第四話:臭い鎧の下に隠された赤いフリル ~三人目の魔法少女、ファイアーハートレッド!~
「おはようございますぅ!マスター!!」
今朝からはサブリナイエローとゴブリナグリーンの美少女に起こされる羽目に…嬉しいけど理性が飛びそうである。
朝から健康的な野菜中心の朝食をとる。
サラダに漬物、コーンスープに焼いた食パン。
僕はとうに自分が召喚された時の供物分を自分で食べてしまっていた。
「それにしても…一体どうすればいいのやら…」
僕は途方に暮れていた。
村長に村の平和と言っても、その脅威になるものがあるのか聞いたところ、心当たりがないという。
「あーでも、マスター、ちょっとよろしいですか?」
「何だゴブリナ?」
「私気づいちゃったんです!…私の魔法って野菜の促進じゃないですか」
「ふむ。おかげで毎日おいしい野菜が食べられるぞ」
「でもおかしいんですよ…この村の野菜は全体的に育ちが悪いです」
「それは確かに困るな…平和とは言えない」
「ですから、その原因を突き止めれば平和になるのでは?」
「うーん…」
そんなに単純な話なのだろうか?それだと他の魔法少女を見つけなくてもクリアできてしまいそうだ…
「え?私間違ってましたか?」
「あ、いや、平和を脅かす問題を解決するに越したことは無い」だが、それが全ての解決とは行かないであろう。
「私としては、この村での治癒はほぼすべて終わってしまいましたので…あまりお役に立てそうもありません」サブリナイエローこと司教様は相変わらずその佇まいだけでちょっと男子を困らせる格好なのはどうにからないのかと思う…嬉しいけど!
「司祭様は他の村や町を巡回しているのではないですか?…この村にだけ留まってしまっては問題になるのでは?」
「問題ありません。この村のシスターソフィアを司祭に任命して跡を継がせました」
職権乱用しすぎ!
「そ、そんな適当な感じでいいんですか?」
「マスターにご奉仕する以上に重要な任務はありません」
そうは言いながら、彼女は教会で治癒行為をおこない、お布施を得るという司教としての務めは魔法少女の格好のまま行っていた。
「この辺りに脅威になる魔物とか…出たりしないんですか?」
「どうなんでしょう…私ははぐれゴブリンで、ここにたどり着いて細々と盗みなどしておりましたが…他に仲間や脅威に遭ったことはありません」
平和すぎ!!
実際、のどかで穏やかで秋が深まり気温は下がり始めた気はするが、基本的にかなり快適に過ごしてしまっている。
その内に、山を一つ越えた先にあるという別の村から馬車が来た。
「隣村の村長ではないか…越冬の準備の買い付けにしてもずいぶん早くないかね?」
村長が突然の来訪に驚きつつも歓迎する。
「元気そうだな…なに、この村にえらい別嬪さんの黄色い娘さんが、奇跡の治療をするって噂を聞いてね…」
馬車には怪我や病気の人たちが同乗して来ており、無頓着だった僕は、その迂闊さを恥いる。
きちんと確立された治療法が無ければ、風邪でも人は死ぬ。
どうやら行商人がこの村に寄った際にサブリナイエローに治癒を受け、てその奇跡を周囲に触れ回っているようだ…
情報の伝達は、僕がいた時代に比べれば遅々としたものだが、それでもその速度を馬鹿にできるようなものではない。
数日のうちに、近隣の村や街から病人や怪我人が押し寄せた。コレが村の平和を脅かす脅威になりえるのだろうか?
だが、村長は意外にも歓迎方針のようだ。
「感謝されて、ついでに宿や食事処は繁盛ですからね…」
うーん、したたか!
そんな最中、一人の女騎士が単騎で辿り着き騒然となる。
「酷い怪我!すぐに治癒を!…一体何があったのですか?」サブリナイエローが優先して治療する。
「ううむ…油断した」そう言って気絶してしまう。
騎士ではあるが、馬がいない。
だが、フルプレートアーマーを身に付けているからには、間違いなく騎士であろう。
鎧は傷と汚れでボロボロ。赤い髪の毛は泥で固まり、顔も泥だらけで息も絶え絶えだ。
非常に重い鎧なので村人数人と僕も手伝って介抱するが……皆顔を見合わせる。
「猛烈に臭い」のだ。
騎士大変だな…一人では脱ぐことも出来ず彷徨っていたのかも知れない。ともかく、鎧を脱がさないと、怪我の具合もわからない。
皆で協力して鎧を脱がす。
中から出て来たのは、十代半ばくらいにみえる少女だった。
サブリナイエローが治癒の光で照らす。
「くっふぅ〜かぁはっ!ゴホゴホ……」
むせながら気がつくその少女といってよささうな、その騎士は起き上がりなら言った。
「私の名前はレイラ・ファイアーハート。ファイアーハート家の名代にて騎士である。辺境伯の命を受けこの地に参った。かような手厚い保護を感謝します」
丁寧な身のこなし、さぞや立派な出自の騎士なのだろう…だが、そんな偉い人なら何で単騎なのだろうか?
