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ファッションという魔法

作者: 小川大河
掲載日:2026/07/12

 私は田舎から東京に出てきて、いかにファッションというものが大切かを思い知った。それまではそんな事は気にしたこともなかった。洋服にも、化粧にも、髪型にも大してお金をかけてこなかった。でも、東京の人たちは違った。

 「ファッションというのは魔法のようなものなの。それを極めれば、あなたがなりたい人になることができる。可愛くも、美しくも、かっこよくもなれる。みんなが熱中するのはそのためだもの。」、東京の人は言う

 「見た目だけなりたい人になっても、中身はどうするんですか。」、私は言った。

 たとえ見た目がなりたい人になっても、中身がそうなれていなかったら困るのではないか。確かに、東京の人たちはファッションをすることで別人のようになっていた。でも、本当に別人になったわけじゃない。それは少し話せば、あるいは挙動を見れば分かる。見た目だけ美しくなっても、中身が元の自分だとちぐはぐな感じ化する。振る舞いや言動が分からなくなってしまう。何をしたらいいのか分からなくなる。

 「そんなことを言うのはまだ、あなたがファッションを極めていないからなの。本当のファッションはどうしたらいいのか、こちらに教えてくれる。洋服やお化粧、髪型が私の心に向けてこうしなさいと道を指し示してくれる。ファッションを本当に極めたら中身の人格まで変わってくるの。」

 私はそれからファッションに打ち込んだ。お金や時間、手間暇をかけた。おしゃれなカフェやバーに行くようになった。魅力的な異性と出かけるようになった。

 「これでいいのだろうか。」

 はじめのうちは自分によく問いかけた。この方角に進んで良いのかよく考えて控えめに行動していた。でも、日に日に自分に問いかける声は小さくなった。それがずいぶんと昔のことに思える。なんだか自分が別人になったような気がしている。

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