77話 惨劇
「ユレンは孤児でした。」移動しながら突然ノクリスは言った。「あの子の頭の中には『魔族を殺す』ことしかありません。それは昔からずっとです。私があの子にあったときから、ずっと殺意に支配されています。おそらく、それはこれからも続くでしょう。もちろん、止めて欲しいというのでは無くて、ただ心配なのです。いつか殺意に支配されて取り返しの付かないことになるんじゃ無いか、と思うと。」ノクリスが珍しく―かは知らないが―よく喋る。「さすがに大丈夫とは思いますが、向かったときにもうすでに、なんてことを考えてしまうんです。」なるほど、心の底から心配しているから、話しておかないと落ち付かないって状態なのか。俺の記憶の中には同じような光景がある。テイリアスとその側近たちの記憶。守りたいと思ったのに、理不尽に壊されていくこと。それがもう元に戻るようなことでは無いこと。その全てを俺は視覚だけではあったが経験した。それでもテイリアスは前を向いた。魔族を裏切って人類側に付くことを決意した。ならそれに答えていかないと、と俺はあの時思った。「近いです。」ノクリスの警告とほぼ同時に、俺はとてつもない殺気を感じた。「ユレンの殺気です。」ノクリスは言った。しばらくして俺の視界には剣を地面に突き刺しているユレンの姿が映し出された。
「ユレン!」ノクリスが駆け寄ろうとすると、ユレンは腕を上げてそれを制止した。「大丈夫です。ノクリス様。これは私の戦闘です。」ユレンがそれを言った瞬間、その目の前に居たアングシャは笑った。「えー?その状態からまだ勝てる余裕があるのー?絶対無いですってー。」アングシャは短剣を両手に持った。両手剣のアサシン。初めて見たけど、あれはやばい。何人も殺してきた奴の構えだ。「それじゃあ、いくよー。」アングシャが消えた、と思うとユレンの背後にいた。「おっそー。」アングシャがユレンの背後から剣を突き刺そうとしたが、それは途中で止まった。ユレンの逆手持ちの剣がアングシャの剣の軌道を弾いたことによって変えたからだ。「へぇ、やるじゃん。でも、これはー?」アングシャはその体勢のまま連撃を繰り出す。「くっ、、!」ユレンが歯を食いしばったのが分かった。「ほらぁ、対応できてないじゃん?」連撃が終わったとき、ユレンは全身血まみれになっていた。だが、アングシャは綺麗なままだった。「ノクリス様、申し訳ありません。」ユレンは一瞬ノクリスの方を見てそう呟いた。だがその一言で意味は伝わったらしく、「やめなさい!ユレン!!」とノクリスが叫んだ。ユレンは突っ込んだ。「バカの一つ覚えだー。」アングシャは短剣を低い体勢で構え、迎え撃とうとした。しかしその瞬間、ユレンの目が変わった。日頃緑色だったはずの目が、ノクリスと同じ金色にかがやいている「魔力制御・止。」ユレンの口から発された言葉は俺に己の耳を疑わせた。そして、少しの間アングシャの剣を振り下ろそうとする動きが止まった気がした。「チッ!」とユレンの舌打ちの声が聞こえたが、もうその次の音がユレンから発されることは無かった。アングシャの剣は完璧にユレンの背中に入った。だが、ユレンの剣もアングシャのみぞおちに入った。「ごふ、、、」「かはっ、、。」と2人して吐血した後、立ったまま動かなくなった。あの時と同じ。ユレンの両目からは血が流れている。ドン、と音がしたと思うと、ノクリスの剣がアングシャを貫いていた。「確実に殺しておくことは私たちにとって弔いの次に大切なことです。」ノクリスはそう言うとユレンを寝かせ、目を閉じさせた。「無茶せずに私に任せていて良かったのに、、どうして。」ノクリスの言葉は説教に聞こえるかもしれないが、俺には単なる悲しみに聞こえた。「約束通り、だね。リン・ユレン、我が剣となり共に来い。」ノクリスがそう言った瞬間、ユレンの体が光り始め、小さな粒になっていった。そしてその粒は見覚えのある形になった。ノクリスの大剣。「答えてくれてありがとう。」ノクリスはそう言うと大剣に触れた。「ノクリス、それって。」俺は恐る恐る聞いた。「私の剣は2本を除けば全て戦場で死んでいった第二師団の者の魂の結晶です。死んだ後に私の呼びかけに答えてくれたときはこんな風に剣になってくれるんです。」なんとなーく理解できたけど。死んだ部下たちの魂。「生存者の確認をしましょう。ノクリスはスッと立ち上がった。」切り替えの早さもさすが師団長だなと思った。
俺は1番に今朝皆でいたテントに向かった。中に入った瞬間俺は気を失いかけた。目の前にあったのは、アイシャの杖。そしてその間に骨の数々。臓器も並べられている。そしてテントの奥には、、、腹が開かれたアイシャがいた。、、、吐き気がする。俺は今のテントから出てさっきアリスの杖を見たテントに向かった。もう、足が鉛のようだ。信じたくなかった。壁の柱にくくりつけられているアリスなんて見たくなかった。目を閉じ首から血を流していた。足の先からポタポタと血が落ちていた。もう、何も考えられない。もう、無理だ。俺は他のテントを見て回った。テントの中には血まみれで首が飛んでいる兵士や、全てバラされている兵士。アリスのように括り付けられている兵士などがいた。それらを見る度に俺の頭は機能が停止していった。「ショウさん。」後ろからノクリスが声をかけてきた。「来てください。」俺はその言葉に従って行った。それはまだ見ていないテントだった。中を見た瞬間、俺はもう立っていられなくなった。息が出来ない。苦しい。もう嫌だ。変な夢ならもう覚めてくれ。アイシャ、アリス、テイリアス。帰ってきてくれ。俺の背中を叩いてくれ。何してるんですかって。言ってくれよ。朝話した。たった6時間くらい前に。なんで。なんで、奪われないと行けない?なんで?マリガルドは、ニルティアは、。俺は知らず知らずのうちにフラフラと歩いていた。
何を感じていたのだろうか。何も考えては居なかった。まさかこんなことになるなんて。朝の時点では思っても無かった。まさかパーティーメンバーが3人死ぬなんて。俺は森の中に来ていた。突然脇の草むらから何かが飛び付いてきたことにも気付いたが、俺は反応しなかった。我に帰れたのは、そいつが俺の腕を噛んだから。焦点が合い始めた俺の視界に居たのは、白い毛並みの狼と、緑の角を持った大きな鹿だった。そいつらは俺の方を見ると、すぐに奥の方へ歩き出してしまった。まるで「ついてこい」と言わんばかりに。
俺がついてくるのを何回も振り返って確認しながら、森の奥へと進んだ。この森はそこまで深くは無い。旅人であろうとも、迷うことは無いはずだ。そして、着いた。大きな木があった。そして、その幹の根元に、ニルティアとマリガルドが横にされていた。俺はそれを見た瞬間、体が勝手に動いていた。「マリガルド!ニルティア!!」俺が2人のそばへ行ったとき、隣にさっきの鹿と狼がいた。俺は声が出る限り2人の名前を呼んだ。戻ってきてもらうために。
えー、。はい。(土下座。)陳謝いたします。こうするしかありませんでした。本当に。したくはなかったです。本音です。まさかでした。はい。次の話もなるべく早く書けるようにするのでまた次も読んでもらえると嬉しいです。(7000PVありがとう!!)




