第七話:ルナヴェールブルー、誕生! ~湖の精霊と村の再会~
「またお前たちか……許可なき人間が…うむ、お前は!?」
僕たちは村長を連れて再び水源の湖を訪れていた。
村長は自分の祖父が仲良くして、父が執心だったという泉の精霊という話で、美しい女性の姿を想像していた様だ。
だが、見上げるほどの龍の姿を目の当たりにしてすっかり腰を抜かしてしまっていた。
だが、仮にも村長。何とか踏みとどまり話しかける。
「我が祖父の盟約に従い、泉の精霊様との交流を望み、こうして参上致しました」
「人の移ろいは早きものよ。あの男の孫か…しかも随分老けておる……だが、面影はある」
その声は落ち着いていて、低く響く口調は前回の威圧する様な迫力はない。
「あなたの心の澱みが水にも現れて、水脈を授かる村が作物が育たず、苦労している。僕たちが出来ることなら協力する。だから……」僕は思わず村長を継いで話をする。
「お前たちは先日、森のウサギのためにキイチゴに豊穣を与えたな?」
「あ、はい!はぁい!ゴブリナグリーンがお手伝いしました!」
「あれは良いな。森の子供達が喜ぶ姿は良い。あの献身に免じて話を聞いてやろう」
巨大な古龍はその姿を人の姿に変える。魔法少女にならずとも人に変ができるのか……。
光が収まると、頭部にツノ、腰から下は蛇の半龍神が現れた。そのまま水面を這う様に進んでくる。
その一種の異様さは……どこかで拒絶の姿勢を感じる。
「私の心が何ですって…?淀みを生んでいる…なぜかしら」
その口調は落ち着いていて、そこには感情が無いようにも見える。
村長はその姿と声に圧倒されている感はある。
「古の龍、泉の精霊……あなたは、昔に彼の祖父との交流がありましたね?先日僕たちが来た時に『許可なき人間』という言い方をされました。つまりあなたは許可を与えた人間が過去に居たことを教えてくれたのです」
「そうだな。わずかな間だったが……」ふと遠い目をする。
そののまなざしに村長は動いた。
「も、申し訳ありませんでした!ルナヴェール様…祖父との約束を守ってくださって、ありがとうございます。しかし、私の父…二代目はあなたに執着したがゆえに歪んだ愛情をぶつけたと言うではありませんか…私は、その子供として生まれながらそのことを知らずに過ごしてきました。」
「ほう、その名で呼ばれるのは久しいな…全部分かっているのだな?……ではどうする?」
古龍はその名を聞いて少しうれしそうだ。
「収穫祭を開き、泉の精霊に感謝してここでお祭りをしましょう…ルナヴェール様さえよければ」
村長の提案に古龍は少し眉を跳ね上げる。
「それは私の行為に対して感謝し、供物をもって謝辞とするという意味か」
「ええ…」
「たわけ!私がその様な形だけの感謝などで喜ぶと思ったか?!」
「ひえぇ!!も、申し訳ありません!!!」
村長は、間違った回答をしてしまったのだろうか?古龍は激怒しているように見える。
だが……僕は今度こそ確信があった。
「違いますよ。泉の精霊、ルナヴェール様。彼はあなたとちゃんと向き合いたいと思っています」
「そうですよ。司祭の身でいえば、村長は個人での交流、あなたとの絆を独占するのではなく、村としてあなたとの絆を結び迎えたいと言っているのです」
サブリナイエローのサポートナイス!
