18話 二刀流
俺たちは冒険者協会から出てアイシャの提案でハイゴブリンたちの反応が一番少ない裏路地で作戦会議をしていた。「ソフィリアさんは魔法は苦手だけど片手剣がとても得意で一人でオーガ20体を手玉に取ったっていう噂を聞いたことがある。」だいぶ格上だな。勝てる気がしない。「勝つ方法はあるのか?」「あるとすれば王都とかほかの地域から強い人を呼んでくるくらいしか、、、。」なるほど。とりあえず今の現状だと俺たちでは太刀打ちできるもんではないってことだな。よし。帰ろう。いや、けっこう真面目に帰ったほうがいいんじゃない?「ソフィリアさんが裏切るわけないとは思います。」アリスが言った。「根拠は?」アイシャがかみつく。なんだか、今日のアイシャはどこかおかしい気がするな。「アイシャ、どうしたんだ?」「なにが?」「なんだかいつもより気性が荒いというか、落ち着きがないというか、アイシャじゃないみたいというか、、。」「なによそれ。私は落ち着いてる。」いや、どう見てもおかしい。なんでだ?「根拠は、ソフィリアさんが誰よりも魔族を嫌っていると思うからです。」ん?「どういうことだ?」「ソフィリアさんは昔、両親と一緒にガデル郊外の小さな村に住んでいたと聞いたことがあります。その村の名前は”スルアッジ”。この名前の由来は小さな恐怖の村という意味です。ですがこの名前はある出来事の以後の村の名前なので本来のものではありませんが、今ではもう昔の村の名前の記録は残っていません。その出来事が、、。」「スルアッジ崩壊侵攻ね。」アイシャが引き継いだ。アリスが頷く。「スルアッジ崩壊侵攻は、20年前に魔族の侵攻によって家を燃やされたり、人が殺されたりと、村が崩壊させられた。まさか、、」「はい。ソフィリアさんの両親は家に入ってきたハイゴブリンたちからソフィリアさんを守るために時間を稼いで亡くなりました。その時に決めたそうです。強い冒険者になって自分と同じような思いをする人を二度と生まないようにすると。」なるほどなぁ、。でも、、「じゃあなんでさっきあんなことを言ってたんだ?」「それなんですが、おそらく催眠魔法か服従魔法にかかっています。」「でもソフィリアさんってゴールドランクでしょ?そんな人がかかる魔法?」「はい。一つだけ知ってます。グロメントの1人、レシオレの使う絶対服従魔法。レシオレの固有魔法です。確かあの魔法は目が魔法にかかるから目をつぶせば戻ります。強い人なら左右どちらかの目なので片目は仕方ありません。」「いや、それって失明だよな。」「そうですが、どうせ魔族の言いなりになるなら死んだほうがましっていう人が多いです。、まぁ、一応勝機はあるってことです。」へぇ、、うん、、そかそか。「でも、レシオレがここにいるとは思えないしいたとしても倒せないでしょ。」「誰が倒せないって?」背後から声がした。振り向くと、、、ソフィリアがいた。「君たち、何してるの?もしかして、冒険者?」ソフィリアさんが剣を抜く。赤い刀身、、、オーズブレードか。「冒険者は、、、狩る。炎獄・初夏の舞。」ソフィリアが信じられない速度で連撃を繰り出してくる。剣を抜こうとするが、、間合いに入られた、、!!ソフィリアが剣を振る。あぁ、、ここまでの異世界人生か、、。俺は目を閉じた。、、、、、あれ?痛くない。おそるおそる目を開けると、俺の首の近くで剣が止まっていた。ソフィリアが肩で息をしている。「はぁ、私は、、何を、、。」あ、あっさり戻ってくれたー。「、、、いや。、、、私は、、、冒険者を狩るっ!」戻ってなかったー。でも、剣は抜けた。間一髪でなんとかソフィリアの連撃を受け流し続ける。速度はそのままなのに連撃数がどんどん増えていっている。このままだと対応できなくなってしまう。「うっ!」ソフィリアが自らバランスを崩したような気がした。俺はその隙をついてソフィリアの腹に蹴りを入れる。「うっ、、。」ソフィリアは数メートル飛んだが綺麗に受け身を取ってすぐに立ち上がった。ソフィリアの右目が赤い。でも左目は青い、、。なら!「アリス!ソフィリアの目の色は!?」アリスとアイシャは俺とソフィリアが打ち合ったことで生じた音に寄せられてきたハイゴブリンの対応をしていた。「両目とも青です!」青なのか。なら、、あそこか。「アイシャ、、目の治療はできるか?」こんな質問をする日が来るとは思わなかった。「早期ならできる。必ず成功させる。」「分かった。」俺は剣を構える。もちろん、あの突き技だ。俺が構えて狙いを定めていると、ソフィリアが剣を捨てて腕を広げた。「、、はぁ、、早く。、、はぁ、、、」ソフィリア精神力強すぎるだろ。「今やる。凶刃の舞・酷・無神突き。」一気にソフィリアの右目へ向かって剣を伸ばす。ズチャッ!!すまない、、。俺はその光景を見られない。見る勇気がない。俺は剣を抜いた。ドサッ、とソフィリアが地面に倒れこむ。アイシャが走ってきた。「結界張って治癒するから5分稼いで。」「任せろ。」俺は剣を振る。地面に赤い液体が飛び散る。「ギギギ、」ゴブリンに囲まれた。『ジョブ:二刀流を獲得しました。』お、久し振りのシステム君だ。二刀流、か。でも俺剣1本だし、、、あ、。俺の視界にもう1本剣が見えた。そう、ソフィリアのオーズブレードだ。、、いや、認められなかったときに終わるぜ?「ギギギギギギ。」距離を詰めてくる。考えている暇はないな。俺は赤い剣を拾う。拾った瞬間後悔した。手首が激痛に襲われたからだ。「ぐっ、、。」まだだ、、ソフィリアがなんとか魔法に抗ったんだ。俺だって、、。『ソードスキル:炎獄 を獲得しました。』よし。じゃあ早速、「炎獄・初夏の舞。」一気に二本の剣で15連撃をゴブリンたちに浴びせる。いや、二刀流いいな。めっちゃ強いじゃん。俺はソードスキルに頼りまくり、ゴブリンの数をどんどん減らしていった。「ギギギ。」ラスト1体。「おらぁぁ!」俺は二本の剣を平行に振ってゴブリンの胴を切り裂いた。どこからか拍手が聞こえる。「いやはや、、まさか私の魔法が破られるとは、、とても興味深いです。」声がした方を振り返ると屋根の上に人影が見えた。その声を聞いた瞬間、俺の全細胞が逃げろと言っているような気がした。なんだ、、魔族だからか?いや違う。魔力の格差か?確かに格差はすごいだろうが、、また違う。そうだ、、こいつが口を開いて空気を震わせるたびに俺の体が拒否反応を起こしているんだ。「あぁ、申し遅れました。私、魔族軍魔王直属近衛兵のレシオレ、と言います。以後お見知りおきを、。とは言ってももうあなた方に”以後”はありませんが。」レシオレはふわっと降りてくると、とんでもない大きさの魔方陣を展開した。「さて、楽しい冒険者狩りを始めましょう。」
はぁぁぁぁ、ついに、グロメントとの遭遇ですね。個人的にはめちゃくちゃ楽しいんですが。自身の目を失う代わりに目の前にいる大好きな冒険者を守ろうとしたソフィリアがちょっとでも好きになってもらえたらうれしいですね。次も頑張って書きます。