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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第三章 魔王城・序

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魔王城の影

 夕方。


 空が、少しだけ赤い。


 森を抜け、廃墟を越え、街道を戻る。


 足は重いが、止まらない。


 



 ギルドの灯りが見えたとき、ようやく息を吐いた。


 



 扉を押す。

 

 ヒナタたちが扉をくぐった瞬間。


 

 視線が、集まった。


 


「……戻った」


「二羽、やったんだよな」


「本当に通れるようになったのか」


 


 声は小さい。


 だが、確実に広がっていく。


 


 受付へ向かう途中で、何人もの冒険者が頭を下げた。


「助かりました」


「これで、無駄に削られずに済みます」


 


 ヒナタは、軽く手を上げるだけ。


「できることをやっただけだ」



 それ以上は言わない。


 だが。



 空気は、確かに変わっていた。


 

 ――通れる。


 

 それだけで、魔王城への距離は大きく縮まる。




 ヒナタが受付へ向かう。


 机の上に、黒ずんだ嘴を二つ置いた。



「討伐、確認しました」


「該当ルートの危険度を、引き下げます」



 一瞬、空気が変わった。


 

 拍手はない。


 歓声もない。


 


 だが。


 確かな安堵が、広がった。

 



 討伐の報告を終え、踵を返そうとしたとき。


 


「礼を言う」


 

 低い声。



 振り向く。


 四人組。



 ヒナタは、一目で分かった。


 ――知らないはずがない。


 装備は簡素だ。

 派手さはない。


 だが、剣も防具も、使い込まれている。

 磨かれているわけでも、新しいわけでもない。

 

 それでも。


 無駄がない。



 ヒナタは、短く息を吐いた。


 ――強い。



 

「廃墟が通れるようになった」


 男が言う。


「二羽も、片付いたと聞いた」


 淡々とした口調。


 だが、軽くはない。


「これで、城までの道がかなり楽になる」


 


 ヒナタが、短く息を吐く。


「……あんたらか」


 それだけ。


 


 男は、わずかに口元を緩めた。


「話が早いな」


 


 セレネが、少しだけ息を呑む。


 ステラは、何も言わない。


 ミドは、黙って四人を見ていた。




 ヒナタは、男の目を見る。


 慢心も、油断もない。

 



 少し間。


 


「頼みがある」


 男が続ける。


「魔王城までの護衛に、参加しないか」


 


 ヒナタが眉を動かす。


「護衛?」


 


「ああ」

「体力を残した状態で、城に入りたい」

「最近、周辺がおかしい」


 言葉を選びながら。


「獣が、確実に強くなっている」

「城の中もだ」

「部屋の前までは、何度も行っている」


 淡々と。


「だが、そのたびに少しずつ違う」


 

 ヒナタは、黙って聞いている。


 

「長引けば、不利になる」

「だから、できるだけ削られずに辿り着きたい」



 沈黙。



 ヒナタは、仲間を見る。


 セレネ。


 ステラ。


 ミド。


 全員、状況を理解している顔だ。


「……今日は無理だな」


 ヒナタが言う。


「準備がいる」


 


「明日なら?」


 男が聞く。


 


「考える」


 ヒナタは、そう答えた。


「返事は、明日だ」


 

 男は、短く頷いた。


「待つ」



 それだけ言って、四人は距離を取った。


 



 ギルドの喧騒が、少しずつ戻る。




 だが。


 空気の底には。


 魔王城の影が、差し始めていた。





 ――更新記録



 ヒナタ レベル:87


 ステラ レベル:84


 セレネ レベル:79




 ミド 測定不能



 記録終了。


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