鍵の外れる音
かけられた鍵が音を立てて外れる。
その音に月と星は優しく瞬いた。
「落ち着いたか?」
優しく降ってくる声に綺羅は羞恥でまた泣きそうになる。
真っ赤に染まっているであろう顔を隠しながら小さく頷く。
秀夜には全てお見通しなのだろう。頭の上でクスリと笑う気配がした。
「…ずるい。」
零れた音は自分で思っていたよりずっと子どもっぽく響いた。
それにまた羞恥心を掻き立てられながらも、頭上で柔らかく微笑む気配を感じて無意識に体を寄せた。
そのまま包むように引き寄せられる。
「クク、本当に変わらないな。
昔もそうやって拗ねた。」
「なっ!!秀夜様は意地悪になられました!!」
記憶よりもずっと意地悪くなった想い人にちっとも成長していない自分。
秀夜が自分よりずっと大人になってしまっているようで、遠くに行ってしまったような気がして胸がツキンと痛んだ。
さっきまで黙って別れを告げるつもりだったというのに我ながらなんとも現金なものだと呆れながら、グルグルと忙しなく駆け巡る思考を放棄して誤魔化す様に綺羅は声をあげた。
怒ったように抗議してみてもそれが本気でないことなどお見通しのようで、あっさりとやりこまれてしまう。
「意地悪な俺は嫌いか?」
「…キライじゃないです。」
「、本当にお前は可愛いな。」
蚊のなくような小さな声を漏らした綺羅に秀夜は僅かに目を瞠って嬉しそうに笑った。
昔と変わらず、いや昔以上に可愛らしい反応を見せる想い人。
漏れた笑みは自分が思っているよりずっと楽しげなものだったらしく、からかわれていると思った綺羅が上目づかいで睨みつけてくる。
「もう!酷いです!!!」
そんなことをしても逆効果なのに。
手放しつつある理性を必死に手繰り寄せて、華奢な体を強く抱きしめる。
小さな悲鳴が聞こえた気がしたが、気付かなかったことにした。
暫く腕の中でもぞもぞと居心地が悪そうに動いていた小さな身体は、秀夜が離す気がないと理解するとおずおずとその細腕を背にまわしてきた。
あぁ、やっと。やっと手に入れた。もう絶対に離さない。
そう心に誓いながら大人しく腕の中に閉じ込められている少女を想った。




