63話 少女の記憶と1つの固有魔法
前半ちょっとキツいかもです。出来るだけソフトにしたつもりです。
私の日常は壊された。空から下りてきた集団に。最初それは鳥に見えた。みんな鳥の群れが飛んでいると思っていた。、、、1人が血柱になるまでは。血柱に―文字通り人の体が血の柱のように真っ赤に染まった。それを見た周囲の人たちは空を飛んでいるのが鳥ではなく翼がある魔族だと認識した。でももう遅かった。次々と空から降ってくる矢に貫かれていく。私は必至に走った。でも、、ドン、と誰かにぶつかった。「ごめ、、。!!」声が出なかった。私がぶつかったのは人ではなかった。背中に翼が生えた、でも顔はクモみたいな、生物って言っていいのか分からない物体だった。そいつは8個の目で私を見下ろした。その瞬間、死を予感した。私は目を閉じた。でも、痛くない、、。目を開けると、目の前には小さな剣を2つ両手に持った女の人がいた。「この子を逃がして!」その人は私を指差して周りには向かって言った。女の人の足元には、さっきまで私を見下ろしていたクモの化け物が細切れになっていた。「はいよ!」私は鎧を着た男の人に担がれた。でも、しばらく歩いて男の人は急に足を止めた。担がれていたから私は何があったのか見えなかった。でも、急に目線が落ちて、私は地面に立った。「おじさん?どうした、、」私が振り向いたとき、男の人は頭がなかった。その代わりに首から勢いよく赤い液体が噴き出ている。足が、、、動かない、、。逃げろって、、走れって、、頭ではわかっているのに、、足が、、動かない。私の視線の先には、大きな槍を持った大男がいた。「おや?子どもか。まぁ、どうせ皆殺しだから関係ないか。」違う、、、大男じゃない。お母さんに習った。「ソルカリド、、。」震える声が出た。「おっと、俺の名前を知っているのか。関心だなー。おい!クルーシャ!こいつ、殺さなくてもいいか?気分がいいからよー!」どこらからかため息が聞こえた。「最初から皆殺しではないしなんなら偵察だろうが。お前は勝手に何をしているんだ?」クルーシャ、と呼ばれた人は、ゆっくりと近づいてきた。「まぁ、このくらいの子供は生きていても何の脅威でもないのでいいでしょう。ふふっ、いい顔をしていますねー。恐怖によって歪んだ顔、私の大好きな顔です。」「あ、でもよ。さっきこいつ俺のこと睨んでたなー。じゃあ、殺す。」大きな槍が振り上げられた。
「これは、、。」俺は絶句した。「何があったんだ?」以前のガデルのようになっている。とにかく、「今戦っている人たちを助けよう。」視界の端で何人かが見たこのない魔物と戦っている。なんだあいつ。「ショウ!」聞き覚えのある声がした。「クリスさん!」アリスの視線の先に、服が緑に染まっているクリスがいた。でもところどころ赤い染みも見える。クリスは右手で左肩を抑えてこちらに近づいてくる。「何があったんだ?」俺が聞くとクリスはなにやら紙切れを出してきた。「ショウたちが王都に行ってから、少し不審な報告があったんだ。」紙には『ウォシティので謎の魔族出現』と殴り書かれている。「謎の生物。」俺がつぶやいたのをクリスが拾った。「そうなの。まさにあいつだと思う。」クリスの指さしたほうには、頭がクモのような、二足歩行の背中には翼が生えている何とも言えない気持ち悪さを持っている魔族が死んでいた。「なんなんだこいつ。」俺の横にテイリアスがきた。「これって、、。」「何かわかるのか?」テイリアスは首を縦に振った。「こいつは私が開発しようとした魔物。でも、、資料はすべて燃やしたはず。なのにどうして、、。、、まさか、。」背後に気配を感じた。俺は剣を抜きながら振り向く。ギィィィン、と鈍い音がして俺の剣が何かに当たる。「おや、これは驚きました。反応できる人間がいるなんて。」敵だな。「クルーシャ、なぜここに、、。」テイリアスが声を震わせて言う。「おや?裏切り者のテイスハイサーではないですか。」クルーシャと呼ばれたやつは後ろに飛んだ。黒いトレンチコートが風になびいている。コートの隙間から。長い剣が一瞬見えた。さっきの音はあれか。「魔王城守護であるはずのお前が何でここにいる?」テイリアスは次第に魔力を開放していく。ティアたちは倒れている人たちを手当てしている。「なぜここにいるか?答えは簡単です。裏切り者を処分するためですよ。」クルーシャはテイリアスを指さした。「私たちの今回の侵攻の目的は裏切り者の首ただ一つ。ですがこの町の方々は差し出そうとしませんでしたので、少々暴れさせていただきました。」少々ってもんじゃねぇけどな。クルーシャはコートの裾に腕を通した。長い剣を持っていた。放つオーラから察した。あいつは強い。「さっさと帰れ。ここは魔族がくる場ではない。」半端ない威圧感。テイリアスの声が空気を震わすたびに全身が痺れている。「おやおや。穏やかではないですねー。」「お前たちのせいだよ。」うっわ、今のテイリアスは触れるなキケンって奴だ。待てよ、なんか背後に気配が。俺は再び振り向きながら横薙ぎ、まーたなんか当たった。「おっと、この人間俺の気配に気付きやがったな。」おっと聞いたことある声だな。「ソルカリド、、!」