23話 ウドルフ防衛戦(中編)
「クリス、さん?」おそるおそるクリスに話しかける。しばらくクリスは上を向いたままだったが、ゆっくりこちらを振り向いた。「すまない、油断したよ。避けたと思ったのに当たるとはね。」振り向いたクリスは右頬が削られ、目の下まで切れている、というか肉が削がれている。「、、まだ戦えますか。」ここで、「もうやめときましょう。」なんて言ったところで意味はない。なんなら今の言葉にもさして意味はないとは思う。でも、一応の意思確認だ。クリスは即答した。「決まっている。あいつを狩れるのは私だけだろう?」クリスは岩にもたれながら立ち上がった。「私はショウやソフィリアのようにオーズブレードは持ってないから強力なソードスキルは持っていない。でもね、」クリスの目から血が流れ始めた。「誰にも劣らないスキルは持ってるんだよ。悪魔の契約。」クリスの頬を伝っていた血が目に戻っていく。そして足元の草に付いていた血もクリスの頬に戻っていく。クリスの頬は元のように戻った。「ショウ、このスキルは一定の時間の攻撃を無効化するスキル。だけど文字通り悪魔の契約だから時間が終わるとその代償として受けた傷の150%を負わなければならない。終わった瞬間にさっきの状態に戻るし、そこに受けた傷が1.5倍になって帰ってくる。ショウ、あなたにこれからのウドルフ防衛の指揮を託す。」、、は?待て待て、、クリス、それじゃあまるで確実に死ぬからって言っているようなものじゃないか。「ショウ、ありがとう。」クリスは壁から出て森のほうへ走っていった。クリスが出ていったのとほぼ同時にさっき感じた異様な魔力を再び感じた。森の奥からどんどん近づいてくる。、、、見えた。俺はその姿を見た瞬間、言葉を失った。その姿は、人というより魔族といったほうが近いだろう。しかし、2足歩行をしている。そして腰には剣を差し、右手には大きな立派な槍を持っている。あれは、、俺が元の世界で先行していた世界史で習ったギリシャ神話の戦の神アレスにそっくりだ。「なぜここにソルカリドが、、?」アイシャが門から降りてきていた。「ソルカリドって?」「グロメントの1人で、グロメントの中では1番戦闘能力が優れていると言われている。人の命を刈り取るように殺していく様子からついた2つ名は”魂の狩人”」だいぶまずい敵だな。クリスがソルカリドに近づいていく。あるところでソルカリドが放つ魔力が豹変し、とんでもない威圧感を感じるようになった。今すぐに逃げ出したいと思ってしまうようほどの威圧。クリスが高速で切りかかる。が、ソルカリドはすべての攻撃を槍の柄ですべてはじく。そして槍の刃でない方の石突と呼ばれる部分でクリスの腹を突いた。「ぐあっ!」クリスがその場にうずくまる。まずい、さっきのスキルで無効化しているはずなのに無効化が追いついていないのか?それとも、あの槍のスキルか?動きたいけど動けない。俺の心は行きたいと言っているのに体がさっきの威圧で感じた恐怖で固まって動かない。ソルカリドが槍を地面に刺して剣を抜き、クリスの前に立ち、構える。斬首の用意だ。「しょ、ショウ、」アイシャも俺と同じような状況らしい。服の袖を引っ張られるが、力を感じない。ソルカリドが振りかぶり、剣を握りなおす。口元がにやけている。ゲスだな。くっそ、動けよ。「まったく、お礼をしに来たらなんてことになっているのかしら。炎獄・不知火の舞。」聞いたことがある声がした後、視界の全体で炎が不規則にゆらゆらと綺麗に舞った。。炎が出ている剣をしまい、その人は抱えていたクリスさんを下した。「ふぅ、間に合ったね。お礼に悩んでたけど、これでお礼になりそうだね。」ソフィリアだった。「、、、少し、、遅くないか?」クリスさんが荒い息をしながら言った。「助けてもらったんだからまずはありがとうでしょ。」ソフィリアはソルカリドのほうを見る。「へぇ、ソルカリド、か。」ソフィリアが剣先をソルカリドに向ける。「まぁ、いずれにせよ私の友人を殺そうとした罪は重いぞ?」ソルカリドが一瞬動いたように見えた。ソフィリアの頬から血が流れ始める。まさか今の一瞬で石を投げたのか?「そうか。」ソフィリアが頬を手の甲でこする。「炎獄・蒼炎の檻。」ソフィリアがソルカリドの周りを高速移動して連撃を仕掛けている。だがソルカリドはその場から動かずにすべて受け流している。ソフィリアが戻ってきた。「めちゃくちゃ硬い。蒼炎の檻防がれたら正直、勝算がなくなってきた。」剣を握るソフィリアの手が震えている。「では、こちらから行くぞ。」前のほうから声が聞こえた。と思うとソフィリアの背後にソルカリドが立っていた。
まさかの3分割でのウドルフ防衛戦になるとは思ってなかったのですが、しっかり書こうと思うと、3回に分けないといけなくなりましたね。さすがに次の話でウドルフ防衛戦は書ききれるとは思っています!!