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88話 ショールット王国の裏

 門の前には、剣を持った第二師団の制服の、白いシャツと白いズボンを身にまとった人たちが綺麗に並んでいた。「特別顧問様、ノクリス様、準備は整っております。」一人男性が一歩踏み出して言った。よし。「じゃあ、出発だ。みんなよろしく頼む。」はい!と全員から返答があった。すると横にファニアが来ていた。[たのしみ。]それはなによりです。俺たちは出発した。途中、ノクリスに敬語は使わないでほしいと言った。さすがに敬称は付けますが、と言われたが、承知してくれた。まぁ、いきなり敬語を使われると、ちょっと困惑するからな。

 ショールット王国は、ロンビルク山脈よりも西側にある。途中、魔物の群れに遭遇することもあったが、難なく対処し、時間をかけるようなことはなかった。そして、一周間以上かけて俺たちはロンビルク山脈を越えた。獣人族と竜人族の助けもあって山脈は通常の3倍早く越えることができた。

 目の前には、工業で栄えているアンクロート、そしてさらにその奥には国境を意味する大きな門が見えている。でも、今はあまり時間に余裕がないから、俺たちはアンクロートを素通りして国境を越えることにした。軽く出国と入国審査があったが、ノクリスの顔パスで爆速だった。ショールット王国は、王都のみの国で、そんなに大きくない国と思うかもしれないが、その王都の大きさがおかしい。国境の門をくぐった瞬間、そこはもう街中だ。だいぶ奥のほうにうっすら城のような建物が見える。「着いたな。」俺が言うとニルティアが頷いた。「ですが、王城までがとても遠いんですよね。」ノクリスが王城の方を見ながら言った。うん、視界の一番向こう側にギリギリ見えるくらいだからな。それはつまりとてつもなく遠いということを意味している。[早く行こう。]とファニアが俺の裾を引いた。俺はファニアの顔を見ると、言葉を失った。ファニアの顔色が悪すぎる。「これは、、。」それを見たノクリスがファニアの周りを回り、ファニアの背後で止まった。「ショウさん、これが原因ですね。」俺はノクリスの指がさしている先を見る。小さな魔方陣が不気味に黒く光っている。「な、、。」「呪い、ですね。」ノクリスはそう言うと懐から短剣を出し、「失礼します。」と言ってファニアの首にある魔方陣を切った。ファニアは力なくその場に座り込んだ。「見つけました。」あぁ、俺もだ。魔法陣が切られた瞬間、背後から魔力の乱れと殺気を感じた。ニルティアも殺気に気がついたようで、一瞬でナイフを投げていた。俺が振り向いたときには、裏路地に入ろうとしているやつが、そのすぐ前に刺さったナイフによって止まっている光景があった。「そんなに急いでどこへ行くんだ?」俺が聞くと一瞬そいつは目を合わせたが、すぐに俯いた。背丈から少年・少女であることは容易に想像できた。服がぼろぼろで、いい生活はできていないのだろうともわかった。「黙っていては私どもも助けることもできません。どうか、理由を教えていただけませんか?」ノクリスはその子に近づくと、きれいな純白の服の裾を地面につけ、その子と目線の高さを合わせた。ノクリスは子供が怖がらないようにするためだろう、目が見える状態にしているが、剣自体は第二師団の人たちの中に埋めて、見えないようにしている。

「、、お前たちは、、、役人とは、、違うのか?」

その子から発された言葉は、すべて震えきっていた。「私たちは助けを求める人たちを見捨てるようなことはしません。」ノクリスは力強く言った。「よかったっ、、。」絞り出された安堵の言葉は、その四文字だけで俺たちに今何が起きているのか知らせてくれた。「大丈夫ですよ。」ノクリスはその子をやさしく抱きしめた。

 その子は名前をラッドと言った。ラッドは俺たちを現王族に対する反抗心を持つ集団―レジスタンス―の拠点に案内してくれた。もちろん、いやな予感がしたからほかの第二師団のメンツは大通りに待機させている。「オルフェンさん!ただいま戻りました!」「おい、そいつは誰だ。」椅子に座っていたガタイのいい男性が低い声で言った。明らかな殺気。「この人は隣国の近衛騎士団の、、」「なんで王族の犬を連れてきた!?」怒号、。「ご、ごめんなさい。」そのとき、甘い香りがした。奥から頭の後ろで髪を結んだ女性が出てきた。「オルフェン、まずは話を聞かないとだろ?人より警戒心が高いラッドが案内してきたんだ。」その女性は俺たちを見て軽く礼をした。「すまないね。ここの連中はみんな王族が大嫌いなんだ。もちろん私も大嫌いだが、あんたたちは違う雰囲気があるんだよ。」「いや、こちらこそ急に押し入ってしまった。無礼だった。」「いいんだよ。とゆうか、ラッドを捕まえたってことは、誰か『呪い』をかけられたんじゃないか?」あ、。忘れてた。[『竜の加護』があるのでもう大丈夫ですよ。竜人族の回復力はすごいですから。]ファニアは俺の隣に来て笑顔でいう。[いい呪いでした。でも、少し制御が出ていませんね。]ファニアはラッドに言った。いや、どういうことだよ。今さっき呪い殺されそうになってただろ。とゆうか、「『呪い』ってなんだ?」俺はノクリスに耳打ちした。「この国には『魔法』という概念がないの。『魔法=呪い』とされ、『魔法』が使えるものは『異常者・異端者』とされ迫害の対象になる。つまり、この国の大半の人は魔法が使えない人なの。」え?「じゃあどうやって魔物とかと戦ってるんだ?」「私たち獣人族のように『覇気』を使ってるの。まぁ、その『覇気』を拳や剣に集中させて戦ってるんだけど。」「なぁ、なんでお前さんたちの国はそんなに穏やかなんだ?」オルフェンが聞いてきた。なぜか、。理由か。ノクリスは時計を見てから、「そうですね。私たちも一緒に考えたいところではありますが、私たちも早急に人と合流しなければなりませんので、あまり長い時間は考えられないかもしれません。先にお聞きしておきます。あなた方の最終目標はなんでしょうか?」と言った。「この国の正常化だ。この国の王族は腐っていやがる。」オルフェンは間髪入れずに言った。「まともな人物もいますが、」「そいつらの意見も踏みにじられている。」ノクリスの言葉をオルフェンは食い気味に遮った。「そうですか。では、」ノクリスの背後に数本の大剣が出現した。「この場で私が敵に回ると言ったら、あなたたちはどうしますか?」ノクリスの周りにいた人が全員剣を抜いた。「死んででも殺す。」オルフェンはノクリスを睨んだ。「覚悟があるのなら、大丈夫でしょう。」ノクリスの背後の大剣が消えた。「行くか。」俺たちは拠点を出て裏路地を戻り、大通りに出た。

