40話 宴だー!!(ベクチズで)
俺は冒険者協会を出てから一度宿に戻った。「お、ショウくんお帰り。」宿屋の主人に迎えられた。「ただいま。」元居た世界でいつも思っていたのが、地域の方々に、「おはようございます。」とあいさつをしたときに、朝の通学時間なら「いってらっしゃい。」、夕方なら「お帰り。」とおっしゃってもらったときに、なんて返せばいいのかいつも迷っていた。まぁ、さすがにそれは中学までだったから高校からは素直に「行ってきます。」だったり「ただいま。」と返していたけど。これで悩んだことがある学生は少なからずいると思っている。「ただいま。」まぁ、この世界ではしっかり返そうと決めているから返すんだがな。「テイリアスさんはさっきすぐそこに出てきて驚いたわ。」あ、それはかわいそうに。「どこの部屋?」「どこって言うほどにぎわっていないよ。ドアが閉まってるショウくんたちが使っていない部屋だよ。」その自虐にはどう反応したらいいのか迷うな。「分かった。」俺は階段の手すりを使いながら一段一段のぼる。いや、一段飛ばしとかやってたことあるしこの世界でもやることあるけど「二段飛ばしだー。」とか調子乗ってたやつが一気に飛んでズボン破れたのをつい最近思い出して怖くなったんだよな。さてと、登り切った。ドアが閉まってる部屋はどれだ?手前から先にアリス、俺、アイシャ、ニルティアの部屋だから、これか。これは、、ノックがいるな。コンコン、とリズミカルにノックをした。たった2回だが。「はい。」中から声がした。この声はテイリアスだな。「ショウだ。いいか?」「あぁ、ショウか。いいよ。開けて。」ドアを開けると、ベッドの上で寝ている人物の隣にテイリアスが椅子に腰かけて座っていた。「様態は?」「安定してる。宿に案内してもらえて助かったよ。」あぁ、宿屋の主人はクリスに呼ばれたらしい。まぁ、ゴブリン草原に異常な魔力が出現したからテイリアスと決めつけて呼んだのだと言っていた。違ったらやばかったな。「ほかのみんなは?」「先に晩飯に行った。」「そっか。」「テイリアスもどうだ?」「、、そうだね。行こうかな。お義父さんも寝てるし。」テイリアスは立ち上がり、父親に毛布を掛けなおした。「よいしょ。」テイリアスが椅子からいつものローブを取ったのを見て1つ閃いた。「なぁ、テイリアス。服装を変えないか?」「どういうこと?あ、言葉の意味は分かるけど意義がわからない。」「いや、そのローブだとグロメントのテイスハイサーの装備だろ?だから冒険者としてのテイリアスにするためにイメチェンだ。」「なるほどな。、、だが、あいにく服は持っていないぞ?」「あぁ、それはご安心を。」俺は一度部屋から出て廊下から風呂敷というかただの包みというかの微妙なものを運んだ。「それは?」「クリスからの支給品。冒険者になるだろうから先払いでって。」「なるほど。」「着てみて。」あ。「俺は外で待ってるから準備できたら来て。気に入ったの着ていいから。」「分かった。」テイリアスが袖から腕を引っ込めたのを見て急いで部屋の外に出る。いや、78歳の姉だとしても人類では26歳の姉なんだよ。危ない、手がガッシャンってされるところだった。いや、待てよ?この世界には警察なんてものはないな。ふむ。まぁ、だからといってしていいわけではないし、しようとも思わないが。そんな馬鹿ではないからな。さてと、俺も自分の部屋に行って少し剣の手入れをしようかな。
俺は少しだけ剣の手入れをして下の階に降りた。「おや?出かけるのかい?」宿屋の主人がカウンターから声をかけてきた。「あぁ、今から晩飯だ。アリスたちは先に行ってる。」「あぁ、そうかい。楽しんでなー。」手を振られた。が、俺はテイリアスが来るまで出ることができないんだよな。「ショウ、おまたせ。」階段の方から声がした。白いシャツに赤と灰色のボーダーのネクタイを締めて、白いロングコートを着ている。なんだろう。俺が着るとちょーぜつダサいだろうが、テイリアスが着ると整っているな。目が赤いからネクタイとあっているのか。「コーディネートがよくわからないからおかしくなってないといいのだけど。」