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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第二章 戦いの形

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静かな廃墟

 森の奥。


 空気が、少し変わった。


 湿った匂いの中に、乾いた匂いが混ざる。


 

 土じゃない。


 石の匂い。


 足元。


 土の下から、硬い感触。


 靴先で払う。


 

 平たい石。


 四角く並んでいる。



 道だ。


 

 木々の間。


 

 灰色の影が見える。


 

 崩れた壁。


 途中で折れた柱。


 窓枠だけ残った穴。


 屋根はない。


 蔦が絡み、半分は森に飲まれている。



 誰もいない。


 


 風が吹いても、音が少ない。


 葉が擦れる音だけが、やけに大きい。




「……人工物ですね」


 ステラが小さく言う。


 


 ヒナタは返事をしない。


 ただ、視線だけが鋭くなる。


 

 足を進める。


 

 割れた皿。


 倒れた棚。


 錆びた釘。


 生活の残骸が、ところどころに転がっている。


 踏まないように、自然と歩幅が変わる。


 


 気配。


 

「右」



 茂みが揺れる。


 

 飛び出してきた獣。


 

 一歩。



 ヒナタの剣。


 短い音。


 それで終わり。


 血の匂いが、すぐ薄れる。


 


「……弱いですね」


 セレネが呟く。


 


 また一体。



 今度はステラ。


 術式。


 光。


 弾ける。


 倒れる。


 数秒。


 終わり。



「討伐対象じゃなさそうだな」


 ヒナタ。


 

 返事はない。


 全員、同じことを考えていた。


 


 奥へ。


 

 石の建物が増える。


 

 広い空間。


 何かがあった場所。


 中央だけ、不自然に開けている。


 

 音が、ない。


 鳥も。


 虫も。


 さっきまでいた獣すら、いない。


 静かすぎる。


 足音だけが、響く。


 喉が、少し乾く。




 ミドの足が、わずかに止まった。




 そのとき。


 地面の奥。


 低い。


 重たい振動。


 ……ずし。


 誰も動かない。


 もう一度。


 ……ずし。


 


 ヒナタが、低く言う。


「……いるな」


 空気が、張り詰めた。


 


 視線の先。



 崩れた建物の影。


 そこだけ、やけに暗い。


 

 何かが、潜んでいる。


 確信だけが、胸に落ちた。


 


 

 四人は、言葉を交わさないまま。


 ゆっくりと、足を進めた。




 

 瓦礫を越える。


 石畳が、途切れる。


 


 中央。


 崩れた塔の影。


 


 黒い塊が、ひとつ。


 最初は、岩かと思った。


 


 だが。


 


 それが、ゆっくり動いた。


 ぎ、と。


 金属が擦れる音。


 

 脚。


 重たい爪。


 石を踏み砕く。



 毛じゃない。


 皮膚じゃない。


 鈍い光沢。


 鋼。


 四足。


 


 低い姿勢のまま。


 頭だけが、こちらを向いた。


 赤い眼。


 呼吸。


 ――熱い蒸気が、漏れる。




 誰も、声を出さない。




 ヒナタが、ゆっくり剣を抜いた。





「……あれか」



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