 「ファニア、ほんとに大丈夫だったの?」王城へ向かう途中、ニルティアがファニアに聞いた。[いや、普通にきつかった。]ファニアは苦笑いした。[あの子の魔法はすごい強力。あれ、日常的に使ってるんだろうけど、たぶんあの魔法、対象から魔力と活力を吸収する魔法だね。なんか体がだるいから。まぁ、ちょっと氷帝としてのプライドが、、。]いや、ただ見栄を張りたかっただけだろ。「ですが、やはりこの国には何か裏があるのかもしれません。」ノクリスの言葉に俺は賛同した。「そうだな。さっき通った大通りは、商人や一般人はいたけど、全員貧しそうだった。だが、」俺は王城のほうを見る。王城の周辺は綺麗な建物が並んでいて、貧しさは感じられない。「国の中枢部の人たちの財布は潤っていそうですね。」ノクリスは俺の言いたかったことを代わりに言った。「じゃあ聞いてみようよ!」俺とノクリスが止めるより先にニルティアが道の向こうから歩いてくる人に向かって走っていった。「この国の王様ってどんな人ー?」声をかけられた女性は最初困惑していたが、口を開いてこういった。―とても良い方たちだと思います―。明らかに嘘をついている。俺は背後からの視線を感じ、振り返った。なるほど。()()()()か。一瞬の視線は、多分役人。少しでも王族批判をすれば即処す、といったところか。「そうか、教えてくれてありがとう。」いろいろと。「合流を急ごう。」俺はノクリスたちに促した。みんな頷いてくれた。

 「だいぶお早いご到着ですね。」王城につき、客間に案内されると、シュリードが出迎えてくれた。「あ、敬語は外して。」俺が言うとシュリードは一瞬固まったが、すぐに頷いた。さすがの対応能力。「報告をしたほうが、?」シュリードの視線がファニアに注がれた。「この子がノクリスの言っていた氷帝、ですか?」いかにも信じられないというような表情でファニアを見るシュリード。[初めまして。竜人族長の娘、ファニア・メト、と申します。]ファニアはゆっくりお辞儀した。「ご足労、感謝いたします。」[私に対しても敬語は外してくださいね。]ファニアは微笑んだ。

 それで、とシュリードが話し始めた。「ショールット王からの共同研究の件ですが、ウィドルツ国王からは『怪しくないのならいいぞ。』とお言葉を預かっております。」うわ、絶対自分で考えるのがめんどくさいからって任せただろ。それで、俺は部屋の中にショールット王国の人がいないことを確認した。聞かれたらまずい。[聞かれちゃまずい会話なら、私が進めるよ。]ファニアの声が聞こえた。[今私の声は、シュリード、ノクリス、ショウ、ニルティアにしか聞こえないようにしてる。私の質問に首を横に振るか縦に振るかで応えて。]俺たちは縦に首を振った。[この国はもうじき限界を迎える。]みんな頷いた。[シュリードたちも多分、この国にある裏について何か勘付いたでしょ?]シュリードが頷く。[王族が力を持ちすぎている。]みんな頷いた。その通りだと思う。あの女性の反応をとってみてもこの国は恐怖政治がしかれていることに気づける。これまで何人が犠牲になっているのかはわからないが。[私の意見だけど、共同研究、断ったほうがいいと思う。]みんなの顔をみて、ファニアは続けた。[でも、断ればキレた王族たちが何をしてくるかわからない。]シュリードが頷いた。[だったら、革命を起こしてもらおうよ。]信じられない言葉が出た。「え?」シュリードが思わず声を出した。[私たちでなんとなく王族たちのに隙を作って、そこをレジスタンスにつついてもらう。そうすれば、それが火種となってもう短くなっている革命までの導火線が点火される。あとは放っておくだけ。どうせ王族に味方する人たちはいないんだから。]まぁ、ごもっとも、と思った。今の王族に反抗しようという集団は、今日出会った集団だけではないと思っていた。なら、「ありだな。」俺は言った。「そうですね。」ノクリスも頷いた。「壊しちゃおうか。」ニルティアは立ち上がった。[なら、いい感じに隙を作らないとね。共同研究への返事ははぐらかして遅らせよう。]ファニアがまとめ、会議は終わった。

はい、まさかの国家転覆を狙うことになるとは、ですね。まぁ、どうなることやら。新たに始まった第二章、お楽しみに!

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