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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第一章 始まりの町

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一閃、断つ

 地面が抉れる。



 鉄皮熊の前脚が振り下ろされる。


 


 ヒナタが受ける。


 

 鈍い音。


 

 骨まで響く衝撃。


 

 足が、半歩沈む。


 「……っ」


 止めている。


 


 だが。


 押される。

 

 重い。


 今までの魔物と、質が違う。


 質量そのものが、ぶつかってくる。

 


 ヒナタの体が、後ろへ弾かれる。

 

 その瞬間。

「――離れて」

 ステラ。


 足元に術式。


 光。

 爆ぜる。

 衝撃波。


 

 鉄皮熊の巨体が、わずかに浮く。



 その隙に。


 ヒナタが着地。


 踏み込み。


 一閃。


 

 火花。

 浅い。

 刃が、弾かれる。


 

「……硬ぇ」


 舌打ち。



 すぐ横。

 鉄皮熊の腕が薙ぐ。

 速い。


 

 避けきれない。

 その瞬間。

 

 薄い光が、ヒナタの前に走る。


 防御術式。


 衝突。

 光が砕ける。


 だが。

 勢いが、わずかに殺される。



 ヒナタが滑りながら受け流す。


「助かる」



 

「三秒だけ持ちます」

 即答。


 ステラの手が、止まらない。


 詠唱。

 次の術式。


 雷光が走る。



 鉄皮熊の脚に直撃。

 肉が焦げる。



 匂い。


 

 ――それでも。


 倒れない。

 止まらない。

 踏み込んでくる。


 

「……削れてはいます」

「ですが、時間がかかりすぎます」



「見りゃ分かる」


 ヒナタが笑う。


 余裕の笑いじゃない。


 歯を剥き出した、戦闘の顔。


 

 


 斬る。


 弾かれる。



 ステラが撃つ。


 焦がす。



 体勢が崩れる。


 そこにヒナタ。


 また斬る。


 

 ほんの少しだけ、血。

 だが。

 ほんの少しだけ。



 積み重ねないと、届かない。


 確実に、削り切れない。



 ヒナタの額に、汗が滲む。


(……この感じ)


 このランクの魔物は、何度もやった。


 だが。


(こんな重さじゃねぇ)



 想定より、一段。


 いや。


 二段、上。


 

(今の編成だと……長引く)


 舌打ち。


 


 鉄皮熊が、再び踏み込んだ。


 地面が割れる。


 


 戦闘は、まだ続く。


 


 



 ――その頃。


 



 


 ミドは、セレネの腕を肩に回していた。


「……大丈夫ですか…」


 反応はない。



 体が、ぐったりしている。



 思ったより、運びにくい。


 引きずるみたいに、後退する。


 


 枝が足に絡む。


 転びそうになる。


 

 それでも、止まらない。


 

 後ろで。


 爆発音。


 金属音。


 ヒナタの声。


 ステラの詠唱。


 全部、聞こえる。


 


 遠くなっていく。


 


「……セレネを、避難させろ」



 あの声。


 短い。


 迷いのない命令。


 

 ――セレネだけ。



 


 ヒナタは、二人で持ち堪えるつもりだ。


 自分が戻る前提で。


 足が速くなる。


 


 セレネを木陰に横たえる。


 

 呼吸。


 ある。


 大丈夫。



 顔を上げる。


 




 戦闘音。


 まだ続いている。


 


 鉄皮熊の動き。


 

 ヒナタの踏み込み。


 


 


 ステラの術式。


 


 


 頭の中で、勝手に再生される。


 


 


(……削れてない)


 


 


(何か、おかしい)


 


 


 喉の奥が、少しだけ乾いた。


 




 


 


 まだ。


 


 


 自分は、戦力だ。


 


 


 戻らないと。


 


 


 森の奥で、また爆発音が鳴った。


 


 


 ミドは、走った。


 




 音が、近づく。


 視界の先。


 


 ヒナタが弾かれた。


 


 木を削りながら、横へ流れる。


 


 すぐ立つ。


 踏み込む。


 斬る。



 火花。


 浅い。


 

 ステラの魔法が炸裂する。


 

 爆音。


 閃光。


 


 それでも。


 


 止まらない。


 


 鉄皮熊が突っ込む。


 低い姿勢。


 地面を抉りながら。


 


 ヒナタが受ける。


 押される。

 重い。


 

 土が、ずるずると後ろへ滑る。


 

 また突進。



 同じ。


 低いまま。


 立たない。



 近い。


 それでも、起き上がらない。




 目が、止まる。


 


 突進。


 


 体が、浮いた。


 一瞬だけ。



 影が、開く。


 


 ミドの喉が、勝手に動いた。


「ヒナタ!!」

「下!!」


 ヒナタの目が、わずかに細くなる。



 理解。


 同時。


「ステラ!!」



 地面が、爆ぜた。


 術式。


 鉄皮熊の足元が隆起する。


 巨体が、持ち上がる。



 

 腹の影が、開いた。


 


 ヒナタが踏み込む。



 一直線。


 水平。


 一閃。


 


 深い。



 

 初めて。


 刃が、沈んだ。


 肉を断つ感触。


 血が、飛ぶ。




 鉄皮熊が、絶叫した。


 


 森が揺れた。


 



 確かに。


 今。


 届いた。



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