婚約者に呼び出されて家から徒歩十分ほどの場所へ向かったのですが……?
婚約者である彼ヴィボットに呼び出されて家から徒歩十五分ほどの場所へ向かったところ、ヴィボットと私の妹リーナがなぜか二人で立っていた。
「ヴィボットさん、これは一体……」
「伝えなくてはならないことがあったんだ」
「よく分かりません」
「そういうのは要らない。では、今から伝える。きちんと聞けよ」
ヴィボットはなぜか偉そうだった。
「お前との婚約、破棄とすることにした」
そんな彼は何の躊躇いもなくはっきりと告げてきた。
「そして俺はお前の妹さん、リーナと、共に生きてゆく」
「え……ちょ、ちょっと、待ってください! そんなの……理解できませんし納得だってできません!」
「それは、婚約破棄は嫌ということか?」
「私はヴィボットさんと生きていくつもりでしたから」
するとヴィボットはふっと黒い笑みを滲ませ、片手を掲げてさりげなく合図。
それを受けてリーナが片方の手の手のひらをこちらへ向けてくる。
「バァン」
リーナが小さくそう言うと、上空から、隕石に似た謎の大きな岩らしくものが降ってきた。
「え……」
数秒後、降り注いだ隕石みたいな岩に命を奪われてしまったのだった。
「ありがとな、リーナ」
「うふふ! 大成功、ですわねっ。今日も最高の出来でしたわ!」
「さすがだ」
「これで邪魔者は消えましたわね!」
「ああ、結婚しよう」
「もちろん! そうしましょう。二人で幸せに生きましょ!」
二人は楽しそうに話していた。
◆
『死んでしまわれたのですね』
「はい……妹に魔法を使われてしまいました」
落命した私は知らない真っ白な世界にいた。
目の前には美しい女神。
さらりとした長い髪と艶やかな唇が印象的な容姿の女性だ。
『それは気の毒でしたね』
「自分たちが結ばれたいがために人の命を奪うなんて……酷すぎます。婚約者と実の妹だとしても許せません」
『そうでしょうね』
「もっと生きたかった……」
すると女神はふふっと柔らかな笑みをこぼす。
『復讐したいですか?』
「え? ふく、しゅう……ですか」
『貴女の命を奪い喜んでいる者たちに仕返しがしたいのではないですか』
ああ、そうか、私は……。
「はい」
本来復讐なんてすべきことではない。
それは分かっている。
けれども今は彼らのことがどうしても許せない。
「したいです」
はっきりと答える。
『よく言いきりましたね。では始めましょう。貴女の理想の復讐を……ぜひ、楽しんで』
視界が白く染まり。
世界が薄れてゆく。
……そして、やがて、見えていたものが見えなくなっていった。
◆
気づけば私は大きな岩になっていた。
隕石に似たような見た目の物体。
普通の女だった私は人でなく生き物ですらない存在へと姿を変えていた。
けれども迷いはない。
むしろ心はどこまでも澄んでいる。
「な、何あれ!?」
「うわ! やっべえ!」
そんな私は丘の上でピクニックしていたヴィボットとリーナに向かって落ちていく。
「逃げましょ! ヴィボット! ほら、片付けて!」
「そんな暇ねーよ!」
「じゃあそのままでいいからっ」
「や、ややや、や、や、やべ……やばばば、や、やば……あ、しが……震えが、止まら、ね、っ、ぇ……」
決して止まらない。
「ヴィボット! 遅い!」
「む、む、むむ、むりりりりりりり……」
「もういい! 先逃げておくから! 動けるようになったら来――」
彼女が最後まで発しきるのを待たず、私は、二人の頭上に落下した。
――ヴィボットとリーナは隕石に降られ塵と化した。
◆
『復讐はできましたか』
「はい。すっきりしました。ありがとうございました」
私はまた女神の前に戻っていた。
『では次の人生へ送ります』
「もう未練はありません」
『それは良かった。……では、次の人生こそ、幸せになってくださいね』
◆終わり◆




