35話 クエスト作成してもらいたいんですけど、、、
次の日の明朝、俺は宿屋の主人に「少し出かけるからアイシャたちが探してたら言ってくれ。」と言づけて冒険者協会に向かった。そして冒険者協会のドアの鍵が開いた瞬間に俺は中に入った。カウンターにはクリスがいる。「おはようございます。」カウンターに向かって歩く。開いたばかりだから当然ほかの冒険者はいない。あれ?反応がない。聞こえなかったのか。「おはようございます。」さらに近づくがクリスは反応しない。カウンターでずっと書類のようなものを見ている。「クリスさん?」カウンターに肘をつこうとしたその時だった。クリスの腰に光るものが見えた。俺はその光がクリスの短剣だと気づくのに数秒かかった。が、その数秒でクリスはカウンターを飛び越え、俺の首を絞め始めていた。「な、何のつもり、、ですか。」反応しようとしたがクリスのほうがもちろん速かった。「ショウ、昨日の夜テイスハイサーといたでしょう?何をしていたの?」俺の脇腹に短剣を当てているな。「それを話しに来たんだよ。」「昨日の夜、門の兵がある宿からテイスハイサーらしき人影が出ていったと報告があった。詳しく聞けばショウたちの宿だった。、、さて、何をしていた?」俺の首を絞める力が強くなる。だいぶまずいな。このままだと、殺される。、、仕方ない。「凶刃の舞・酷・乱華千本!」何とか詠唱できた。剣を抜かずにこの技をすればただ高速回転する技だ。俺は何とかクリスの拘束から解放された。「話を聞け。」さすがに俺の話聞かなさすぎ。「聞く必要ない。魔族の仲間なら、ショウ、あなたを私は殺さないといけない。」クリスが再び構える。「何とか言ったら?沈黙は肯定と取るわよ?、、、。そう。」クリスが突っ込んでくる。くっそ。どうせ今のクリスには何を言っても通じない。俺は剣を逆手にもって受け流す。「へぇ、剣技がきれいになってる。それが本当の力?」いや、多分気のせいだろう。仕方ない。このまま打ち合ってもいずれ俺がやられる。「テイスハイサーが仲間になると言ったらどうする!?」俺は剣を大きく振ってクリスを後ろに退かせる。「、、ありえない。」「ティアの姉がテイスハイサーだったら?」「もっとありえない。」、、信じる気がねぇな。まぁ、クリスはソフィリアの過去を知っているから魔族と分かり合おうなんて思わないだろうけど。それでも殺し合うことになるとは思ってなかったけど。「ありえるんだよ!」俺は必死に叫ぶ。クリスがまた構える。はぁ、本当にこんなことになるとは思っていなかった。「まぁ、こうなることは予測してた。」思ってたのかよ、、え?誰?いや誰かは分かるけど。入口から声がした。全く気付かなかった。テイリアスが立っていた。「テイスハイサー、、。」「敵意はない。」テイリアスはフードを外した。「、、!?」クリスが短剣を落としそうになる。「クリスさん、これで信じる?」「、、2階で聞く。」クリスは短剣を納め、階段を上り始めた。「ふぅ、なんとか命拾いした。」「危ないところだったね。ごめん。」テイリアスが頭を下げた。「謝ることじゃないけど、どうして来たんだ?」テイリアスは再びフードを被った。そして魔力を抑え始めた。今は俺と同じほどの魔力しか放っていない。「こうなることが予測できたから。」なるほど。理由としては十分だな。「それにティアはもう帰ったから大丈夫かなって。」そうか。ティアに会ってしまうと今度こそバチバチやってしまうかもしれないからな。もちろん何も知らないティアから仕掛けるだろう。俺はテイリアスと階段を上る。
