた。