テイリアスが一瞬で魔方陣を展開してアロブドを無詠唱で放った。光の矢はソルカリドの左腕をかすった。青い液体が流れている腕を見たソルカリドは後ろにとんだ。「ちっ、面倒くせぇ。」「おい、どう言うつもりだ。くそども。」あーあ、テイリアスの口がほんとに悪くなった。それに合わさって魔力もデカくなってるし、威圧もヤバいし。もう俺の全細胞は避難信号を出してますよ。ずっと。「あらまぁ、震えちゃってますよ、ソルカリド。」クルーシャが腕を組みながら言った。ふと見ると確かにソルカリドの槍を持つ手が震えていた。「、、どうってこと無いわ。すぐにそっちの用無しを片付けてやるぜ?」ソルカリドは俺を指さした。あ、まって俺?マジで?me?really?信じたくないなぁー。って。ソルカリドはいつの間にか俺の近くまで来ていた。「さよならー。」ソルカリドは俺の腹に目がけて槍を出してくる。あー、やっばー、避けられなーい。安らかに目を閉じる。あぁ、何も知らないこの身一つでこの世界に来て、ゴブリンにも勝てずに苦労した日々、走馬灯かなー、これ。、ギャァァン、、。いや、腹から出る音じゃないな。「全く、隠れて偵察しておくつもりだったのに面倒くさいわね。なんで死にかけてるのよ。」おっとこの声は、「族長!?」ティアの叫び声が聞こえた。だからさ、俺が言おうとした台詞とらないでもらって良いっすか?とゆうか、「マリガルドって、双剣なんだな。」お礼よりも先に気になってしまった。「そうよ。全く、これだから魔族は嫌いなのよ。」マリガルドは右手に持っている剣をソルカリドに向けた。「おい、」マリガルドの口から発された言葉は、普段のマリガルドの声の圧の比にならない。「お前たち、、私の愛弟子に何をしようとしている?」声の圧。そんな言葉では表せるわけが無いほど重い。気を抜けば気が飛びそうだ。魔力の威圧をしているテイリアスと相まってもう気分が悪い。これが俺に向けられた物ならもう俺は死んでいるだろうな。俺に向けられてない圧なのに近くにいるだけで死にそうだな。「ソルカリド、自信が無いのなら退くことをお薦めしますが?」クルーシャは異空間に剣を閉まった。一瞬だけ見えた刀身は漆黒だったが所々赤かった。「退けるかよ!」ソルカリドが食らい付いた。いや、退けよ。無理だろこれは。「面倒くさい奴ね。」マリガルドは双剣を鞘に戻すと、目を閉じた。「魔眼解放。」目を開けたマリガルドの瞳は深い緑から鮮やかな紅と蒼に変わっていた。「かかってこい。」ソルカリドが槍を地面に刺し、剣を抜く。ソルカリドの魔力も大きくなっている。なんで皆魔力が大きくなるんだろ。俺出来ないんだけど。「行くぞ。」低い声で言ったマリガルドは、一瞬で姿を消した。そして、ソルカリドの肩に乗っていた。「おっっっそ。月光・湖月。」そう言ったマリガルドは、ソルカリドの肩に双剣を突き刺した。すると、突き刺したところにまるで月の光―月光が湖の湖面に指しているかのように淡く光った。そして次の瞬間、青い液体が噴き上がった。「だから辞めておけと言ったのに。残念です。」クルーシャは魔方陣を展開してどこかに消えていった。「私に盾突くのは200年早いわ。」マリガルドはそう言って剣を鞘に戻した。「神よ、我の祈りはただ1つ、傷ついた身体、精神、美しい街並み、全てを癒やすこと、どうかこの願い聞き入れ力を授けん、、シングレール。」これまた聞いたことのある声がした。空に大きな魔方陣が展開され、回っている。すると、みるみるうちに壊された街のレンガや石畳の破片が、動き始めた。しばらく経ってそれらは元の位置に戻っていった。そして今まで血を流していた兵士や冒険者、住民も、元気に立ち上がり始めた。なんだこの魔法。いや、伝説魔法とか言うレベルじゃないぞ?「お母さんの魔法。」テイリアスが言った。「あら、覚えていたのね。」空から声がした。マーレだった。「お、来たのか。」マリガルドが言った。目の色は元の深い緑に戻り、声の圧も消えていた。「一応来ましたけど。」マーレは周りを見た。「思ったより片付いてましたね。」クリスが近づいてきた。「ありがとうございます。」そう言って頭を下げたクリスの頭を、マリガルドは撫でた。「よく1人で3日間耐えたな。」なんだと?3日間?「知っておられるのですか?」「今君の記憶を見させてもらったからね。」「なるほど。」いや、マリガルドってなんでも出来るよな。、いや待てその前に、「マーレ、この魔法は何なんだ?」マジで。俺が聞くとマーレは首を傾けてから言った。「これは私の固有魔法よ。全てを癒やす魔法。もちろん、敵は癒やさないけどね。」いや、えげつねぇー、、。「お母さん!」テイリアスとティアが駆け寄ると、マーレは微笑んだ。「テイリアス、久しぶりね。とは言ってもちょっと前に会ったけれど。ティアは朝会ったわね。2人ともお疲れ様。」マーレは姉妹の頭を撫でている。なんか、和むなぁ―。街もすっかり元通りになり、魔方陣は空から消えた。
いや、マリガルド様チートですね、、。いやぁー、なんでこうなったかなー。ま、主人公は最弱なんで良いんですけど(笑)。まぁ、ウドルフ復興は秒速で終わっちゃったんで次はのほほんと行きますかね。では次の話で!!