個室でクリスに昨日の夜あったことをすべて話した。最初は警戒心を隠しきれていなかったクリスだったが、テイリアスとティアの過去を聞いてからだんだんと緩んでいるのがわかった。「なるほど。それでショウはクエストを作成しに来たわけね。」「頼む。」「んー、」クリスは腕を組む。「クエストを作るのは構わないけど、人が集まるとは思えないわね。だってウォシティってたしか20年位前に魔族に支配された街だから、行きたいっていう冒険者は中々見つからないと思う。」まぁ、そうだよな。「作るだけ作ってくれ。集まらなかったら俺だけでも行く。」「、、アリスちゃんたちは?」「言っていない。」「相談しないの?」「相談したらどこからか魔族に漏れるかもしれないだろう?」「なるほどね。まぁ、分かった。今日中に作っておく。、、、テイリアス。」クリスはテイリアスに向かって頭を下げた。「私が間違ってた。申し訳ない。」「いいよ。人類として当然の反応だし。まぁ、さすがに窓から飛び立つのはもうやめとくよ。」「そうね。うちの門兵が驚いちゃうからやめておいてくれると助かるわ。」なんか、クリスとテイリアス、波長が合っている気がする。「それじゃあ、頼んだ。」俺はクリスにそう言って冒険者協会を出た。テイリアスはいつの間にかいなくなっていた。おそらく空間魔法でも使ったんだろう。
6日後、俺は部屋で剣を磨いていた。そしてテイリアスのクエストが頭から離れない。さすがに人はまだ集まっていない。まぁ、1人でも行くと決めたから今更深く考えることはないか。クエストを作成してもらった後、クリスに「自分からはクエストのことをアリスちゃんたちに言わない方がいいよ。」と言われたから、3人には言っていない。当日も何かしら理由をつけて出るつもりだ。コンコン、とドアがノックされた。「アリスです。入っていいですか?」なんかあったっけ?「いいよ。」俺は剣をしまう。「あぁ、剣を磨いていたんですね。」「マドリフさんに怒られたからな。」廊下からアリスが部屋に入ってくる。「アイシャとニルティアは?」「ニルティアのレベル上げに行きましたよ。」「アリスはいかなくていいのか?」「私はショウさんに用があったので。」何かしたっけな。アリスはローブのポケットから紙切れを取り出した。「このクエスト、まだ人がいないんですけど、どうします?」紙に書かれていたのは俺が作ってもらったウォシティ潜入のクエストだった。クエストの内容はウォシティに侵入して地下牢にとらわれている人物を救出すること。「この印、王都騎士団のものですから報酬は期待できると思います。」紙には印が押されている。クリス、そこまでしてくれたのか。ありがたいな。「だが、相当難易度も高そうだが?」「そうですね。でも、ここ見てください。」アリスが指さしたところを見ると、「参加者:ソフィリア、王都騎士団、匿名」と書かれていた。この匿名は俺のことだな。「この匿名の人が少し気になりますが、ソフィリアさんも来てくれるなら安心できるんじゃないですか?」クリスには頭が上がらないな。ここまでしてくれたのか。まぁ、つまりテイリアスのことは王都にも伝わっていそうだな。でもこれは好都合かもしれない。魔王軍最強集団の1人を引き抜けるチャンスを逃したい奴なんていないはず。王城だってそこまでは動く。「アリスは行きたい?」「そうですね。地下牢に捕らえられている人を救いたいという気持ちはあります。」そうか、。心のどこかで一緒に来てくれることに喜んでいる自分がいるが、このクエストに参加してほしくなかったと思う自分もいる。複雑だな。「アリスがいいのなら行こう。」「はい!アイシャたちにも言っておきますね!」アリスは軽い足取りで部屋から出ていった。これで良かったのだろうか。俺は机の上に置かれたままの紙を見る。あと8日か。まぁ、出発の時間を考えると4日後くらいには出発だろうけど。俺は窓の外を見る。空は青く澄み切っていた。
さて、思ったより早く書けてしまいましたね。こんなに早く書き気はなかったんですど、まぁ、かけてしまったものは仕方ないので投稿します。これからはウォシティ潜入が始まりますね。これからも読んでいただければ幸いです!!では次の話で!!