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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第三章 魔王城・序

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止まらない黒影

 黒影の門番は、動かなかった。


 槍を床に突き立てたまま、ただ立っている。


 だが。


 静止しているはずなのに、圧だけがある。


 


 ヒナタが、一歩踏み出した。


 

 次の瞬間。

 ――来た。


 


 床を蹴る音が、遅れて響く。


 視界が、歪む。


 

 突進。

 速い。


 

 ヒナタは正面で受けた。


 剣を合わせ、力を流す。


 

 だが、止まらない。


 

 衝撃が、体ごと押し流す。


「っ……!」


 

 受け切れない。

 踏み込めない。


 ヒナタは、弾かれるように距離を取った。


 


 門番は、そのまま通り過ぎる。


 減速しない。



 

 ステラの術式が走る。

 直線の光。


 

 だが。



 槍が動く。


 叩き落とされる。


 

 音だけが残った。


 


 セレネが、横へ跳ぶ。


 突進の余波。


 床が、わずかに抉れる。


 


 ミドは、さらに距離を取った。


 


 門番は、視線を向けない。


 


 突進が止まる。


 


 門番が、向きを変え始める。


 

 遅い。


 だが。

 次が来る。


 再び、突進。


 

 ヒナタは、正面に立つ。


 今度は、受け流す。


 剣を当て、力を逃がす。

 その流れのまま、刃を返した。


 それでも。

 踏み込めない。


 斬っているはずなのに、手応えが薄い。


「……硬ぇな」


 



 ステラの術式が、再び走る。


 今度は、当たる。


 だが、深くは入らない。


 



 門番は、止まらない。


 突進。


 次は、ヒナタではなかった。


 黒影の門番が、わずかに進路を変える。


 一直線。

 ――ステラ。


「っ……!」

 判断は、速かった。


 術式。


 前方に、光を叩きつける。

 爆ぜるような閃光。


 だが、止まらない。

 槍の影が、そのまま突き抜けてくる。


 ステラは、跳んだ。


 横へ。


 床すれすれ。


 

 衝撃が、背後を薙ぐ。


 空気が、裂ける音。



 立ち上がるより早く、次の術式。


 光を“当てる”のではない。

 押し付ける。


 突進の軌道が、わずかに逸れる。




 門番は、そのまま通り過ぎた。




 ステラは、距離を取る。


 息は、乱れていない。



 だが。


 今の一撃が、直撃していれば。


 結果は、分からなかった。

 ――そう思える距離だった。




 突進。


 回避。


 反転。


 

 同じ流れ。


 削れていないわけじゃない。


 だが、足りない。


 


 門番が、再び向きを変える。


 その瞬間。

「――次、向きを変える時!」


 

 ミドの声が、響いた。


「その一瞬に、集中してください!」


 

 門番の進路が、わずかに乱れた。


 だが、止まらない。


 


「セレネ!」

 間髪入れず。

「次、動きを――一拍、遅らせて!」


 


 セレネが、即座に理解する。


「……了解です!」


 


 門番が、突進する。


 ヒナタが、真正面で受ける。

 今度は、深くいなす。

 反転。


 その瞬間。


 セレネの支援が入る。



 鈍る。

 ほんの、わずか。



 ステラの術式が、重なる。



 体勢が、崩れる。

 ――今だ。


 ヒナタが、踏み込んだ。


 さっきまでとは違う。


 止まらず。

 迷わず。


 一閃。

 深く。


 

 黒影が、大きく揺れた。


 門番の体が、前につんのめる。


 槍が、床を擦る。


 

 止まった。


 ヒナタは、間を置かず、距離を取る。


 


 黒影が、揺らぎ始める。


 輪郭が、崩れる。



 やがて。


 音もなく、霧散した。



 静寂。


 誰も、すぐには動かなかった。



「……倒したな」


 ヒナタが、低く言う。


 


「はい」


 セレネが、息を整える。


 


 ステラは、門番が消えた場所を見つめている。


 


 ミドは、短く息を吐いた。


 


 勝てた。


 だが。


 簡単ではなかった。


 この先も。


 同じとは、限らない。


 誰も、それを口にはしなかった。


 

 門番の先。



 城は、まだ続いている。


 

 そして。


 静かすぎる。


 

 ――次が、待っている。


 

 それだけは、確かだった。



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