55話 準備は大切
、、。今日はちゃんと時間前に目が覚めた。「よいしょ。」起き上がって宿を出る準備をする。隣の部屋のドアが開く音が聞こえた。少しして、「ショウさん、起きてます?」とアリスの声がした。「あぁ、今日は起きてる。」と返すと、「じゃあ下で待ってますね。」と返ってきた。足音と一緒にアリスの気配が遠ざかっていく。まぁ、まだアリスしか起きていないのだろう。朝が早いことで。出発まではまだ時間があるし。それにテイリアスが起きないと行けないし。はぁ、まだ眠いな。王都、か。どんなところなんだろうな。さすがにここよりは発展しているだろうけど。全く想像できない。この世界にはスマホはないし、電子機器というものを見たことがない。街灯はおそらく魔力で灯された炎だろうし、前の世界で『電力』と呼ばれていたものはこっちの世界では魔力と同じような感じだし、そんな文明や技術は必要なかったのだろうな。まぁ、それくらいは俺でも少し考えれば分かる。まぁ、俺もそこまで頭が悪いわけではないが、中の上くらいだと自負していた。なんか、くだらないことを考えていたら目が覚めてしまった。もう眠さを感じない。もう着替え終わったしな。いつ寝てるのか分からないラファエルさんに挨拶しておくか。扉を開けて廊下に出たが、人の気配はなかった。まだ寝ているようだな。木の階段だから踏むたびにきしむ音がする。まぁ、ちょっと俺の体重のせいもあるかも、、。寝ている人を物音で起こすことは大罪だって誰かが行っていた気がする。、、、なんとか音を最小限に抑えて階段を降り切った。「おや?ショウくんじゃないか。どうかしたのかい?まだ出発までは時間があるはずだけれど。」ラファエルさんに声をかけられた。1階を見渡したがアリスの姿はなかった。「あぁ、アリスちゃんなら少し出かけると言っていたよ。」なんだって?「いつくらいに出たか分かります?」「そうだなぁ、、。大体10分前とかそのくらいだったと思うが、、。さすがに時間までには戻ってくるだろうからそんなに心配しないでもいいと思うよ。」「まぁ、そうですね。」気長に待つか。階段がきしむ音が聞こえてきた。知らない男性が下りてきた。「おや、おはよう。」ラファエルさんがカウンターから身を乗り出して挨拶をすると、その人はあくびをしながらカウンターの方に来た。「おぉ、ラファエルの旦那、今日も早いねぇ。」「オルドーさんも今日はだいぶ早いんじゃないかい?」「あぁ、今日は朝からのクエストを受けたからな。早起きしとかないと報酬がもらえないだろ?」「あぁ、そうかい。がんばれよー。」「おう、じゃあな。」朝からスピード感MAXの会話をしてその人は扉を開けて外へ行った。「あの人、初めて見ましたね。」「あぁ、あの人も個々の常連さんだよ。ショウくんたちが来てから五部屋埋まるようになったけど、うちは15部屋があるからね。他にも人はいるよ。」「え?でもここ2回までしかない気がするんですけど。」「あぁ、あっちの扉が別棟につながっているんだ。」ラファエルさんがある扉に向かって指をさした。なるほど。あの扉は確かに開けたことはないし近づいたこともないな。そのとき外につながる方の扉が開いた。「ただいまですー。あ、ショウさん降りて来たんですね。」扉を開けたのはアリスだった。「おかえり。どこに行っていたんだ?」俺は単純に疑問をぶつけた。「あ、これを買いに行ってました。」アリスが持っていた紙袋を前に出して、封を開けた。「クリスさんからMP回復薬はウドルフの方が安いと聞いていたので、出発の前に買っておこうかなって。」なるほどな。「用意周到だな。」俺がそういうとアリスは頬を搔きながら恥ずかしそうに「そんなことないですよ。」とだけ言った。照れてんな。「あれ、ショウたちもう起きてたんだ。」白いローブに身を包んだテイリアスといつもの黒いローブを着たアイシャとまだ眠たそうなニルティアが一緒に降りてきた。「みんなそろったようだね。」ラファエルさんが言った。「そうだね。アリス、昨日言ってたものは買えた?」アイシャが聞くとアリスはアイシャに向かって親指を立てた。「バッチリです。」「それじゃあ、行こうか。みんな準備できてる?」「ふぁ、、まだ寝てたい、、」「うん、行こう。」ニルティアの願望はアイシャにかき消されていた。「よし、じゃあ、」テイリアスが床に魔方陣を展開した。「「「「「行ってきます。」」」」」ラファエルさんにみんなで挨拶をしてから、視界がぼやけだした。
「ここが王都、、。」俺たちは王都の門の前に出た。後ろには草原が広がっているが、道が整備されている。「あ、さすがに門番には説明しないといけないよね。」アリスが冒険者カードを取り出した。ニルティアの耳はまだ垂れている。「そうね。王都はより厳しいはず。」門の前に来た。王都の門はとても大きく、立派な彫刻が彫られている。「身分証、または冒険者カードを見せてもらえるか?」「はい、これです。」アリスが全員分の冒険者カードを門番に手渡す。正直この門番もそれなりの強さだな。身体的には俺と互角かもしれない。ソードスキルは100倍くらい俺の方が強いけど、、。「よし、全員通っていいぞ。」冒険者カードを返しながら門番はそういった。テイリアスの安堵のため息が聞こえた。「ありがとうございます。」アリスから冒険者カードを返してもらって門をくぐった。
ちょっと忙しかった(テストです、、、)ので連載遅れました。いやぁ、思ったより王都に行けませんね。まさかこの話の終わりで王都に入るとは、、、我ながら書ぎだなぁ、と思ってます。まぁ、楽しいので全然ありですね。