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(白波さつき編)眼球を貪る真っ黒な悪魔 1

この小説はフィクションです。



悲しい物語が苦手な方にはお勧めできません。

少年少女が壊れていく様を書いたものです。

「グロい、可哀想」などなどの事は承知してください。





 七月十六日




 密室の中、私は机の上の蛍光灯だけを頼りに勉強している。

 夜の十二時半。まだ三時間しか勉強していない。

 シャーペンを止める気などさらさら無い。

 深夜過ぎになるとお母さんが寝るようにと言って来る。

 その時間まで私はひたすら勉強する。

 運動神経が悪い私にとって勉強が全て。

 知識が全てなのだ。

 だからこそ勉強する。

 夜更かししてでも勉強する。

 止まらないシャーペンのすぐ横にポツンと雫が落ち、ノートにちいさな丸い染みを作る。

 ん? あれ? 汗なんてかいてないのにな。

 不振に思った瞬間。

 視界が大きく揺らいだ。

 めまい? いや、そんな簡単な物じゃない。

 椅子に座っていてもそのまま転げ落ちそうな、それぐらい酷い物。

 自然に息が荒くなる。

 両目を瞑り、額に手をやる。

 まだ……回ってる。めまいは解けてない。

 落ち着くのを待って見ることにした。

 数分たつとめまいは失せ、元通りに戻っていた。

 一体なんだったんだろ。

 両目を擦る。

「あれ……。泣いてる」

 左目だけから涙を流していた。

 なんて不快な泣き方。

 あぁ……。さっき落ちた雫はこれか。

 目が疲れてるのかも知れない。

 今日は寝よう。

 ノートを閉じ、蛍光灯を消す。

 そのままベットに横になり、眠りに落ちた。



 七月十七日




 ぴぴぴぴぴぴ

 枕元のアラームが鳴る。

 もう六時。

 アラームを止め、身を起こす。

「んんぅぅぅ~~~」

 大きく伸びをしてから自室を出る。

 階段をしっかり踏みしめながら降りる。

 不意に視界が揺らいだ。

 だめだ!

 がむしゃらに壁に手をやる。

 傾いた体を立て直す。

 危なかった……。あのままだったら明らかに落ちてた。

 昨日ほど酷くは無いがめまいである事に変わりは無い。

 これから用心することにしよう。

 階段を下りきり、リビングに入る。

 中にはお母さんがいて、テーブルには出来たてのハムエッグとトーストが一枚置かれている。

「おはよう」

「おはよう……昨日は寝るの早かったみたいね」

「うん。昨日は……」

 ゆっくりめまいに気を配りながら椅子に座る。

 不意にテレビに目をやる。

 ニュース番組の最中らしい。

『最近、新しい病気が現れた模様です』

 新しい病気?少し興味が沸いたのでこのニュースを少し見てみることにする。

『この病気が発見されたのは栃木県寺田見町てらだみちょう。症状、発症条件は定まっておらず、ただ発見が遅ければ死に至るというのが厚生労働省の検査結果です。この病気に向けての対策はただいま検討中との事です』

 寺田見町?私が住んでるこの町。

 また物騒なことが始まったみたいね。新しい病気ね……興味深いけど関わりたくはない。

『続いてのニュースです。昨日開催された全国陸上高校生大会の優勝高はすみおか高校です。長距離走決勝戦、トップを独走していた寺田見第一高校。のこり二百メートル付近で右足首を抑え転倒。これ以上走れ…………』

 私が通う学校の話しみたいだけど興味が無い。

 ニュースから気をそらしトーストにかじり付く。

 トーストは冷え切ってパサパサしていた。





「いっています」

 一言残して私は家を出た。

 向かう先はもちろん学校。

 めまいを警戒しながらしっかりと歩く。

 大通りに差し掛かったところで信号に捕まった。

 横断歩道の一歩手前で青になるのを待つ。

 はやく青にならないかな……。

 この温暖化上の炎天下に突っ立ってるのは流石に辛い。

 すると見つめる赤のランプが当然二つに分かれる。

 途端に平衡感覚を失い、視界が揺らぎ始める。

 まためまい!!

 すぐにそばにあったガードレールを掴む。

 荒くなった息を整えながらめまいが解けるのを待つ。

 信号が青に変わる頃には完璧に元に戻っていた。

 昨日から一体なんなんだろう。

 新しい病気ってこれの事?

 まさか…ね。

 信号が赤に変わる前に私は横断歩道を駆け抜けた。

 その後、学校に行くまではめまいに襲われることは無かった。

 これじゃあ勉強に集中できるかどうか……はぁ。

 私はそのまま教室には向かわず、生徒会室に向かう。

 こんな時間に教室にいっても誰もいない。こんな早い時間に来ている人といれば教師、それと……。

「失礼します」

「おぉ…白波しらなみか。おはよう」

「おはようございます」

 目の前にいる生徒会長、成川なりかわ達哉たつや先輩ぐらい。

「白波は会計なんだからこんな早朝に来なくて良いんだぞ」

 夏休みに行われる盆踊りの作業資料の確認から目を離し私のほうを向き微笑んだ。

 その笑顔がとても心地良くて……。

「迷惑でしょうか……?」

「まさか……!そんな訳ないだろ」

 私は先輩の隣の席に着く。

 私は周りから孤立している。

 暗い性格と容貌のせいだというのは分かっている。

 だけど変える気は無かった。

 私が私で無くなるのが嫌だったから。

 周りに合わせて自分を変えるなんて事はしたくなかった。

 でも、先輩はそのままの私と接してくれた。

 だから先輩といるのは心地よかった。

「なにか手伝う事ってありますか?」

 なにか役に立ちたいと思う意思が強まりつい言葉を発してしまった。

 恥ずかしい……。

「そうだなぁ、それじゃあこの盆踊りの至急金額の再計算をして欲しい。間違いがあったら教えてくれ」

「はい」

 先輩の役に立てる。それがすごい達成感と実行感を与えてくれる。

 私の存在意義を教えてくれる。

 先輩に用紙を受け取り、メモ帳を取り出し計算式を組み立てる。

 シャーペンが式を紙に映し出していく。

 不意に式がずれた気がした。

 一行ずれた? どうして……。

 目を擦る。

 あ……。また泣いてる。左目だけ……。

 左目を擦った指先を見つめる。

 なんで? どうして?

「どうした? 間違いでもあったか?」

 私が動きを止めたからだろうか先輩が私を覗き込む様に聞いてきた。

「いえ……何も」

「? 左目……充血してるぞ」

「そう……ですか」

 泣いていたのだから当たり前だろう。

 でもなんで泣いていたんだろう。

 いつまでも悩んでいられない。すぐに作業に戻ろう。

 シャーペンを掴み芯を紙につけた瞬間。

 視界から色が失せた。

 黒と灰色のみで彩られた寂しく、ありえない光景。

 だが、それは一瞬で終わる。

 それを引き継いだように激しいめまいに襲ってきた。

 酷い。今までで一番激しいめまい。

 うぅぅ……ダメ!! 耐えられない。

 私は椅子から転げ落ちる。

 体を強打するのが分かる。

 でも体より、目の奥のほうが痛んだ。

 ズキズキと何かが押し寄せるような痛みと、ギュゥゥと眼球が潰されるような痛み。

 先輩が私を呼んだような気がしたけど確かめる事もできぬまま……

 暗い意識へと落ちていった。


 



まだ続編があります。


興味が湧いたのであれば読んで欲しいです。


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