第五話:白馬が魔法少女に!? ~月下のシルフィードホワイト、見参ですわ!!~
「エンジェル・ファイアー・レボリューション!天使の炎革命っ!!」
派手な轟音と光り輝く炎のエフェクト。ファイアーハートレッドことレイナの彼女自身は左程見た目は変わっていないが、炎髪がより輝き、フレアスカートが赤く光る。
「ひえぇ!!」ゴブリナグリーンは、自分が焼き殺されるとおびえて僕の後ろに隠れる。
「みてください!この輝き!!」
ファイアーハートレッドの手には昼間脱がされて、余りの匂いと汚れで外に出されていた彼女の鎧一式が入った野菜かごである。
そして、その中に入れられた鎧は新品の如く美しい輝きを放ち、嫌な臭いもしない。
「えっと、騎士様の宿命はゴブリンの討伐だったんじゃ…?」ちょっと理解が追いつかないまま僕が聞くと、ファイアーハートレッドことレイラはニッコリ笑って「ゴブリンなんか何処にもいませんよね?…それより見てくださいよ!どんな汚れもきれいに殺菌消毒!!私の天使の炎!」
わーすごい!!と、集まって来た村人とゴブリナグリーンとサブリナイエローみんなが朗らかに拍手する。
うーん…平和すぎ!
「マスター!これで三人になりました!!あと二人ですね!」
いやなんか…えっと……深く考えてはいけないのだろうか…
「でもこれ画期的ですわ!」サブリナイエローは特に嬉しそうだ。
「この村に集まりつつあるけが人、病人たちですが…どうしても感染症リスクがありますし、きれいなシーツや寝床は必須です。ファイアーハートレッドさんが清潔にしてくださるなら、万事解決で皆さん安心ですわ」
「それで、私の育てる健康野菜とサブリナイエローさんの治癒、ファイアーハートレッドさんの清潔さで完璧ですね!」自らの危機を回避できたゴブリナグリーンも嬉しそうだ。
「まさに、これでこの村も、安泰ですな!」村長も大喜び。
万事うまくいっている様な気もするが、魔法少女は五人揃っていない。
「村の平和」というのも、外貨が入ってきて流通が良くなることとは違うような…
「どうしたんですか?マスター?うふふ…お嫁さん候補が増えて嬉しいですか?」
「ふへぇ?!…お嫁さん?!!」
「何を驚いているのですか?!まさか、そのつもりもなく私たちをこのような姿に?!」
「えぇ?!!」そんな話は僕は聞いていない…!
「ユーマ様はお優しい方なので、そんな軽はずみな決断はされません!」サブリナイエローは僕の右腕を取って抱きつきながらそんなことを言う。
「あ、そんなこと言ってマスターを独り占めしようと!」ゴブリナグリーンは僕の左腕を取る。
双方から禁断の柔らかい果実の感触が…
そして、さらにそこに正面に立ったファイアーハートレッドは「では、私は開いた真ん中を失礼しますぅ!!」と両腕を取られて動けない僕の正面から抱きついてくる。
嗚呼なんか、僕の理性が……
そこに村長が駆け込んでくる。
「大変ですじゃ!……あ、し、失礼しました…お楽しみのところでしたね」
やめて誤解ですから……!!
「そ、村長!ソコは引かないで下さい!何があったのですか?」
「何とも、うらやまけしからん…ワシだってもう少し若ければ…」
「村長!そこじゃないです!」
魔法少女たちもさすがに俺から離れる。
「おお、そうじゃった…何かな…主の居ない黒い馬が到着したんじゃ」
「黒い馬?」
皆の視線がファイアーハートレッドに注がれる。
「うぇ?!わ、私の馬なら白いはずだ!私のシルフィードは白馬だぞ!」
「とにかく、行ってみよう!」
村の外れに確かに荷物を背に乗せた黒い馬がトボトボと歩いている。
「なんと?!シルフィードではないか!!」
白馬じゃないんかい?!
