90話 王座奪還
「サーレン、か。」俺とノクリスはレジスタンスの拠点に到着してから、それまでにあったことを話した。オルフェンは顎をさすりながら言った。「王族側にも今の状況を変えようとする連中はいるようだな。割と楽に終わるかもしれん。」「オルフェン、一つ聞いてもいいか?」俺はここへ来る途中、ずっと考えていた。「なんだ?」オルフェンの双眸が俺を捉える。「オルフェンってもしかして、前の王だったりするか?」「今ごろか?」オルフェンは苦笑いした。「先代の王に嵌められちまってよ。今じゃこの様だがな、一応王族だったんだ。まぁ、族とは言っても、みんな殺されたんだがな。」最後の一言には、オルフェンの悲しみが含まれていた。「それで、どういう策を思いついたんだ?」やっと本題に入った。「それは私から説明いたします。」ノクリスが地図を広げた。「昨夜のうちに東西南北の大きなレジスタンス集団に宛てて手紙を送りました。『3日後に一斉に反抗し、一気に王城を占拠しよう。オルフェン王を復活させよう。』と。勝手ですがオルフェンさんの名前をお借りしています。」言いながらノクリスは地図の上に白く丸い石をおいていった。4箇所。そして中心に黒い石をおいた。「正直、四方からの攻撃に対して今の王族が対応できるとは思っておりません。さらに、内部にはサーレンがいますし、私たちの仲間もいます。混乱しているように見せかけて王族たちの妨害をすることも容易いでしょう。昨日数えたところでは、王城の兵士はざっと500人。しかしその中で忠誠を完全に誓っているものは250人と言ったところでしょうか。城壁の周りに私の剣を配置し、能力を使用することで敵の動きをほぼ無効化しておきますので、さらに敵は対応力が低下します。王族を全員確保すれば、この革命は成功です。」ノクリスは黒い石を弾いた。「なるほどな。」話を聞き終わったオルフェンは頷いた。「ここまで早く策を練り上げるとは、、すごいもんだね。」ラッドの母―ラータスが言った。「それでは、この計画を実行していただけますか?」ノクリスの言葉が空間に響いた数秒後、大きな声が響いた。全員が右腕を突き上げて反応した。
城に戻ると、ファニアが入り口まで来てすぐに出迎えてくれた。[ショウ、どうだった?]俺は頷いた。するとファニアは微笑みながら、[よかった。]と言った。
部屋に戻ると、ニルティアはシュリードと真剣な顔で話していた。俺とノクリスを見ると、二人とも話の内容を教えてくれた。どうやら城の構造が大体分かったらしい。やはりこの城には、東西南北4箇所入り口がある。つまり、ノクリスの計画が上手くいけば王族たちは大ダメージを受けることになる。さて、と。これで準備は整った。2日後の朝、この国の歴史が動く。
2日後の明朝、俺たちは起きて武装を整えていた。[私たちは表立ってすることはないんでしょ?]ファニアの問いかけに俺は頷いた。[王族たちはまだ寝てる。]ファニアが気配を感じ取ってくれた。わかった、と答えて俺は窓から外を見た。まだ外は暗く、しっかり遠くまで見える状況ではない、が。遠くに明らかな明かりが灯っている。あの方向は、「オルフェン。」ノクリスが俺のセリフをとった。、あぁ、そうだ。ノクリスはまだ耳で目が隠れている。「四方から多数の人間の気配を感じました。いよいよですね。あとは、」ノクリスの耳がフワッと起き上がり、その耳の下から金色の瞳が現れた。「私も位置につきましょう。」位置、というのはおそらく昨日言っていた『敵の動きをほぼ無効化』というやつだろう。たぶん魔力領域。そう、敵がかわいそうになるやつである。そのとき、部屋の扉がノックされた。「明朝に失礼します。サーレンです。」俺たちは一応武器を床に置き、隠した。ここで裏切りなどされたらたまったものじゃないからな。「どうぞ。」そう返すとほどなく扉が開いた。
