表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第二章 戦いの形

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/47

一点を穿つ

 黒鉄の獣が、踏み込む。


 石が砕ける。


 ヒナタが受ける。


 鈍い衝撃。


 火花。


 押される。


 


 斬る。


 弾かれる。


 


 炎。


 爆ぜる。


 


 煙。


 


 ――同じ。


 変わらない。


 


 時間だけが、削れていく。


 


 ミドは、動かない。


 ただ、見ていた。


 


 炎が当たる。


 黒鉄の表面が、一瞬だけ赤くなる。


 すぐ戻る。



 また炎。


 同じ。


 

 赤。


 鈍る。


 半拍だけ、遅れる。


 

(……今の)


 偶然じゃない。


 


 三度目。


 炎。


 赤。



 動きが、重い。


 確実に。


 


 喉が鳴る。


「ステラ」


 短く呼ぶ。


 


「はい」


 


「火力、上げられる?」


 


「可能です」




「……広げないで」


 視線は獣のまま。


「一点に」



 


 ステラが、ほんの少しだけ目を細めた。


 理解。



 術式が変わる。


 光の線が、細くなる。


 収束。


 空気が震える。


 

 炎。



 今までより、濃い。


 一直線。



 黒鉄の胴に直撃。


 爆ぜない。


 叩きつけられたまま、張り付く。


 赤熱。


 じわ、と。


 色が、変わる。


 黒が、赤に滲む。



 蒸気。


 金属の焼ける匂い。


 

 黒鉄の獣の動きが――止まった。



 ほんの一瞬。


 足が、遅れる。


 確信。


 


「ヒナタ!」


 声が勝手に出た。


「あそこ!」


 


 指が、赤くなった一点を指す。


 ヒナタは、もう動いている。

 踏み込み。


 一閃。


 火花。

 ――硬い。


 だが。


 今までと違う。


 刃が、止まらない。


 ほんの、わずか。


 沈む。


 金属が、歪む音。


 赤い部分が、凹んだ。


 

 黒鉄の獣が、初めて大きく体勢を崩す。


 

 ヒナタが笑った。


「……今のは」

「手応え、あったぞ」


 

 ミドの胸が、強く鳴った。



 ――通る。


 その事実だけで、十分だった。


 

 空気が、変わる。


 

 四人の呼吸が、揃う。



「一点で」


 ミド。


「同じ場所」


 

 ヒナタが短く頷く。



 ステラの術式が走る。


 炎。



 さっきと同じ。


 肩。


 

 赤熱。


 黒が、滲む。


 動きが鈍る。


「今!」


 

 セレネの光が重なる。


 ヒナタの身体が、軽くなる。


 踏み込み。


 一直線。

 突き。


 ――鈍い音。

 止まらない。

 刃が、沈む。

 奥まで。


 金属が悲鳴みたいな音を立てる。


 肩が、歪む。

 次の瞬間。


 前脚が、砕けた。


 黒鉄が、割れる。



 巨体が傾ぐ。

 崩れた。



「押すぞ!」


 ヒナタの声。


 

 全員、もう動いている。



 ステラ。

 術式。


 今度は、胴。

 炎が、張り付く。

 赤。

 黒が、崩れる。


 

 セレネの光が、さらに重なる。


 

 ヒナタが跳んだ。


 高く。


 剣を、逆手に。


 そのまま。

 落ちる。

 一直線。

 重力ごと。


 黒鉄の胴へ。

 突き刺す。

 ――轟音。


 亀裂。


 蜘蛛の巣みたいに、全身へ走る。


 次の瞬間。


 砕けた。


 黒鉄の身体が、内側から弾ける。


 破片が、石畳に散る。


 金属音が、何度も跳ねる。




 静寂。




 煙だけが、残る。


 誰も、動かない。


 

 やがて。


 

 ヒナタが、剣を引き抜いた。



 崩れた残骸の中。


 ひとつだけ。


 形を保ったものがある。


 

 黒い牙。


 短い。



 だが。


 鈍い光沢だけは、まだ生きている。


 


 セレネが、そっと拾った。


「……討伐証明、ですね」


 


 ヒナタが鼻で笑う。


「分かりやすくて助かる」


 


 ミドは、残骸を見下ろす。


 さっきまで。


 圧倒的だった存在。


 今は。


 ただの、鉄屑だった。




 風が吹く。


 廃墟に、音が戻る。


 


 鳥の声。


 葉の擦れる音。



 世界が、また動き出した。


 

 ヒナタが言う。


「……帰るか」


 


 四人は、静かな廃墟をあとにした。


 崩れた塔の影が、少しずつ小さくなる。



 ミドだけが、一度だけ足を止めた。


 振り返る。


 瓦礫の向こう。


 森の隙間。


 遠く。


 黒い塔が、細く立っていた。


 空を裂くみたいに。




 魔王城。




 風が吹く。



 ヒナタの声。


「行くぞ」



 ミドは、小さく息を吐いた。


 何も言わず、歩き出す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