38話 静かにねって言ったのに
「ショウ、起きて。」そんなに勢い良く揺らさないでくれ。「行くよ。」行く?あ、。俺は文字通り跳び起きた。空が暗くなっていた。「俺寝てた?」隣でテイリアスがしゃがんでいる。「ぐっすり寝てた。」テイリアスは俺に剣を差しだす。「他の人は?」聞きながら俺は剣を受け取って腰に差す。「皆準備したからあっちにいるよ。」テイリアスは森の方を指さした。あぁ、地下道の入り口か。テイリアスが森に向かって歩き出した。俺は急いで立ち上がってテイリアスについていく。
「起きたんですね。」杖を持ったアリスがこちらを向く。「ごめん、遅れた。」「遅れてはないから大丈夫。」アイシャが木の陰から出てくる。登場の仕方が刺客なんだよな。マジで怖い。いつか刺されそう。「行こうよ。」ニルティアが飛び跳ねている。「私たちも準備できた。」木の陰から騎士団が出てくる。だからさ、、。「全員揃ったな。」テイリアスが魔方陣を展開する。「あっ。」ニルティアが森の奥を指さした。「あっちでなんか光った気がする。」光った?「そこが地下道の入り口。私の魔力に反応するようになってる。」便利なもんだな。「行こう。」イリオウが言うと、光の方へ皆歩き出した。
「これだね。」テイリアスが地面を指さす。そこには何もなかった。ただの地面だ。「え?どこ?」「あぁ、見えないようにしてるんだった。」テイリアスが地面に向かって指をさして右に払った。すると地面に鉄板が現れた。「おぉぉぉ、、。」イリオウが驚いている。なんか、面白い。「行こうか。」テイリアスは鉄板を開けるとその中に飛び込んでしまった。はぁ、行くか。
地下道は何かが腐ったような臭いがたまにするようなところだった。「なんか、時々臭い。」アイシャが鼻を抑えている。「たぶんゴブリンか何かが死んでいるね。」テイリアスはスルスル進んでいく。「あ、そうだ、」テイリアスが突然振り向く。「静かに歩いてね。湖の中にも魔物はいるからばれたら魔王城から皆帰ってきちゃう。」そんな大事なこと早く言ってくれ。多分もう遅いぞ?、、後ろでアリスとニルティアがピクニックのようにはしゃぎながら歩いているから。わりと大丈夫なものなのか?「父さんがここに捕らえられてから私はここに来ることを禁じられているから、もし魔族と会ったらその瞬間に戦闘になると思う。魔族は力主義だから。」うわー、やべぇ集団だ。「このドアを開ければウォシティの城内だ。」外からは少ししか見えないがウォシティには結構大きな城があるらしい。「この道は王族が使う緊急脱出用の通路だろうな。」イリオウが地下道の壁を見ながら言う。「よいしょ。」テイリアスがドアを開ける。
場内はとても暗かった。ところどころクモの巣が見える。「地下牢はこっちのはず。」テイリアスが場内を走っていく。魔族が支配しているとは思えないくらい何もいない。何か引っかかるな、、。、、今はいいか。俺も走ってテイリアスの後を追う。「階段があるな。」テイリアスが立ち止まった。「降りないのか?」俺が先に行こうとするとテイリアスが俺の腕を掴んで止めた。「待って。、、この気配、、まさか、、」「そのまさかですよ。テイスハイサー。」背後から声がした。「アスレイン、なぜここに、、。今日は魔王城で会合があったはず。」テイリアスは魔方陣を展開している。「会合?何のことでしょう。私は呼ばれていませんね。さて、そちらの方々は?」アスレインは俺たちの方を指さす。イリオウは剣を抜き、ソフィリアも剣を抜いて構えている。、、待て。騎士団がいない。「イリオウ!騎士団はどこへ行った!?」イリオウは後ろを振り向いた。そして絶句していた。「、、さ、、さっきまでいた。」「裏切りか。」ソフィリアが呟いた。あぁ、あの時と同じだ。だが、今回は違う。「さて、舞踏会と行こうか。」アスレインが魔方陣を展開した。「エモタズ。」テイリアスの魔方陣からヴァレンスが出てきた。「行け。」ヴァレンスたちがアスレインに飛びかかる。アスレインが魔法使いなら、近接は有効だろう。だが、「はぁ、忘れたのかしら?」1度瞬きするとヴァレンスたちは細切れにされていた。「面倒なのは嫌いなの。早く首を差し出してくれるかしら?」アスレインは剣を持っていた。黒い刀身に赤い線が入っている。「アスレイン様。裏切り者をあぶりだしてきました。」アスレインの後ろに甲冑を着た人たちが見えた。「あいつら、、!」イリオウが睨みつけている。「イリオウ、殺しても構わないな?」テイリアスが言った。「仕方ない。処すまでだ。アリスとアイシャは後方から魔法で支援を。ソフィリアと私とショウで前衛だ。