28話 また刺客?もう飽きたんだけど。
はぁ、朝だ。今日も朝が来てしまった。俺は窓から差し込んできた日の光で目を覚ました。本当ならもっと寝ていたいが、今日は”あること”をしなければならないから、今日は二度寝できない。俺はベッドから転がり落ちるようにしてベッドから出る。まだまだ頭は起きていない。特大のあくびをしてから俺は服を着替える。あれをするのに俺は絶対に必要ないのだが、「ショウさんはパーティーのリーダーなんですから、来ないとだめですよ。」とアリスに言われてしまったから、今こうして準備している。剣を腰に差し、ベルトを締めて、ドアを開ける。階段を降りると、もうみんな揃っていた。「おはよう。」最近アイシャが反抗期な気がするのは俺だけだろうか。アリスはいい子だからそんなことはないけども。「おはようございます、ショウさん。」「お、おはよう、、ショウ。」ニルティアの挨拶は少し詰まり気味だったが、慣れてないのだろう。正直なんだかほほえましいと思ってしまった。ごめん、ニルティア。「みんなおはよう。早いな。」「そりゃあ、やることがありますから!私2時間前に目が覚めちゃいました。」アリス、それは気合入りすぎかな。今日はなんならあなたも来なくていい人なんだから。「ショウ、早く行こ。」アイシャに急かされ、俺たちは宿を出た。向かった先は、ゴブリン草原だ。
「さて、と。始めますかね。隠密。」アリスはニルティア以外の3人に隠密をかけた。ニルティアの耳がピクッと動いた。「ニルティア、来てる。」そう言ったアイシャの目線の先では、30体ほどのゴブリンがこちらに向かってきていた。だが、おそらく狙っているのはニルティアだけだろう。今日、俺たちがしようと思ったのは、ニルティアの実力調べだ。まぁ、まずはゴブリンと戦って、基本の動作を確認する。そして、同じ近接タイプの俺や、遠距離タイプのアイシャと戦う、というものだ。まぁ、あとの対人戦は明日でもいいって話になったから今日は本当にすることがないんだけど。「ギギギ!」あれだけ嫌だった鳴き声が、何も感じなくなった。ニルティアは腰から短剣を抜き、どちらも逆手に握った。クリスはどちらかを逆手に握っていた。「身体強化。」俺はゴブリンに切りかかるニルティアを見ながら、少し前に聞いた知識に疑問を抱いていた。「なぁ、アイシャ。」「、、何?」「いや、この世界って人類と魔族とエルフとドアーフの4大勢力しかいないのかと思ってたんだけど。」「まぁ、その4つの勢力で全体人口の8割は占めているけど、獣人族や竜人族、人魚族、とか。いろいろいる。私もすべて知ってるわけじゃない。それだけいる。」なるほど。「ありがとう。」俺の思っているよりこの世界は複雑なようだな。魔王以外にも敵対勢力があるし、めんどくさいなぁ。そんなことを考えていると、ニルティアが最後の1体を切り刻んでいた。「終わったな。アリス、隠密を解いてくれ。」「わかった。」隠密が解けた。まぁ、考え事はしていたけど。まぁ、ニルティアの戦闘はしっかり見ていたから大丈夫だと思う。正直あそこまで動けるとは思っていなかった。「どう、かな?」ニルティアがこちらに振り向く。「まぁ、いいんじゃないか?」と言う。そのとき、森のほうから多くの鳥が飛び立っていった。「ショウ、、少し不気味だよ。」アイシャが魔方陣を展開している。あぁ、俺だって気付いている。消失の森(ゴブリン草原よりも外側に広がる森)から異様な魔力を感じる。だが、テイスハイサーやソルカリドのような莫大な魔力ではない。なんだ?森のほうを目を細めて見る。誰だ?誰かが追われている?それを追いかけようとして時々魔法を使っているのか。「アイシャ、見えるか?」「えぇ、あれは、、、奴隷狩りね。」奴隷狩り、、。俺の知識が間違っていなければ、自身の奴隷を殺そうとする行為だ。しかし奴隷だって生きているから逃げる。その逃げている奴隷を追いかけることが奴隷狩り、と言ったはず。奴隷狩りをする奴は大体が頭のねじがぶっ飛んでいる。「ショウ、、助けて、あげて。」ニルティアが震えだした。そうか。ニルティアもされていたのか。おそらく殺されたのは別の奴隷だったのだろう。複数人で逃げ、何人か狩られて主人が満足した、、というところか。俺は森のほうへ少しづつ近づく。「アイシャ、アリス。人の奴隷に介入するのって犯罪になるか?」「まぁ、なるけど、正直あいつなら殺してもいいと思う。」アイシャ、さっきからすんごい殺気を放っていますが、、そろそろ抑えてくれませんか?すこーし集中できませんな。「出てきますよ。」アリスが魔方陣を森のほうへ向ける。「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」荒い息と共に現れたその人は、俺の目を一瞬で奪った。一目惚れ、いや、そんなレベルではない。そして、、申し訳ないけど、、、後ろからくる男たちを即刻殺して手に入れたいと思ってしまった。「ショウ、、?どうしたの?」「アイシャ、俺、あいつが欲しい。」「ったく、ほしいったって向こうにその気がないのならただ解放するだけになるよ?」「それでもいい。とにかく、後ろから来ている男たちは皆殺しだ。」まずい、俺は頭がおかしくなっている気がする。「ショウさん!目を覚ましてください!遅かったですがこれは幻影です!」幻影?「魔力の流れが少しおかしいです!」「あ、本当だ。なら。」アイシャが目を閉じる。より精密な魔力探知をしているのだろう。森から出てきた奴隷は俺の横を通り過ぎていったが、全く感触がないし、走ってすれ違ったのに風が起きていない。なるほど。「ショウ、あの木の裏。」アイシャが視線で教えてくれる。「アイシャ、致命傷を負わせるだけだ。殺すなよ。」「難しい注文するね。あとで何かおごってもらうからね。」「ベクチズ10本でどうだ?」「15で。」結構食うな。アイシャが木のほうへ右手をかざすと、アイシャの斜め右後ろに魔方陣を展開された。「アロブド。」そこから光の矢を出現させる。前にガデルで見たものよりは小さい気がする。威力の調整か。「いけ。」アイシャの声に従い、目にも止まらない速さで矢が放たれた。そして、木を貫通し、「がぁぁ、、、」という呻きが聞こえてきた。木の裏から人が出てくる。男か。そして肩を抑えているな。矢が当たったか。「アイシャ、ナイスショット。」「当然の結果。ベクチズ15本ね。」はい、また俺の財布から金が飛んでいく。「さて、と。」俺は男を縛り上げ、冒険者協会へ連行した。まぁ、今日の夜ご飯は決まったし、少しなら遅くなってもいいか。どうせ経緯を説明しないといけないだろうし。
書き終わりましたね。ニルティアが仲間になり、少し試験のようなことをしようとしていたときに現れた幻影とその発動者の男。こいつは何者なのか。この世界では敵は魔王だけではない、ということを忘れかけていたショウたちが再認識しましたね。では次の話で!!