59話 いざ解放!
次の日の朝、俺の部屋にパーティーメンバーとシュリードが集まっていた。「約束通り今日の昼に王城で奴隷を廃止する法律が公布される。」「仕事が早いな。」俺が言うとシュリードは少し苦い顔をした。「だいぶ無理矢理通したからお偉いさんたちには少し嫌われてしまっただろうけど。」まぁ、そうだろうな。明らかな権力の乱用だし、、。俺がさせたようなものだけど。「それで、奴隷市には間に合いそうなのか?」俺は気になっていたことを聞いた。「あ、それには間に合うと思う。」シュリードは紙を出した。「これが法律案だけど、、。ほらここ見て。」シュリ―ドが指を刺したところを見る。「ここには『法律が交付されてからの一切の奴隷商行為を禁止する』と書かれているの。」そこまで対策してくれていたのか。「じゃあ、今すぐ突撃か?」シュリードは首を横に振った。「いいえ。奴隷相が自主的に奴隷候補となっている者を解放するようにも促しているから、少し待つわ。奴隷商全員が悪いというわけではないわ。」「まぁ、そうですね。」アリスが頷いた。「どれくらい待つの?」アイシャがシュリードに向かって言うとシュリードは少し上を見ながら数え始めた。「国王からの公布が今日の昼で、、解放期限が明日の9時だから、それ以降にも解放されていなかったら突撃かな。まぁ、そんな馬鹿な真似する人はほぼいないと思うけど。」「馬鹿なのか?」俺が聞くとシュリードは腕を組んだ。「もちろんよ。珍しく王都に帰ってきている第一師団に突撃されたい人なんてどこにもいないと思うわよ?」まぁたしかに名前からして強そうな集団だからな。「とりあえず明日まで待機?」テイリアスが椅子から立った。「今日は奴隷商から解放された人たちの保護よ。」シュリードは目でテイリアスを追いながら言った。「じゃあ私はエルフを里に返す手伝いをするね。」テイリアスは手のひらに魔方陣を展開した。「それじゃあ手伝ってもらうわ。」シュリードも立ち上がった。なんか、シュリードとテイリアス、仲が悪い気がする。「ショウ、ちょっと来て。」てテイリアスに呼ばれた。なんか、いつもより声が低いような、、。俺はシュリードに視線を送ってから恐る恐る立ち上がり、テイリアスの後を追って部屋を出た。
「、、どうしたんだ?」部屋を出てから俺は廊下の壁にもたれながら聞いた。「あのシュリードって人、前に戦ったんだよね。」テイリアスはいつもより低い声で言った。「前っていうのは、」「私が魔族側だったころ。」だよな。「一緒にいづらいか?」テイリアスは首を縦に振った。「そりゃあね。手加減していたとはいえ、あと一歩で殺されてたんだから。」そりゃまた大変ですな。「外しておくか?」またテイリアスは首を縦に振った。「ごめん。さっきあの人から殺気を感じたし、ちょっとやめとくね。」殺気、、、。俺はその言葉が引っかかった。テイリアスは人類側についた。その味方ともいえる存在に殺気を放つって、、今考えても仕方ないか。「外に出るなら気をつけろよ?」「うん。ありがと。でも大丈夫だよ。エルフの村に行っとくから。1時間後に帰ってくるね。」そう言うとテイリアスは足元に魔方陣を展開して消えていった。どんだけ早くどこかに行きたかったんだよ。
「何かあった?」部屋に戻るとシュリードに聞かれた。まぁ、何もなかったといえば嘘になるけど。「いや、テイリアスが用事を思い出したらしくて外に行くって言ってきただけだ。」ここでいう必要はないだろう。「へぇ、そう。」テイリアスの言っていたシュリードからの殺気。俺に対してはないようだな。さてと、「もう行くか?」「そうね。そろそろ9時だし。」シュリードが立ち上がった。
外に出ると、鐘が鳴った。その音を聞いた人が全員王城の方を向いた。「あぁ、これは新しい法律や国王が決まったことをみんなに知らせるための鐘よ。」シュリード、説明ありがとう。鐘が鳴りやむと、王城を向いていた人たちはさっきまでのように生活に戻った。「さてと、そろそろ通告が奴隷商たちに行くころね。」シュリードが腕を組む。「そんなに早く通告が行くのか?」「えぇ、手遅れになる前に手を打ちたいから。ちょっとわがままを言わせてもらったわ。」わがままはそんな得意そうに言うことではないぞ?まぁ、何もできないし、後はもう待つか。噴水の前で立ち止まった。
