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95話 頼み事

 「頼み事、ですか?」


ファニアが聞き返した。


その言葉にウィドルツ国王はゆっくりと頷いた。


「そうだ。もちろん、ショールット王国から帰って来たばかりで間がないのは分かっているが、

君たちにしか頼めそうにないんだ。

ノクリス、説明を。」


はい。とノクリスが一歩前に出た。


「実は、ファリスイでの魔物の出現が止まっていません。

少し多いくらいで最初はあまり気にしていなかったのですが。」


ノクリスが机の上に地図を広げた。


まあ、ファリスイの地図なんてもの、生まれて初めて見るんですが。


「ここがファリスイの街です。」


ノクリスの指が一点を指さす。


なるほど、ファリスイもなかなか大きな町だな。


「問題が起きているのがこの森です。」


「森?」


アンサレスト的な?


「この森の面積は北の隣国、ソルア帝国の方も含めると、

アンサレストの二倍の大きさです。」


おー、でっか。


[それで、その森で魔物が大量発生している、と?]


ファニアが言った。


「その通りです。」


ノクリスが頷く。


「それで、私たちでその原因を調べればいいの?」


ニルティアが首をかしげながらノクリスに向かって言った。


「はい。その通りです。もちろん、必要なものなどがございましたらお申し付けください。

こちらで出来る限りのものは用意いたします。」


、、、いや。、、急すぎないか?


なんでニルティアまで状況が理解できているのかわからないんだけど。


「ファリスイに行けばいいのか?」


なんとか絞り出した質問は、答えがわかりきっているものだった。


そのことには気づいている。


けれど何か言わないとなんか俺だけやる気がないみたいな感じになりそうだったから、

仕方なくだ。


「はい。ファリスイはソルア帝国の文化と融合している現地特有の文化がありますので、

調査が終わりましたらその文化に触れてみるのもいいと思います。」


あ、なんか観光の話になっちゃってる。


まぁ、それは置いておいて。


それで、


「今からもう行ったほうがいい?」


ニルティアが言った。


たぶん、ニルティアはノクリスに向けて言ったんだろうけど、

反応したのはウィドルツ国王だった。


「あぁ、申し訳ない。しかしもう見過ごせないところまで来ているのだ。」


ウィドルツは机の上に手紙を置いた。


そしてピン、その手紙を指ではじくと手紙はゆっくりと俺の目の前まで来た。


「読んでも?」


俺が聞くとウィドルツ国王が頷いた。


俺はそれを見てから手紙を手に取った。


封はもちろんされていなかった、

というより破られていた。


『緊急事態』と一番上の行に書かれている。


『ファリスイ北側のホリアンにて一か月ほど前から魔物の出現が増加しておりました。

初めは少し増えたほどでしたので駐屯兵だけで対応できておりましたが、

最近になってその数が急増したしました。

今では冒険者たちの力を借りてもやっとなほどです。

どうかご対応をお願い致します。

―ファリスイ冒険者協会一同―』


うん、差出人の主語が大きい。


「なるほど。」


それしか言葉が出てこない。


「自分に断る理由はありませんが、、

なぜ俺たちなんでしょう?」


ここらへんで少しづつ敬語を外していく。


俺はもともと敬語が得意ではない。


なんか友達には敬語とか謙譲語とかの切り替えがめちゃくちゃ上手なやつもいたが、

俺はいつもそいつに注意されていたようなレベルだ。


今では懐かしいけど。


[それは私も気になります。正直に申し上げますと、

この王都には私たちよりも上の階級の冒険者が多数いると思うのですが。]


その意見には激しく同意だな。


街を歩いていると明らかにブロンズランクよりも上と思われるような人がいる。


それにも関わらず今回俺たちにその依頼(?)が来た。


依頼というより命令な気もするけれど。


「私は君たちに何か普通の冒険者とは違うものを感じている。

ただの私の希望なのかもしれないが、グロメントと何度も対峙し、

そのどの戦闘でも生き残りなんなら撃破している。

それが私には偶然には思えない。

なにか、これから歴史が動くような気がするのだ。」


そこまで言ったところでウィドルツ国王は立ち上がり、俺たちに頭を下げた。


「頼む。」


国王が頭を下げる。


自分の名誉はどうなってもいい。


でも、苦しむ人には救いの手を伸ばしたい。


そんな意志が伝わってきた。


周りを見るとノクリスをはじめ、召使いたちも俺たちに向かって頭を下げている。


「行くしかなくなったね。」


ニルティアが言った。


[そうだね。]


ファニアも頷いた。


「ショウ、戦力が心配?」


ニルティアが俺に聞いてきた。


戦力、。そう、だな。俺の戦力が低すぎる。


ゲームの世界でいうなれば、

周りのレベルが100くらいで、

推奨レベル80くらいのクエストにいこうとしているのに、

俺のレベルだけが40とかそのくらいの感覚だな。


うん、例えがわかりづらいけど。


、テイリアスたちがアングシャたちに殺された時、正直思ってしまった。


『俺がいても死人が一人増えるだけなんじゃないか』


って。


たぶん、みんなに言えばみんな口をそろえて


「そんなことない。」


と言ってくれるだろう。


でも、それがお世辞であっても違っても俺にはお世辞にしか聞こえない。


どうすれば強くなれるか。


この世界ではステータスとスキルが強さのすべてだ。


でも俺には凶刃しかない。


もう最初の方で使っていたスキルはゴブリンくらい、

頑張ってオーガくらいにしか通用しないだろう。


いつも思う。この世界のインフレがおかしい。 


というよりどんどん上の世界に足を踏み入れているような気がする。


俺が強くならなくても周りが強すぎるから誤魔化せているけれど、

もし俺一人になったらすぐに死ぬ気がする。


「、、ウ?、、ョウ?、ショウ!?」


目の前にニルティアがいた。


「どうしたの、?体調悪い?」


ニルティアが俺の目の前にいる。


そのことに気づかないくらい考え込んでいたのか。


「いや、なんでもない。大丈夫。」


俺はニルティアにそう言って国王の方を見る。


「行こうと思う。」


俺が答えるとウィドルツ国王は息を吐いて安堵を示した。


「ありがとう。感謝する。」


そのとき、横腹をつつかれた。


右を見るとファニアが立っていた。


そして国王のいる前を見たまま俺の方は見ずに


[ショウ、後で話そう。]