「シルフィード!!」「ブヒヒーン!!!」ひしっと抱き合う。馬と魔法少女。
「これ、馬は主人を置いて逃げたのではなく、主人が勝手に迷って居なくなったパターンなんじゃ…」
思わず本質を突いてしまうゴブリナグリーンは、可愛い顔して割と鋭いことを言う…
「と、ともかく、サブリナイエローは過酷な道中を経て到着したこの馬を治癒し、ファイアーハートレッドは浄化の炎を。ゴブリナグリーンはエサの野菜を!」
「「「任せてください!!」」」
「エンジェル・ファイアー・レボリューション!」「サンライト・ヒーリング・フラワー!!」
「ピュアピュア・ベジベジ・ラブリーコン!」
かくして、健康と美しさを取り戻した白馬がそこに現れた。
ゴブリナが貧相な状態から、新鮮で芳醇状態に変えた野菜を上手そうに食べる。
「めでたしめでたし…かな?よかったな、ファイアーハートレッド君の馬だろう?」
「はい、ありがとうございます。しかし、今私は騎士レイラ・ファイアーハートではなく、魔法少女ファイアーハートレッドです!!」
…何となく嫌な予感がするんだけど……
手綱を手に取ってファイアーハートレッドがシルフィードと言われた白馬を僕のところに連れてきた瞬間……
ピカー!!!
やっぱりぃ!!
光が収まると、そこには長身でしなやかな体躯の白髪ロングのウェーブが顔にかかって顔の半分が隠れた男装麗人の女性の美しい曲線を隠さない詰襟とズボンを身につけた魔法男装少女が立っていた。
「月下の白馬、シルフィードホワイト見参!!」
はぁ~四人目というわけかぁ…まあ、これであと一人という訳ならラッキーだ。
「ああ、我がマスター、このような姿を私に授けて下さり感謝に耐えません!」
「いや、お前の主人はそこのファイアーハートレッドではないのか?」
「ええ…騎馬としての私の主人は確かにレイラ様でしたが…その……」
あー皆まで言わなくていいや…なんとなく、主人の運の悪さに巻き込まれて苦労してそうなのは変身前の姿で想像できたし…
「わ、わかった…では、聞くが…君はどんな能力を持つのか?」
「ふふふ…よくぞ聞いてくださいました!!私の能力はこれです!」
両手を天にかざし、呪文唱える
「天を駆り、地を滑り、空を飛べ!ホワイト・ティンクル・エアリアル・ルミエール」
なんと、シンデレラが乗るような純白の馬車が登場する。
「きゃぁ!スゴイわ!!」「お姫様の馬車ね!」「ああ、騎士にして乗ることは不可能な憧れの!」
「どうですか?!マスター!!空を飛ぶ馬車『エアリアル・チャリオット』ですわ!!」
「え、いや…馬車って…馬は?」
「大丈夫です。皆さん乗りましたか?」聞くまでも無く皆搭乗している。
「マスターは私と共に御者席へ……」
促されるまま席に着くと、先ほどまで馬だったシルフィードは隣に座り、にこりと笑うと手綱をとり、ピシャリと何もないところになびかせる。すると、ガラスの様な透き通った天馬がキラキラと光の中に見える。そして「ハイヤー!!」というシルフィードの命令で馬車はそのまま走りだし、空を舞う。
「きゃあ!!!スゴーイ!!」村を囲う森の上空を白い馬車が飛ぶ。僕はそのシートベルトも無い御者席で恐れをなしてシルフィードにしがみついてしまっていた。
「あらあら、マスター…うふふ、嬉しいですわ」
「これで、いったいどこに行くつもりなんだ?」
「先ほど私を助けてくださったときに、グリーンさんが与えてくださった野菜…最初はかなり元気のない状態でしたわ」
「そうだな…村長も収穫の問題を気にしていたな…」
「私はその原因に心当たりがございます」っと有力情報?!
「すごいじゃないか!何でそれが?!」
「水ですわ」「水!?」
「私はご主人とはぐれてから、苦労して村までたどり着きましたが…この村に流れ込んでいる水を飲んだ際に汚染されていることに気付きました」
「つまり、水源の問題を解決すれば…?!」
「はい、恐らくは。私のこの能力に目覚めたのも、きっとその思し召し違いありません!」
確かに都合よすぎはするが、この課題をクリアすれば元の世界に戻れる可能性があるなら従うしかあるまい。
「よし、行こう!」




