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プロローグ:運命
これも運命なのかもしれないと両親が話しているのを扉の向こうで聞きながら、その悲しそうな声が辛くて目を伏せた。できることならば共にいたい。それは双方の望みのはずなのに、諦めなければいけない現状が憎い。―――けれど。そっと喉に手を当てて、少女は瞼を震わせた。
これも運命なのかもしれない。私が招いてしまった、不幸な運命。だからこそいいことだけを考えよう。もう両親に会うことはできないけれど、両親は多額のお金を貰えるはずだ。今とは比べ物にならないような素敵な生活ができるだろう。もう、母親が誰かにののしられながら働く必要はない。父親が死と隣り合わせの職に就く必要もない。慎ましくも平和に一生を過ごせるだろう。だから、私は。
次の日、少女はその麗しい顔に柔らかな笑みを浮かべながら両親に頭を下げ、遠くにそびえる城へと向かう馬車に乗り込んだ。涙は流さず、凛とした背中で―――