30分ほど経った。「よし、行くわよ。」シュリードが細い路地に向かって歩き出した。広場にある時計は11時半を少し過ぎていた。「ショウさん、ニルティアちゃんは留守番でよかったんですよね?」アリスが小声で聞いてきた。「あぁ、少しかもしれないがあの頃の記憶を呼び起こさないようにするためだ。」トラウマを思い出すというほど嫌なことはない。「あそこ。」シュリードの足が止まった。周りはさっきの広場から少し入っただけだが、賑やかさを完全に失い、ひっそりとしている。なるほど、奴隷の商売にはもってこいの場所だろうな。「動くか?」角の陰からシュリードの指さした方を見る。「いや、今日は私たちの存在を知られないほうがいい。」角から出かけた俺をシュリードは腕を伸ばして止めた。しばらく無言が続いた。「あ、見てください。」アリスが言った。建物のドアが開いた。だれか出てくる。「くっそ。なんだよ今更奴隷が禁止なんてよ、、。おい!さっさと出やがれ!」出てきた男の後に続いて次々と人が出てくる。出てきた人はみんな首に痣があった。首輪の痣か。「、、あの、、私たちはこれからどうすれば、、?」出てきた人ケモ耳の女性が言うと、奴隷商は血管の浮いた顔で睨み付けた。「そんなの知るかよ!俺はあの法律のせいで生活が危ねぇんだよ!勝手にしろよ!」男が手を振り上げた。「、、!!」その女性は目を閉じた。するとすぐ近くにあった1人の気配が消えた。瞬きをすると、男の振り上げた手は、シュリードによって止められていた。「貴様、あの法律の通告書をしっかり読んでいないのか?」シュリードの声は低く、威圧感があった。「誰だよてめぇ!!」あーあ、逆上しちゃってるタイプのめんどくさいやつだ。「王都近衛兵団第一師団長、アルストリー・シュリードだ。」その言葉が空間に響いた瞬間、男の顔に明らかな汗が出てきた。「な、、。近衛兵団だと?ちょっと前にウォテシィに行ったはずだろ、、。」おびえる男の手を離さずにシュリードは男の目をにらむ。「ちょっと用があってね。昔からの友人の頼みは答えてあげないと、」シュリードがこちらに視線を向けた。「そうだろう?」シュリードの言葉を聞いて、いい友人関係だと思った。「さて、どうする?このまま連行してもいいけど、それは嫌でしょう?」「ひ、、悪気はなかったんです、、ついカッとなって、、。どうかお慈悲を、、。」うわぁ、この短時間でこんなに人間の印象って変わるものなんだ。「ショウ、どんな感じ?」背後から声がした。「ぅぁ!!」変な声が出た。「もー、そんなに驚かなくてもいいじゃん。」テイリアスだった。あ、たしかに1時間経ったな。「じゃあ、私も手伝おうかなー。」テイリアスはシュリードと男の後ろを通った。あーあ、魔力隠してないから男がもっと震えてるよ、、。かわいそうに。ん?よく見ると男の手を握っているシュリードの手も震えているな。もう俺は慣れたけど、あんな魔力量、普通の人は無理だよな。「みんな、自分の故郷はどこかわかるよね?私が送っていくから教えてくれる?」テイリアスが建物から出てきた10人くらいの女性たちに言った。「かえ、れるの?」「家に、、帰してもらえるの?」次々に声が上がった。あ、そうだ。聞いとかないと。「なぁ、この中にはエリザさんっているか?」「エリザ?」一人のエルフが反応した。「あぁ、エリザさんの息子のエリオットと約束してるんだ。」「えっと、、たぶん、西の方の奴隷商に連れていかれていると思う。」そうか、、。「わかった。ありがとう。」俺が礼をすると、テイリアスが口を開いた。「じゃあ、ショウ、そういうことだから行ってくるね。」テイリアスはそう言うと大きな魔方陣を女性たちの足元に出現させた。テイリアスたちが消えた後、シュリードは男の手を離した。「はぁ、見方とはいえほんとに怖いわ、、。」シュリードの手はまだ震えている。「大丈夫か?」俺が聞くとシュリードは肩をすくめた。「あなたたちに聞きたいわ。あんな化け物ともいえるような人と一緒にいれるって、すごいわよ。」「でもテイリアスをあと一歩まで追い込んだんだろ?」「そりゃあ、大きな隙を見せても全く攻撃してこない人には負けないでしょ。」シュリードは言った。「攻撃しない?」驚きすぎて聞いてしまった。「えぇ、テイリアス、あのころはテイスハイサーだけど、彼女はうちの第一師団をほぼ壊滅させた。まぁ、全員気絶だったから死者は0だったけど、、。あの力の差は今でも恐怖よ。」あ、今わかった。テイリアスの言っていた殺気は、恐怖心からだったのか。まぁ、「ちょっと分かるかもしれん。」「そうなの?」シュリードの足元で男は気絶していた。「あぁ、初めてテイリアスと対峙したときは、生きた心地がしなかった。」「あー、それちょっと分かるかも。重圧で押しつぶされそうになる。」まさかの感覚一緒。この会話をきっかけに俺のパーティーとシュリードは打ち解けた。個人的には結構仲良くなれたと思う。次は西の奴隷商だな。
お久しぶりです、、。まぁ、書く気はあったんですが、、キーボードが壊れてたんです、、。あと時間もちょっとプロセカに吸われちゃって、、。見逃して下せぇ、、。話の内容はちゃんとしたのでまた楽しみに次の話を待ってください!なるべく早く書きます!では次の話で!!