表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第三章 魔王城・序

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/47

全滅記録

 宿舎。


 扉を閉めると、外の気配が切れた。


 遅い時間だが、誰もすぐには横にならない。


 



 ミドが、ぽつりと聞いた。


「さっきの四人……」


 言葉を探すような間。


「有名なんですか」


 



 ヒナタは、腰を下ろしながら答える。


「ああ」


 短い。


「今の最前線だ」


 それ以上の説明は、少し考えてから続いた。


「全員が前に出られる」

「隙がねぇ」

「……魔王討伐に、一番近い」

 



 セレネが、小さく息を吸う。


「……ヒナタさんが、そこまで言うのは」


 


「珍しいか?」


 


「はい」


 


 ヒナタは、肩をすくめた。


「事実だからな」


 否定も、誇張もない。


「だからこそ、護衛の話が出た」


 



 ミドが、少し考える。


「……参加しますか」


 



「さすがに、断らないだろ」


 即答。


「護衛とはいえ、城の手前まで行ける」

「他のパーティも出るはずだ」

「危険は分散される」


 


 ステラが、静かに頷く。


「動きを見るだけでも、価値はありますね」


 


「だろ」


 ヒナタが言う。


「最前線の連中が、どう進むか」

「どう引くか」

「見ておいて損はない」


 


 セレネが、少しだけ表情を和らげる。


「……無理をする、任務ではないんですね」


 


「護衛だからな」

「無茶はしない」


 ヒナタは、そう言ってから付け足す。


「――無茶をする段階じゃない」

 


 一瞬の沈黙。



「とりあえず」


 ヒナタが立ち上がる。


「明日、ギルドだ」

「話は、それからだ」



 誰も異論はなかった。


 



 夜。



 灯りが落ちる。


 

 しばらくして。


 


 ――カン。


 金属の音。


 


 一定の間隔。


 剣が、振られている。



 ただ。

 その音は。


 

 昼間の会話を、静かに引きずっていた。






 朝のギルド。


 


 人は、まだ少ない。


 依頼板の前にも、空きが目立つ。


 

 あの四人組の姿は、ない。


 

 ヒナタは、受付を素通りして奥へ向かった。


 ミドとステラ、セレネも続く。


 

 ギルドの奥。


 

 普段は使われない記録台。


 

 魔王城に挑んだ者だけが、

 その存在を意識する記録台。


 

 討伐か、全滅か。


 あるいは、そのどちらにも至らなかったとしても。


 

 魔王の領域に踏み込んだ瞬間から、

 帰還するまでに起きたことだけが、切り取られる。


 そこに、小さな水晶が置かれている。


 


 ステラが、そっと手をかざした。



 水晶が、淡く光る。


 

 表示は、簡素だった。


 


 ――挑戦記録。


 

 人数:3

 経過時間:00:12:43


 その下。


 結果:全滅


 


 セレネが、息を呑む。


「レベル99が三人……」

「……短いですね」


 


「十二分か」


 ヒナタが、低く言う。




 ミドは、黙って見ていた。


 

 さらに下。


 

 もう一つ、古い記録。


 

 人数:1

 経過時間:00:03:21


 

 結果:全滅


 


 ステラの指が、わずかに止まる。


「……ひとり?」


 


 ヒナタの目が、細くなる。


「転生者だ」


 


「レベル、999……」


 セレネが、言葉を失う。




 レベル999。


 それでも、三分。


 


 

 ヒナタは、短く息を吐く。


「……簡単な相手じゃねぇな」


 



 ミドが、視線を上げる。

 


 

 ステラは、何も言わなかった。

 


 

 一瞬の沈黙。


 


 そのとき。

 足音。


 


 はっきりした歩調。


 

 振り向くと。


 例の四人組が、並んで立っていた。


 


 ヒナタが、口を開く。


「護衛」


 短く。


「引き受ける」


 


 男が、わずかに目を細めた。


「助かる」


 それ以上は、言わない。




 目的は、共有されている。


 魔王城へ。


 勝つために。


 

 ――まず辿り着くために。


 

 護衛任務は、静かに始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