「失礼します。ただいま、遠方で王への反逆をうたう集団が決起いたしました。私はご客人の守護に回されましたのでここへ参りました。」サーレンは20人くらいの兵士を連れて入ってきた。一瞬目があった。サーレンの目には、強い意志が込められていた。「始めます。」ノクリスの声とともに、城内から多数のうめき声が聞こえてきた。「兵士たちと王族の体を痺れさせております。今のうちに4つの城門を開けてください。」「わかった。4班に分かれて城門を開けろ!競争だ!」はい!と声が重なり、兵士たちが部屋から出ていった。「協力感謝いたします。では。」サーレンも兵士たちの後について部屋を出ていった。
しばらくして、城内に兵士ではない人影が見えた。見覚えのある顔の人もいる。それぞれ異なる旗が3つ。レジスタンスが3グループ到着していた。
それから何分過ぎただろうか。未だにスレード王が捕まらない。他の王族はとっくに確保した。「どこにいるんでしょうか。外に出られるわけはないので、まだ城内にいるはず、、っ!?」ノクリスの言葉が途中で止まった理由は俺にでもわかる。王城の広場に魔族の気配がしたからだ。すぐに窓の外へ身を乗り出しながら当たりを見渡す、、いた。「なんだ、、あれ。」見たことのない魔物だった。クワガタのような大きな顎を持ち、ムカデのような多くの足があり、目はクモのように8個ある。あきらかに普通の魔物ではない。「はっはっはっはっは!!」笑い声がした。その声のほうにいたのは、スレード王だった。[嘘、、。]俺の横から外を見たファニアの顔が青ざめた。そして次の瞬間、ファニアは窓から飛び降りた。地上からの高さは40mはある。[ショウ、頼んだよ。]ファニアの声が聞こえたと同時に、ファニアの手の先に5つの魔法陣が出現した。ファニアは背中に氷竜の翼を生やして羽ばたいてホバリングしている。[アロザルン。]魔方陣から、3匹の竜が絡み合いながら飛んでいった。常識外れの轟音が響き、砂ぼこりが俺の視界に広がった。そのすぐあとに青い光が眩しくきらめいた。しばらくして、[硬い。]ファニアの声が砂ぼこりの中から聞こえてきた。一か所だけ青く砂ぼこりのもやが光っている。あそこか。
砂ぼこりが晴れた時、俺は自分の目が信じられなかった。王城のはるか上空で、大きな水色の竜とさっきの魔物が、噛み付きあっていた。正確に言えば、竜は魔物の首をかみ、魔物の顎は竜の銅を挟んでいた。次の一瞬で竜が魔物の首を噛み千切った。「ギャァァァァァァァ!!!」耳をつんざくような音を出しながら魔物は地面に墜ちていった。そのあと、竜は光に包まれてファニアに戻った。[ショウ、]ファニアはゆっくり自由落下をはじめた。まずい。俺は迷うこと無く窓の縁を蹴った。剣を抜く。体は勝手に動いた。凶刃の舞・酷・無神突き。俺は空中で一気に直線方向へ加速する。目を閉じて落下するファニアをなんとか受け止めた。1回名前を呼んだが反応が無かった。真下を見る。地上までは30mと言ったところか。俺は体制を整え、着地の用意をする。両腕は使えない。なら、「ノクリス!!!」俺は力一杯叫んだ。「魔力領域・浮。」その声が聞こえたのは俺の叫びのすぐ後だ。一気に落下速度が遅くなる。俺はゆっくり地面に足をついた。「な、なんだお前は!こんなことをして、タダで済むと思っているのか!?」スレード王が遠くで叫んでいる。黙れ。「恐怖政治をしておいてよくそんなことが言えるな。」俺は無意識に言葉に圧を込めていた。「ひっ、。」とスレード王が一歩引いたのがこの距離からでも分かった。「捕らえろ。」オルフェンの声がした。その声を合図に、スレード王は5人がかりで抑えられた。[頼んでおいて良かった。完全に魔力切れ。]ファニアが目を覚ましていた。
スレード王は、魔族と手を組んでいた。あの魔物は、魔族から得たものだと話した。多数決でスレード王をはじめとする王族は全員地下牢へ幽閉した。王城の広場には、さっきの魔物の死骸がまだ残っている。ノクリスが研究するから置いておいてくれと言い、周りにはノクリスの大剣が並び、魔力領域を展開している。
終わりましたね。さて、まぁ、謎のデカ物はファニアの氷竜があっさり片付けちゃいましたけど、、。まぁ何はともあれオルフェンが王座奪還ですね。もう二話くらいはショールット王国で書いて、また旅に出ようかなと思ってます!では次の話で!