そういいながらテイリアスはくるりと回った。さすがにスカートじゃないから広がりはしないが、ロングコートの裾が少し舞う。「似合ってるじゃねぇか。」宿屋の主人がカウンターから身を乗り出して言う。あ、この人は独身のラファエルさん。宿屋の主人ばっかり代名詞に使うのはかわいそうになって来たからちゃんと名前で呼ぼうかな。「ありがとう。」テイリアスはラファエルに向かってお辞儀をした。きれいなお辞儀だなぁ。すべての行動に華がある。、、って、俺まで見とれてどうする。「行こうか。」「ショウ、これならばれないかな。」「うん。」絶対に誰もあなたがグロメントのテイスハイサーだなんて思わないと思います。俺はテイリアスと並んで歩くのがなぜか恥ずかしかったから少しだけ、ほんの少しだけ、7歩分くらい前を歩いた。
「いらっしゃい!」店のドアを開けると店員が元気よく挨拶してきた。「あ、アリスたちの連れ、、」「あー!あそこだぜ!」俺の言葉をすべて聞かずに店員は案内を始めた。指を差された方へ歩くと、アリスたちが賑やかにベクチズを食べていた。「あ、ショウ!早く早、、。」ニルティアがそこまで言って俺の後方を見て言葉を失った。あぁ、そうなるよな。「テイリアス!?」アリスが叫んだ。「静かに。」アイシャに怒られる。周りからの視線を感じる。、、なんで俺が感じるんだろう。「ごめんごめん。変わりすぎてたから。」まぁ、その気持ちはよくわかるぞ。俺もそうだったからな。ついさっきまでは。「そんなに変わった?」まぁ、下ろしていた髪もくくっているし、全身の色も黒から白に変わったし、だいぶ変わったな。「隣いいかな?」テイリアスがアイシャの隣に座ろうとした。「あ、もちろん。」アイシャが頷く。「ありがと。」「最初はみんなで買い物してたんですけど、だんだんおなか減ってきちゃいまして、」「今日の晩御飯どうしよっかなーって言ったら、」「ベクチズ!って私が言ったの。そしたら、」「ここに来てました、と。」最後のセリフだけ俺が言った。「そういうこと。」ニルティアが満足げに頷く。「それで?どれくらい食べたんだ?」俺が聞くとアリスが手を小さく広げた。「5000ゼニー?」アリスは首を横に振った。「は?まさか、、。」俺の頭でねじが緩んでいく音が聞こえた。これはまずいな。「まさか、、5万?」コクリとアリスが頷いた。あ、終わった。「何を食べたんだ?」「これ。」メニュー表を出される。そこには、『期間限定!!鶏もも肉のバター焼きベクチズ!サービスでチーズも溶かします!』と書いてあった。まぁ、俺はそれより先に値段を見たのだが、。「おい、これ1本で2500ゼニーじゃねぇか。」「ごめん、見てなかった。」ニルティアがしょぼんとする。同時に獣耳が垂れ下がる。「いや、俺はいいけど店はいいのかよ。払えるか?こんな大金。」とりあえず俺の全財産でも多分無理。それに5万とかあっさり超えてるだろ。なんなら10万くらいいってると思うけどな。「あ、私が払うからいいよ。」天使の声が聞こえた。「いいのかテイリアス。」「うん。ゼニーでいいなら私も貯金があるし、いいよ。」マジで命拾いした。皿洗いをしなくて済む。「ゴチになります。」俺はテイリアスを拝む。まじでありがたい。「いいって。それよりさー、私もそのベクチズ気になるから食べよっと。」あ、食欲には勝てないのが人間だな。エルフもそうか。ハーフもそうか。
「お会計14万6200ゼニーです。」うわぁ、やりすぎだ。おかしい。金銭感覚おかしくなる。「んじゃこれで。」テイリアスが異空間から大きな金貨を出す。見たことない大きさだな。手のひらサイズ位ある。「あれってたしか、10万ゼニー金貨ですよ。本当に持ってる人いるんだ。」いや、硬貨のインフレしすぎだろ。いつか100万ゼニー金貨とかできそうだな。俺はそんなことを思いながら人の財力におんぶにだっこになっていた。もう宿に帰ってからはすぐに寝た。やはり疲れていた。
0.5話になるなんて大噓でしたね。全然1話分書けました。とゆうより書けちゃいました。テイリアスやティアが出てくると話がどんどん進んでいくから書きやすいんですよね。まぁ、これからも書いていきます!では次の話で!