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【不思議の国の俺】

作者: とーよー




俺は不思議の国に来ている。




理由は変なウサギを追いかけたからだ。


変なウサギを追いかけて来てしまった。


俺は公園のベンチで昼寝をしていた。昼寝をしていると変なウサギが現れたので(変だなー)と思って、そっと見ていて、後を追って、変な穴から下に落ちて、不思議な世界にたどり着いてしまったというわけである。



変な事だらけだった。

不思議な感じだった。

現実っぽくなかった。




夢ではないだろうか?―と、何度も自分のホッペタをツネッてみたが痛くはない。痛くはないので今度はバーナーで燃やしてみる。


熱くもない。


「よーし!問題ない!」


―と、思ってみたが、チョット待てよ?


ホッペをツネッても痛くないとはどーゆー事だ?バーナーで燃やしてみても熱くないとはどーゆー意味なんだ?それ以前に、何故、俺はバーナーを持っているんだ?何処から持って来たんだ?いつから持っていたんだ?くそー、ヤバイな、こりゃー、いよいよ、夢っぽくなって来たぞー。



そんな事を考えていると、向こうからゆでたまごの様な体をした、目玉焼きみたいなヤツが現れた。


ソイツが言った。


「僕はタマゴヤキさ!」


ややこしかったのでシカトした。


しかし、シカトしたところでどうしようもない。どうしていいのかも分からない。


俺はタマゴヤキに聞いてみる事にした。


「すみませーん。帰りたいんスけど」



ゆでたまごの様な体をしたタマゴヤキは、生卵をオムレツにぶっかけたヤツを食いながら言った。



「ニワトリさいこー!」



俺はタマゴヤキに利用価値がないのを改めて把握し、改めてシカトする事にした。


しばらく進むと、パイプを加えた、ケムシを加えた、ミミズを加えた、悪そうな顔をしたヤツがコッチを見ていたので、これもメンドクサそーだなー、と思い、スルーした。


スルーして歩き続けると湖があった。


湖には女神チックなヤツが浮いていた。


木こりチックなヤツと喧嘩をしていた。


俺は木の影からそれを見ていた。



「わざとじゃないって!」


「ゼッタイ!わざとでしょ!」




途中から見ているので意味は分からなかった。分からなかったが、せっかくなので見てみようじゃないか。




「だから!まじで!わざとじゃないって!なんかいつもより気合いが入り過ぎて、オノを振りかぶるのが力み過ぎただけだから!もう、ほんと、今度から気を付けるからさ~。気を付けるから、もう1本だけ、ラストでいいから、お願いって~?ダメ?ねぇ?ダメ?」



「ふざけないでよ!いい加減にしときなさいよ!ゼッタイわざとでしょ!昨日も一昨日もその前も、その前の前も、最近、毎日、落としてるじゃない!昨日なんて、7回も落としてるのよ!いい加減に……」


―と、まで聞いたところで俺はなんとなく意味を理解した様な気はしたので、これもスルーして先に進んだ。



しばらく進むと寂れた古い館があった。


大量のコウモリが夜空を飛んでいた。


空は黒かった。雷が鳴っていた。雲が浮いていた。その雲から真っ赤な雨が降り注いでいた。


これもメンドクサそーだと思い、スルーした。


俺はケッコー、メンドクサがり屋だったので、少しでもメンドクサイと思えば、スルーする事にしていた。



それからも色々なものをスルーし続けていった。




竹の中から聞こえた赤ん坊の声をスルーした。マサカリを担いだ真っ赤なフンドシを履いた男をスルーした。いじめられていた亀をスルーし、そこに向かっていた釣竿を担いだ男もスルーした。暫く進むと傘を被ったお地蔵さんが歩いていたが、お地蔵さんが歩くなんてことは現実的ではないのでスルーした。スルーしたところで鶴が罠に掛かっていた。もちろん、これもスルーした。そんなものを助けている暇はない。鶴を助けたところでなんだというんだ!恩返しをされるわけでもない!もし、仮に、恩返し的な事をしてくれるというのであれば、話は別だが、鶴がそんな事をしてくれたといった報告例はこれまでない!……と、思う。あるわけがない!それが現実だ!この!鶴ごときめが!俺はムシャクシャしながら鶴を蹴飛ばした。腹が減るとどうもムシャクシャしてしまう。道端に落ちているパンの欠片の様な物を拾って食った。うん。思ったよりイケルぞ。落ちてるパンをパクパク食いながら進んでいるうちに、パンを契りながら歩いている男女の兄弟らしきヤツラがいたので、それもスルーして先に進もうとは思ったが、まだ少し食い足りなかったので、一定の距離は保ちながら、しばらく後ろを歩きながら食い続けた。



腹がいっぱいになったので、川から流れてきた桃をスルーした。


しかし、小腹は減っていたので、次に流れて来た茶碗に入ったミニサイズの人間の方はパクっと食った。美味かった。


満足。満腹。

わるくない。


不思議の世界もなかなか悪くないと思った。


悪くないとは思ったが、基本的に俺は家に帰りたいのである。



どーしたら帰れるんだ?

どーすれば戻れるんだ?


この国に来てしまった原因はナンなんだ?変なウサギのせいじゃないのか?アイツを追い掛けて穴に落ちたせいじゃないのか?アイツなら、なにか知っているかもしれないぞ?


聞いてみれば良い。


しかし、聞けない。


俺は変なウサギを捕まえた後に、焼いて食ってしまった事を深く後悔していた。


パンを見付ける少し前だったので、なんか、あるかなー?と、思って、なんかあって、色んなものを手当たり次第に食っていたら、変なウサギが現れたので、それも捕まえて焼いて食ってしまったのだ。


あの時はそんなに重要キャラだとは思っていなかった。


もう少し、なんか、色々、聞いとけば良かったなー、と思った。


そう思いながら、俺は柿を食い終えた。


猿から奪った柿だった。


柿を食い終えたところで、ウサギが首からぶら下げていた時計が(ジリリリリリリ!)―と、めちゃくちゃ、うるさく、鳴ったのでハンマーで叩き潰してやった。あれ?


そこで思った。


ハンマーは何処から出て来たんだ?って。なんで急に出て来たんだ?って。都合よく出て来たんだ?って。


マジで夢じゃねーの?


いーや、違う!夢とは、なんか、空気的なものが全然違うし、他にもなんか説明しにくい部分が色々違うし、なんか、そこら辺の違いは、自分でも分かっている様な気はしている。


そんな事を考えながら俺は真横を通り過ぎようとしているトランプ軍団を取っ捕まえてビリビリに引き破いた。


くそー。

どーすれば元の世界に戻れるんだ……。





      [END]







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