テイリアスにアスレインの相手をしてもらっている間に片づけるぞ。」的確な指示で感謝だわ。「その必要はない。」アスレインが騎士たちに手をかざすと、甲冑の隙間から赤い液体が飛び出てきた。「なっ、。」ソフィリアが引いている。「なぜ自分の仲間を、、。」テイリアスが睨みつける。「あなたたちみたいに裏切られたらたまらないでしょ?だから。」「だから殺していいものではない。」「テイスハイサーはいつも真面目なんだから。少しくらい遊んでもいいじゃん。」「命で遊ぶな。」イリオウが叫ぶ。「うるさいなぁ。」俺は瞬きをした。その間に何が起きたかは知らないが、一瞬アスレインの顔が目の前に見えた気がした。「がはっ、、。」イリオウが口から血を吐く。腹に斬られたような一文字が入っていた。まずい。「ほら、大口叩いておいて反応できていないじゃない。弱者は口を出さないで?」「ぐ、、。」ガシャン、と音を立ててイリオウはその場に倒れた。「まず1人。次は誰かな?」「アスレイン、いい加減にしろ。」テイリアスからとてつもない殺気を感じた。手が震える。「やっとやる気になったのね。でも、あなたの負けは確定しているわ。」パチンッとアスレインが指を鳴らした。ギィィィ、、と音がして何かが来る。その何かは、、十字架だった。
十字架には誰かが磔られていた。「とう、さん?」テイリアスの声が震える。「お、気づいたね。そうだよ?どうする?これ以上魔王様に反抗するなら十字架に火をつけるけど、あなたが首を差し出すなら命は取らない。」「、、テイリアス、、逃げろ、、。」上の方、十字架から声がした。「父さん、、。」アリスとアイシャはイリオウの手当てをしている。「ほら、魔方陣を消して。」アスレインが剣をしまう。テイリアスは魔方陣を消した。だめだ。あいつは絶対に父親も殺す。今のテイリアスに父親を助けることはできない。アスレイン、、こいつに勝てる気もしない。さっきの速さ、見たことがない。そして魔法も使えるのだろう。グロメントの中でも上位のほうだろう。「テイリアス、逃げるぞ。」俺はテイリアスに向かって言う。「、、先に逃げてて。」テイリアスは座ったまま動かない。「、、早く、、逃げなさい、、。」俺の横を誰かが通った。そしてテイリアスの前に立つと、パンッ!と音がした。「早く立ちなさいよ。」ソフィリアが平手打ちをした。「あなたが生きておかないと意味がないでしょう?ティアが悲しむじゃないの。」「、、どうしろと?」「逃げるのよ。」「できない。」「できないじゃない、するの。どうせあなたの首がはねられてもあいつは父親を殺す。魔族はそういうやつなの!」「、、、」テイリアスは立ち上がった。そして一瞬ソフィリアに耳打ちしたように見えた。「わかった。もう知らない。」ソフィリアは剣をしまって俺の横を歩いて行く。「ショウ、イリオウを抱えて。逃げるわよ。」え?でも、テイリアスが。「仲間からも見捨てられた気分はどうだ?テイスハイサー。魔王様はいつもお前ばかり贔屓しておられた。本当に目障りだった。なぁ!?」俺の視界の端でテイリアスが蹴られるのが見えた。「ソフィリア。」ソフィリアは俺の声に反応して一瞬振りむくと、俺の耳に近づいて、「大丈夫、テイリアスは死なない。いつでも参戦できるようにしておいて。」と言った。俺はその瞬間にピンときた。まさか。「じゃあね。テイスハイサー。」アスレインが剣を振り下ろした。ザシュッ、とテイリアスの首が飛ぶ。「ふぅ、これで私は魔王様の贔屓に、、」「お前、そんな子供だましで喜べるんだ。」テイリアスの声がした。フッと姿を現したテイリアスはアスレインの真後ろにいた。「なっ!」振りむこうとするアスレインより先にテイリアスのアロブドが頭と首と心臓を貫いた。「生きて、、いた、、だと?」アスレインが消えていく。「エモタズで生み出されたダミーに引っかかってくれてありがと。」テイリアスはアスレインの服を拾い上げる。「あった。」服から鍵のようなものを取り出した。「ちょっと待ってて。」テイリアスは飛び上がって十字架に近づいて行った。テイリアスって空飛べるんだ。何回か見た気がするけど原理がわからない。しばらくしてテイリアスは背中に父親を抱えて降りてきた。「帰ろうか。」「また歩くのか?」「いや、さすがに歩かない。ホルペル。」地面に魔方陣が展開された。「帰ろうか。」視界がぼやけていく。空間魔法ってこんな感じなのか。
サボってないですよアピールってことで書きました。まぁ、2000字超えたら1話として出そうと考えているのでもし超えなかったら0.5話として出すと思います。これからも読んでいただければ幸いです!では次の話で!