「まったく、私とシルフィードホワイトとの絆みたいだな…かみ合ってないよ。お互いを思っているのにかみ合わないことがある」ファイアーハートレッドはシルフィードとの絆を語る。
「私たちってかみ合ったことあるのでしょうか?」
少し困った顔をするシルフィードホワイト。……シビアなツッコミ
「ふっ」
ルナヴェールこと古龍で精霊の彼女は魔法少女たちに囲まれて破顔一笑する。
「ははは…愉快だよ。そうさ、私は寂しかっただけなんだ……傷も負ってないし病気もない。だけど、感情が動かない……森の湖になって、命を育み守っているのに何も楽しくなくなってしまった」
「村長の祖父が君を愉しませてくれたんだね」
「そうだ。彼は私に多くのことを教えてくれた。外の世界、人間の社会……金色の麦畑、美しい木の実、豊穣なる営み彼は楽しそうに私に語ってくれた」
「今からでも遅くないよ、むしろ君が村に来るといい」
「ふん、そのようなこと出来る訳が無かろう!」
だが、僕は持っていたステッキを彼女に向けていた。
光り輝く光球が彼女を中心に周囲を包み込む。
そこには美しく長い青い髪、耳の後ろにヒレのようなカチューシャ。少し長めのスカートの前は大胆にスリットが入った波の様なフリルのスカート、青い光が波のように広がり、フリルが水面のようにひらひらと舞う。袖口はやはり水の波紋の様なフリルが淵をボリューミーにシルエットを整えるが、ボディラインはしなやかでスタイリッシュな魔法少女が誕生していた。
「こ、これは…私は……私は、ルナヴェールブルー!愛と奇跡の魔法少女!!」
おおーと皆が拍手する。
脚を得て、湖の畔に立つルナヴェールブルー。
「足を得ても私は湖の守護があるので…あれ?自由に動ける…」
「みんな元の因果とは切り離されて自由になっているようですよ、ルナヴェールブルー」
「ほほう?」
「つまり、あなたは湖の精霊であり、主ではあるけれどその場所に縛られない存在になれたという事ですね。これで村直接行って、皆と交流できるって訳です」
「それは……ゴホン。う、嬉し…い訳ではない。が、どうしてもというなら村にいってもよい」
……このツンデレが…面倒くさいな。
「異論がないなら皆で村に戻りましょう」
シルフィードホワイトが天馬の馬車を出す。
やや定員オーバーな気もするがあっという間に村まで飛翔する。
「ひゃぁ!これは凄いな!!」泉の精霊であるルナヴェールブルーは大喜びだ。
こうしてみると、元が150年も生きた龍の化身とは思えない可愛さだ。
きっと、これが本来の彼女で、やや迷惑行為に心を痛めてああいった姿を堅持していたのだろう。
これが本来の彼女の姿なのだろう。
村の集会場に集まった五人の魔法少女
「かようにも美しい精霊のごとき5人の少女がこの村に集っていただけたのは幸いです」
村長は村の今後の展望を語る。
「先ずはサブリナイエロー様には引き続き、病人の治療をお願いいたします」
「困っている人は捨て置けぬ。問題ないぞ!」
「ありがとうございます。次にゴブリナグリーン様は、村の野菜の品質管理と場合によっては成長を」
「お野菜もっとそだてちゃう!お世話になってご飯も食べられるなら全然いいよ!」
「もちろん衣食住は村で持たせてもらいます。ファイアーハートレッドさんも患者の受け入れに当たり、感染症のリスクを避けるためにも浄化の炎を」
「まあ、私は構わないよ!炎でみんなを幸せに。人道に即した働きは騎士の本懐だ」
「感謝に耐えません。そしてシルフィードホワイト様は移動困難な患者のための送迎をお願いできれば」
「良いでしょう。私の運搬が役に立つなら」
「ルナヴェールブルー様には…えっと」
「ルナヴェールブルーは何が出来るんだ?」村長の困った顔をみて僕が継ぐ。
「なんじゃ?私はこの村に潤沢な水を提供しているではないか…これ以上何か望みか?」
「確かに…」
「まあ、私自身もどこからでも水を取り出せるぞ?」といって掌をかざすとなんと、そこから水が滴り始める。
「なんか、その水の質とか変えられるなら、飲料水や消毒用とか分けて商売できそうですね」
村長の目がキランと光る。
「それは良いですな!この土地はお陰様で果物も取れますが故、お酒を仕込みたいと考えておりました。それには、今の水よりさらに良い水が欲しかったのです!」
なんか結局いい感じに村おこしに仕えることになりそうだ。
よしよし、これでハッピーエンド…とは行かねーよ!!忘れてた……僕は五人の魔法少女を揃えてこの村を救ったのであれば、元居た世界に帰れるはず!!
ともかく!と思いながら教会に向かう。
そこで待ち受けていたのは……