とだけ言った。


ファニアはそういうと、ノクリスの方へ行ってしまった。


たぶん今の会話、俺だけに聞こえるようにしたな。


周りのニルティアたちは何事もなかったようにいる。


そりゃあそうだ。何もなかったのだから。




 すぐに出るということで、俺たちはさっそく準備に入った。


ニルティアには剣の手入れのために武具店に行くといい、

ファニアと宿の外に出た。


そして広場の噴水まで来た。


「どうかしたのか?」


俺が聞くとファニアは俺を見上げた。


[さっき、何考えてたの?]


ファニアは俺の目から焦点をずらさない。


「バレてたのか。」


俺が言うとファニアは頷いた。


[あんまりよくないこと考えてたでしょ。]


その通り過ぎる。


「あぁ。」


[やっぱり、周りとの戦力差?]


やっばexactlyだ。


[確かにショウは弱いね。私たちと比べたら。]


「え?」


思わず声が出た。


[ん?間違ったこと言った?]


「いや、言ってない。」


[でしょ?だって、ショウは戦闘タイプじゃないから。]


俺が何も言えないでいると、ファニアが剣に手をかけた。


[ショウは前衛だけど指令塔だと思うんだ。どちらかと言うと指令塔。

まぁ、簡単に言うとまとめ役?

前衛はおまけみたいな?

だって、ショウがいなかったら竜人族と獣人族は今でも対立していただろうし、

エルフなんて敵対だよ?]


まぁ、それはそう。


[でも、今その状況にはなっていない。

なんならほぼすべての民族と友好的な関係を築いてる。

これってショウの功績じゃない?

力ではなく対話で解決する。

もちろん、その対話の中で条件を満たすために戦闘があったかもしれない]


俺は奴隷解放の時を思い出した。


[でも、私はそんなショウがかっこいいと思うよ。

他の人がどう言おうと関係ない。

ショウは私たちのパーティーのリーダーなんだから。

堂々としていこう?]


ファニアは背伸びして俺の頬に手を伸ばした。


[しっかりしろ!ショウ!]


パン、と軽く俺の頬を挟んだファニアは、

踵を返して宿の方へと歩き出した。


そして数歩歩いたところで振り返った。


[早く戻らないと出発遅れるよ。]


ファニアの言葉で俺の足は軽くなった。


宿に戻るとニルティアがもう全員分の荷造りを終えていた。


遅いって半ギレだったけど。




 「それでは、道中お気をつけて。」


早朝、ノクリスに門の前でそう言われたのは半日くらい前だろうか。


北へ向かう道を歩いている、のだけれも。


もう周囲に危険がいっぱい。


「ショウ、気づいているよね?」


歩みを止めない俺にニルティアが聞いてきた。


「もちろん、気づいてる。」


背後の方に武装した”人間”。


その数およそ10ってところかな。


なんともまぁ、目をつける人を間違えたね。


俺は気づいていないふりをしながらそのまま数歩歩いたところで横の茂みから人が5人飛び出してきた。


背後にも5人いる。


「なぁそこの冒険者さんよ。ちょっと有り金置いて行けよ。」


真昼間に盗賊か。


「ショウ、殺る?」 


ニルティアの問いに俺は首を横に振る。


そこまでの危険性を感じない。


「そこの嬢ちゃんたちは残りな。あとでたっぷり、、。」


そこまで言ったところでファニアが剣を抜いた。


[なにか、おっしゃいましたか?]


あ、やばい。


「なっ!なんだこいつ!」


明らかに下っ端なやつが叫んだ。


うん、なんか、疲れる。


「はぁ、。お前ら、、覚悟しろよ?」


俺が睨みつけると盗賊たちは我先にと茂みの方へ飛び込んでいった。


「なんなの、?」


ニルティアが投げナイフを懐に収める。


ファニアも剣を鞘にしまった。


「まぁ、戦闘がないのはいいこと。平和じゃん。」


「ショウ、平和って意味わかってる?」


ニルティアの突っ込みを無視、

する気はなかったんだけど、

無視せざるを得ない状況になった。


周りの空気が変わった。


[ショウ、]


ファニアが言った。


すると、


「うわぁぁぁぁ、、、!!!」


と叫び声、というより断末魔が茂みの奥から聞こえてきた。


「この魔力は、、」


[人じゃなさそう。]


ニルティアも戦闘態勢に入った。


すると茂美が揺れ、ついさっき見たような気がする男が飛び出してきた。


「あ、!さっきはすまなかった!助けてくれ!お頭が化け物に襲われてんだ!」


男が叫んだのとほぼ同時に再び茂みの奥から何か出てきた。


「ひっ、!」


それを見た瞬間、男はうずくまった。


「人の腕、。」


ニルティアが呟いた。


俺は腕が飛んできた茂みの方を見る。


少しだけ魔力が揺らいでいる。


何がいるんだ?



はい。昨日に引き続きやはりこの筆者は投稿頻度が狂っていますね。まぁそんなことはだいぶ前から分かっていることなのであまり気にしませんが、さて茂みの方にいるのはなんなのか。次回以降のお話もお楽しみに!では!

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