54話 出陣前に
冒険者協会の外に出た。思ったより簡単に相談に乗ってくれたな。何だかんだ言われるだろうと覚悟していたのだが、、。さて、と。マドリフさんのところに行っとくか。俺はマドリフさんの店に向かって歩き出した。
「おじゃましまーす。」といいながら扉を開けると、カーンカーンカーン、とリズムよく高い音が聞こえてきた。「マドリフさーん!!」ドアのところにあるベルを鳴らしても気づいてなさそうだったので、それなりに大きな声で名前を呼んだ。「お、ショウか!ちょっと待ってろー。」その声が聞こえてからあの高い音は止んだ。「よいしょ、っと。」奥の部屋からマドリフさんが出てきた。今日も何か作っていたのだろう。「何を作ってたんですか?」俺が剣をカウンターに出しながら聞くと、マドリフさんは少し苦い顔をした。「いや、ちょっとな。」なんだ?「あんまりうまくいってない感じですか?」「あ、あぁ、まぁ、そんなところだ。」ふむ。「あ、剣の手入れお願いしてもいいですか?」「だから
カウンターに置いてるんだろ?200ゼニーだぜ。」「はーい。」俺は袋から2枚の金貨を取り出す。「はいよ。んじゃ待っててくれ。すぐに終わるからよ。」「おねがいします。」マドリフさんは剣を持って奥の部屋に行った。なんだったんだろう。さっきの会話の中でどこか分からないけどなんだか違和感があったんだよな。なんだったんだ?んー、分からない。どこだ?「あいよ。できたぜ。」マドリフさんが出てきた。「あぁ、どうも。」俺は剣を受け取って鞘に戻す。「しばらく王都に行こうと思ってるんです。」「へぇ、何しに行くんだ?」「知り合いとの約束事をしに行きます。」「そうか、気を付けて行けよ。」マドリフさんの顔から安堵を一瞬感じた。だが、次の瞬間にはその安堵は感じられなかった。気のせいだろうか、、。「それじゃあ、また来ます。」俺はドアの方に向かっていく。「あぁ、またな。」背後から声がした。俺はドアを開けて店を出た。
「どこにいるのかと思ったらここにいた。」外に出た瞬間に左側から声がした。「なっ!」「そんなに驚くこと?パーティーの1人がいただけじゃん。そんなに驚くことじゃないと思うけど。」テイリアスはそう言いながら俺の横に並んで歩き出した。「なんで来たんだ?」俺が聞くとテイリアスは指で髪をいじり始めた。「ダメだったかな?」「いやダメではないけどさ。」「じゃあいいじゃん。」いや、いいですけど。「なんでここにいるってわかったんだ?」俺が聞くとテイリアスは微笑んだ。「なんとなく?」わからねぇし、つかめねぇなぁ。「はぁ。」「なにそのため息ー。嫌だった?来ない方がよかった?それなら先に戻るけど。」テイリアスが手に魔方陣を展開した。「いや、嫌じゃないし来てもらえてうれしいよ。」うん、本音です。「ほんとかなぁ?」いたずらっぽく笑うテイリアスを見ていると自然に笑いが出てきた。「ははは。」「いや笑うところあった?まさか私の顔見て笑った?」テイリアスが抗議の意思だろう。左肩をポカポカ叩いてくる。「26歳が何してんすか。」「心の中は16歳。乙女に失礼と思わないの?」「ちょっと思えないっす。」「これだから男子は、、。」なんかすんません。「でもさ、テイリアス。そろそろやめとかないか?」「なんで?」「周りの視線がこっちに一極集中してるから。」そうだ。周りからの視線をもろに浴びているのだ。だいぶ恥ずかしい。「あ、、、。うん。」テイリアスの耳が赤くなっている。まぁ、こんな大勢に見られると恥ずかしいわな。「シュレンアン。」テイリアスがそう言ったが、何も起こらなかった。魔法ではないのか。「なにしたんだ?」「え?何もしてないよ?」「いや、なんか言ったよな?」「え?あぁ、分からなかった?エルフ語よ。」いや知るかよ。んなこと分かるか!「あら、わからないの?」「、、あぁ、わからんよ。」ムカつくなぁ、、。「エルフ語で『恥ずかしがってる?』って挑発したのよ。」そう言うとテイリアスは一歩前に出て歩き始めた。「ったく、なんてこと言ってんだよ。」なんか、前から思ってたけどこの世界の人たちは見た目も精神年齢も実際の年齢より10歳くらい若い気がする。さっきのテイリアスの表情とか言葉遣い、26のアラサーには見えないし思えなかった。そんなことを考えているといつの間にか宿についていた。
「お、ショウ、久しぶりー。」ラファエルさんがいつものように迎えてくれた。「ありがとうございます。」「お、テイリアスも一緒に帰って来たんだな。」「はい。この人が迷子になってないか確認しに行ってきました。」なんちゅーこと言ってんのや。「いや、ウドルフで迷子とかありえんだろ。」「もしかしたら、って言葉知ってる?」「知ってますけど。」「どんなことが起きるか分からないんだから、用意は必要でしょ?」う、、。「まぁ、な。」「ほらね?」テイリアスは得意げな顔をすると階段を上がっていってしまった。あんなにザ・陽キャって感じだったかなぁ?まぁ、ティアの記憶が戻ってまた更にテイリアスに乗っているおもりが1つ消えたしな。楽になったのかもしれない。まぁ、今のテイリアスも明るくていいな。、、、俺は何を言ってんだか。「あ、ラファエルさん。」「どうかしたー?」「帰ってきてすぐで申し訳ないんだけどさ、またすぐ出ることになると思うからまた部屋の確保お願い。」「今回は何日くらい?」「まぁ、大体4週間で。」「一か月ね。そんなに時間かけてどこに行くわけ?」「王都に行こうと思ってるんだ。」「王都?でも王都だけなら急げば往復1.5週間じゃ?」あ、急がなくても一瞬です。テイリアスの魔法で空間移動するので。「まぁ、気を付けていってらっしゃい。部屋は任せておきなー。」「ありがとうございます。」俺は階段を上がってみんなの部屋にそれぞれ行き、王都へ行くこと、奴隷となっているエルフを力づくでも開放するということを話した。まぁ、みんな素直に受け入れてくれた。だが、急がないと奴隷市が開かれてしまう。マリガルドからの情報だと、3か月に1回裏路地で奴隷市が開かれるらしい。それを襲撃すれば全員解放できるだろうとは言われた。だが、そんなことをする気はない。もっと確実に全員を無傷で解放できるようにすること。その方法はクリスから聞いた。クリスは伝書鳩を飛ばしてくれているだろうから明日の朝には伝わっているだろうと言っていた。そこで「明日の朝早くに出るよ。」とみんなに伝えておいた。
まぁ、ちょっと書くことが思い浮かばないんで割愛します。では次の話で!!