「この様な僻地に、騎士様がいらっしゃるとは……以下様なご用命がありましたかな?」村長が息を留めて騎士に尋ねる。
「うむ、聞いてくれるか?…話すと少々長くなるのだが……」
周囲の者たちが一斉に引く。
村長の顔が青くなる。
「騎士様、先ずはお体の汚れを落とさせて頂けませんか?」
そんな緊迫した状況に割って入ってきたのがゴブリナである。さわやかミントの香りで周囲を癒やす。
「おお、麗しきかように可憐な美少女が二人もこの村に…かたじけない…お言葉に甘えよう」
二人に連れられて退場する騎士を見送って後に、村長は素早く指示をすると、皆わかっているとばかりに換気清掃を行う。
脱ぎ捨てられた鎧は…申し訳ないが野菜収穫用のカゴに入れて屋外の軒下で陰干しするように村長の素早い指示があり、迅速に処理された。
中世の鎧を着た女騎士など、カッコいい部分しか想像できていなかった僕としては、割と衝撃的な事情を知ってしまったと言えるだろう。
などとぼんやり思っていると、村長が来て耳打ちをする
「ユーマ様…申し上げにくいのですが…」
「な、何ですか?」
「ファイアハート家なのですが…噂では、あまり良い話を聞きません…どうか、ご縁ありましてもあまり関わらないように…」
「どういうことですか?」
温厚そうな村長が警戒するなら何かあるのかもしれないが…
「うむ、さっぱりした!」赤毛炎髪の女騎士は、ゴブリナとサブリナと共に、村人の服を着てラフな格好で戻って来た。
彼女の姿を改めて見て、僕にはある確信があったが、村長の警告が気になったので、話をしたいと思った。
おもむろに近寄るとゴブリナが困った顔をしている。
「何だね青年?!サインなら後にしてくれ!」
いや、要らないし!
コレ、面倒クサいやつだ!
「そ、そういう訳ではありません…失礼ながら、騎士様はどのような用件でこちらへ?」
「むお!……確かに。我が家名に置いて、その使命を語らねばなるまい!っと」
っと?…と言う間もなく、勝手にその場でコケた。「キャん!」
どうやら濡れたサンダルが石畳の上で滑ったようだが…盛大に尻もちをついた。
「うぬぬ…痛いでは無いか!」
「騎士様大丈夫ですか?」ゴブリナが助け起こす。
「うむ…どうも、私は…運が悪いようでな…ここに来る途中も騎馬が道に飛び出したリスに驚いて私を放り出して逃げてしまったのだ…」
え?普通は、主従の関係明白なら驚いて逃げても、すぐ戻るか、逃走先で待っていそうなものだが…
「私は振り落とされたところで、沼にハマり、抜け出すのに丸一日かかってしまった…日が暮れて、私は剣を含めた装備を全部馬ごと失くしてしまったので、歩いてこちらを目指したのだが…」
なんか泥人形みたいな人影がとぼとぼと歩く姿が想像できます…
「途中で更に木の根に蹴躓いたり、木の枝に引っかかったり…何せ夜は何も見えないからな…」
いやもう、そこは動いちゃだめでしょ…
「日が差して村が見えたときは助かったと思ったぞ」
普通に遭難してるし…良く生きているなぁ…
「そんな私だが、無事に当初の目的地であるウィロウホルム村に着いた。我が使命は、この村に悪さをするゴブリンの討伐である!」
あぁ…この絶妙なかみ合わせの悪さ…コレは関わったらマズい奴…
だが、その判断をしたときにはもう遅い。
クセのように持ち歩いているステッキが勝手に発動する。
ピカー!!
赤基調のゴスロリメイド服の三人目の魔法少女がそこには立っていた。
「え?ヤダ、何コレ!?…キャワワ!!」
自分がキラキラな衣装を身にまとっていることに感激している女騎士レイラさん。
「私の名前はファイアーハートレッド!赤の魔法少女!あなたのハートを燃やすわよ!」
えーっとこれ、魔法少女同士の戦いになっちゃうのか?!
感想、イイネよろしくお願いいたします。




