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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第一章 始まりの町

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新しい宿舎

 夕方のギルドは、昼より少し静かだった。



 依頼帰りの冒険者が、まばらに椅子に座っている。


 扉を開けると、いくつかの視線がこちらを向いた。



 レベル測定は、すぐ終わった。


 ヒナタが78。

 セレネが67。

 ステラが72。


 ミドは、やっぱり測定不能だった。




 ステラだけが、水晶をもう一度だけ見た。


 光の消えた石を、数秒。


 指先で、縁を軽くなぞる。


 何かを確かめるみたいに。


 それから、何も言わずに手を離した。




 受付が咳払いをする。


「……鉄皮熊、討伐確認しました」


 周囲が、ざわつく。


「マジか」

「あの四人で?」

「あの奥だろ……?」


 視線が集まる。


 今度は、笑いじゃない。




「報酬と、それから」


 受付が紙を差し替える。


「宿舎ランク、ひとつ上がります」


「しばらく活動があれば、そのまま使えます」




 ヒナタが軽く手を振る。


「分かった」


 それだけ。


 


 騒ぎは、長く続かなかった。


 すぐに別の依頼の話し声が重なる。




 新しい宿舎は、ギルドの裏手だった。



 石造り。


 前より、少しだけ上の区画。


 


 扉を開ける。


 


 前の部屋より、少し広い。

 四人で座っても、窮屈じゃない。


 


 窓も大きい。


 光が、ちゃんと入る。


 


 それだけ。

 なのに、少しだけ落ち着いた。


 


 

 ヒナタが荷物を置く。


 椅子に腰を下ろして、天井を見上げる。


 


「……今回の」


 ぼそっと。


「たぶん、今の上限だな」


 


 誰もすぐには返事をしない。


 


「勝てはしたが」

「余裕はねぇ」

「一歩間違えば、普通に全滅だ」




 事実だけ。


 感情は混ざっていない。


 


 セレネが小さく頷く。


「……はい」


「正直、少し怖かったです」

「でも」


 少しだけ笑う。


「だからこそ、慣れないと、ですね」


 



「その辺を、もう少し回すか」


 ヒナタが立ち上がる。


「同じくらいの難度を、何本か」

「身体に染み込ませてから、次だ」


 


 自然に決まる。


 誰も反対しない。


 


 夜。


 外。



 乾いた音。


 ヒナタが剣を振る。


 重い一撃。




 少し離れて、ミド。


 同じ軌道。


 同じ踏み込み。


 


「……ほんと真似すんの上手ぇな」


 

「見てるだけです」


 

「それが普通できねぇんだよ」


 がは、と笑う。


 それだけ。


 


 

 その後。


 依頼をいくつか受けた。



 森の外縁。


 街道の警備。


 群れの間引き。


 


 強い敵が出ても、誰も声を荒げない。

 



 ステラが止める。


 削る。


 

 ヒナタが斬る。


 

 セレネが支える。


 

 ミドが隙を見る。


 

 終わる。


 


 


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 

 噛み合っていく。


 

 気づけば。


 

「……前より、近いですね」


 セレネが言った。


 


「何が?」


 


「距離」

「みんなの動き」




 ヒナタが鼻で笑う。


「慣れただけだ」


 


 たぶん。


 それだけじゃない。


 



 部屋に戻る。



 四人分の足音。


 

 新しい宿舎の明かりが、静かに灯っていた。


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