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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第三章 魔王城・序

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まだ広がる危険域

 朝のギルド。


 人の出入りは、いつも通りだ。


 依頼板の前に立つ者。

 受付で声を落とす者。

 武具を整える者。


 だが。


 どこか、間が悪い。


 言葉が、一拍遅れる。

 視線が、無意識に奥へ流れる。



 あの四人の全滅が、まだ空気の底に沈んでいる。


 

 ヒナタは、構わず依頼板を見上げた。


 紙を一枚、剥がす。


 少し、難度が高い。


 だが、無理ではない。


 


「これで行く」


 短く言う。


 


「了解です」


 セレネが頷く。


 


 ステラは、依頼内容に一度だけ目を通し、何も言わない。


 


 ミドも、異論は出さなかった。


 


 


 森へ。


 

 まだ浅い。


 いつもなら、警戒を緩める場所だ。


 


 だが。


 


 足を踏み入れて、すぐだった。

 ――気配。



「来る」


 ヒナタの声と、ほぼ同時。


 

 獣が、飛び出した。


 一体。


 いや、二体。



 動きが速い。

 迷いがない。


 

「……こんな所まで」


 セレネが、息を吸う。


 


 ヒナタが前に出る。


 一閃。

 だが、浅い。


 獣は、踏みとどまる。


 

 ステラの術式が、間を切る。


 直線。


 当たる。



 それでも、倒れない。


 

「硬いな」


 ヒナタが、低く言う。


 


 ミドの指示。



 セレネの支援。

 防御。

 治癒。


 

 静かに、確実に。


 


 連携が噛み合う。


 

 挟む。

 削る。


 


 最後は、ヒナタ。


 踏み込み。

 一閃。


 獣が、倒れた。


 


 息を整える。


「……甘く見たつもりは、ねぇんだが」


 ヒナタが、ぽつりと言う。


 


 誰も、否定しない。


 

 進む。

 奥へ。


 

 さらに、出る。


 数は、多くない。


 だが、一体一体が重い。


 


 それでも。


 崩れない。


 


 ミドが位置を取る。


 

 ステラが流れを切る。


 

 セレネの支援が、切れない。


 

 ヒナタが、確実に仕留める。


 


 以前より、手応えはある。


 だが、時間はかからない。


 


 最後の一体が倒れる。




 静かだ。


 


「……やれるな」


 ヒナタが言う。


 


「はい」


 セレネが頷く。




「問題は、ありません」


 ステラも、短く言う。


 


 事実だ。


 依頼は、完遂できている。


 


 だが。


 


 森は、まだ静まり返っていない。


 


 遠くで、枝が鳴る。


 


 風が、少し重い。


 


 ヒナタは、剣を納めながら、森の奥を一度だけ見た。


 何かが、確実に進んでいる。



 それだけは、はっきりと分かった。






 ギルドに戻ったのは、昼を少し過ぎた頃だった。


 


 依頼の報告は、滞りなく終わる。


 難度は高め。


 報酬も、それなり。


 

 誰も驚かない。


 ――できてしまう。


 それが、妙だった。

 


 


 受付の前を離れ、壁際へ。



 ステラが、ぽつりと言った。


「……家に、行きたいです」


 


 ミドが顔を向ける。


「家?」


 


「正確には……小屋ですね」


 少し言葉を選ぶ。


「本を、取りに」


 説明は、それだけ。


「町の外れですし」

「この感じだと……そのうち、荒らされて」

「本が、駄目になりそうな気がします」


 


 ミドは、すぐに理解した。


「侵食……」


 


 ステラは、小さく頷く。


「一人だと、量が多くて」


 視線が、ほんの少し逸れる。


「……運ぶのが、大変なので」


 頼み方は、控えめだった。


 


 ミドは、間を置かずに答えた。


「分かった」


 それだけ。


 


 ステラが、少しだけ肩の力を抜く。


「ありがとうございます」


 


 

 ギルドの外。


 


 昼の光。


 


 町は、まだ平穏だ。


 



 だが。


 


 

 守れるものは、減り始めている。


 


 それを、二人とも分かっていた。

 


 だから。



 行く理由は、十分だった。


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