65話 全ステータス1
「あ、やっと来た。」冒険者協会の扉を開けると、真っ先にクリスが話しかけてきた。「あ、ごめん遅くなった。」いろいろあったせいで。「まぁ、いいわ。少し話を聞いてくれる?」まぁ、そのためにここに来たしな。「わかった。」俺はテイリアスに視線を送った。テイリアスは少し頷いた。
「話っていうのは、ショウ、あなた自身のことよ。」クリスは椅子に座るなり、俺に向かってそういった。「俺?」驚きすぎてとっさに声が出た。「えぇ、最初は流していたけど、この前ソフィリアに会った時に話題になったの。”あなたのステータス”が。」?、、話が見えない。「どういうことだ?」いや、ほんとに分からない。「ショウのステータス?そういえば、、、全ステータス1、、ってまさか、、!」眠そうにしていたテイリアスが突然呟いた。と思うとテイリアスは俺に向かって手を伸ばし、魔方陣を展開した。次の瞬間、俺の足は宙に浮いていた。「が、、。」は?なんのつもりだ?テイリアスは俺をいつもの目ではなく、何か、禍々しいものを見るかのような目で見上げている。クリスは一瞬、起きたことが理解できずに固まっていたが、理解したのかすぐにテイリアスの前に立った。「テイリアス、ショウはありえないわ。降ろして。」テイリアスはクリスの低い声で言われた言葉にハッとしたようで、すぐに俺を下した。「がはっ、、。」はぁ、まじで死が見えた、、。川の向こうに死んだじいちゃんとばあちゃんが見えた。満面の笑みだった。まるで死ねと言われているような、、、。いや、ないと思うけど、久しぶりに孫の顔が見れて嬉しかっただけだと思うけど。「ごめん、、。」「どうしたんだ?」俺は首をさすりながらそばでしゃがんだテイリアスを見る。テイリアスは後悔からか顔を手で覆っている。ふむ、小刻みに肩が震えている。人間笑うときと泣くときにしか肩は震えないと思うから、まぁ、後者だろ。「、、理由があったんだろうから、なんだ、あんまり気にすんなよ?」俺の言葉を聞いて少しは震えが収まったが、それでもまだ震えている。「ごめん、、。」テイリアスから発せられた言葉はそれ以外に無かった。「説明は私がするわ。さっきの話の続きよ。」はぁ、。俺は椅子に座りなおした。「実はね、ショウと同じように全ステータス1の人はほかにもいるようなの。」あ、そうなんだ。仲間がいるんだ。「どんな人なんですか?」俺は単なる興味で、自分と同じ境遇の人がどんな人なのか気になったから聞いた。クリスの答えにはとてつもなく驚いた。「全員が殺人鬼よ。」場の空気が凍った。多分俺が凍らせた。「え?」驚きが少し冷めてから口から出た言葉は、それが限界だった。「どういうことですか?」俺は改めてその言葉の意味を聞いた。いや、意味は理解できるけど、なんて言うんだろう、、。ただ信じられなかった。「殺人鬼っていうレベルだから、全員、50人以上殺しているわ。」な、。「うち1人の鎮圧には私も関わったわ。」クリスが上を見上げる。何か思い出そうとしているようだ。「最初の事件は何年前かしら。たしか、まだ魔族と人類が表だって争ってはなかったころだとおもうけど、。」「それっていつなんですか?」思わず聞いてしまった。「多分100年くらい前。」テイリアスが入ってきた。「そんなに前に?」「うん。」説明のバトンはテイリアスにパスされた。「私がまだ生まれてない頃だけど、お母様から聞いたの。『王都高ランク冒険者連続辻斬り事件』って言うらしいわ。」クリスが顔を上げた。「あ、それよ。ちょっと待ってて、資料があるはず。」クリスは後ろの棚に手を伸ばすと、一番古そうな冊子を持ってきた。「ここよ。」