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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第三章 魔王城・序

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今はまだ

 宿舎。


 


 夕食。


 


 皿は並んでいる。


 湯気も立っている。


 


 だが、誰も急がない。


 



 ヒナタは、黙って食べている。


 


 セレネは、箸を進めながらも、視線が落ち着かない。


 


 ステラは、食べる量がいつもより少ない。


 箸は止まらないが、進みは遅い。


 


 ミドは、途中で一度、手を止めた。


 箸が、皿に触れたまま止まっている。


 


 


 言葉は、出ない。


 



 出せば、何かが崩れる気がしている。


 


 


 食器が、静かに鳴る。


 それだけが、音だった。


 


 

 やがて。


 


 


「……先に休む」


 ヒナタが言った。


 


 理由は、言わない。


 



「はい」


 セレネが短く返す。


 


 

 ステラも、何も言わない。


 


 

 ミドは、ただ頷いた。


 


 


 灯りが落ちる。


 


 


 夜。


 


 


 誰も、すぐには眠らなかった。


 


 


 だが。


 



 誰も、話そうともしなかった。





 夜。


 宿舎の外。


 灯りは少ない。


 風も、強くはない。


 



 ――カン。


 


 乾いた音が、一定の間隔で響く。


 


 ミドが、剣を振っていた。


 


 派手さはない。


 ただ、同じ軌道。


 同じ高さ。


 同じ速度。


 



 繰り返すたびに、空気が切れる。


 


 


 少し離れたところで、ヒナタが腕を組んでいる。


 

 見ているわけでもない。


 目を閉じているわけでもない。


 ただ、そこに立っていた。


 


 

「……魔王に、挑むんですか」


 ミドが、振りながら聞いた。


 動きは止めない。


 


 

 ヒナタは、すぐには答えなかった。


「さあな」


 短い。


 



 ミドが、もう一度剣を振る。


 ――カン。


 


 

 ヒナタが、ぽつりと言った。


「魔王の部屋に入ったら」


 一拍。


「戻れねぇ」


 言い切りでも、決意でもない。


 ただの事実。


「誰かが倒すかもしれねえ」

「誰にも、無理かもしれねえ」


 夜に、言葉が落ちる。


 


 ミドは、振る手を止めない。


 


「……まだだな」


 ヒナタが続ける。


「挑めるほど、強くもねぇ」


 


 少し、間。


 


「無理して行く理由も、ねぇ」


 


 

 ミドは、剣を振り終えた。


 息を整える。




 何か言いかけて、やめる。



 

 ヒナタが、先に言った。


「体が鈍っちまう」


 小さく、息を吐く。


「考えすぎると、な」


 腕を下ろす。


「だから、明日からまただ」

「ギルドに行って」

「いつも通り、狩りをする」


 それでいい、と。


 自分に言い聞かせるみたいに。


 


 ミドは、剣を下ろした。


「……はい」


 それ以上、何も言わない。


 



 夜は、静かだ。


 


 剣の音も、止まった。




 だが。


 


 何かが、終わったわけではない。


 


 ただ。


 


 先送りにしただけだ。


 


 それを、二人とも分かっていた。


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