その冊子を開けると、なにやら報告書のような物があった。その紙の隣には、『ウドルフ薬草集め完了届』と、いかにも平穏な空気のクエスト報告があった。しかし、俺の目はその隣、本命の紙に釘付けになった。『王都高ランク冒険者連続辻斬り事件』と書かれた紙には、地図中の至る所に赤い『×』が記入されていた。「この赤いのが、」「事件の現場よ。」俺の確認の言葉を全て聞く前にクリスが肯定した。「真っ赤ですね。」俺がつぶやくと、今度はテイリアスが拾った。「もちろん、だってこの辻斬り、3日間で30人死んだんだから。それも腹が開かれた状態で。」うっわ何その推理系のストーリーによくあるテンプレ。死体に何かメッセージがある、的な。「それで、その犯人が、」またしても確認の言葉。「えぇ、全ステータス1だったわ。」疑問が浮かんだ。「でも、そんなステータスで30人も殺せます?」「そいつ、魔眼を持ってたのよ。」俺がぶつけた疑問をクリスがすぐに解消してくれた。魔眼、マリガルドと同じもの、か。、、化け物だな。「それで、そいつは?」まさか生きてるなんてことは無いよな?「もちろん、殺したわ。マリガルド様が。」いや、あの人何歳だよ。少し前にピンピンで双剣振ってましたけど?「それで、俺がその可能性があると?」俺は脱線しかけた話の行く先を、少し修正した。「そうね、思ったことが無かったかと言えば嘘になるわ。最初にショウが来たとき、全ステータス1と聞いて警戒したわ。棚の下で短剣を用意するくらいには。」まぁ、そうだよなー。「でも、ほんとに弱いみたいだったから少しずつ警戒を緩めた。味方を家族って言って時点で前例のやつらとは違うわ。殺人鬼は群れないから。」まぁ、そうだろうな。殺人集団なんて、アベント集団くらいだろ。「なるほど、。」それで、とクリスは続けた。「あなた信頼できない誰かにステータスの話をしていないでしょうね?」「さすがにしてないな。」即答した。「ならいいわ、、でも気をつけて。全ステータス1の殺人鬼たちのことは大体の人が知っているわ。知識として教え込まれるのよ。アリスちゃんも最初は警戒していたと思うわ。」うっわ、なんかショック。まぁ、「わかった。」クリスに別れを告げて、帰路についた。
「ショウ、ほんとにごめん。」冒険者協会を出てからすぐに、テイリアスが頭を下げて言った。「気にすんなって言っただろ?」俺はわざと強めにいう?もちろん、語尾は上げたからそんなにキツい言い方にはなってないはず。「うん、、。でも、、。」いい加減に、「顔上げな?」俺は少し言葉を省略して放った。「うん。」顔を上げたテイリアスは、今にも死にそうな顔色をしていた。「おいおいおいおい!大丈夫か?」俺が近づくと、テイリアスは少し足がよろめいた。「ちょっと、気分が、、。ごめん、ショ、、ウ、、、。」完全にバランスを崩したテイリアスをなんとか受け止めた。何回か名前を呼んだが反応がない。俺は急いで宿に戻った。ラファエルさんが驚いていたが、すぐにアイシャとアリスに見てもらった。一時的な思い詰めが原因だったらしい。魔力でそんなことまで分かる物なのか、と関心した。
お久しぶりですね。はい、サボっていたわけではないんです。スマホだと書きづらいんですよ。ほんとに、。まぁ、なんとか書き終わっていくんで投稿してるんですけど、ほんとに気まぐれなんでそこだけは大目に見てくださいな、、。まぁ、ショウの正体はただの雑魚、、、もとい最弱ですが、、周りはそれを逆に警戒しちゃってるようですねー、まぁ、今ショウの周りにいる人たちはもう打ち解けていますけど、。次の話も読んでいただけると幸いです。では次の話で!