プロローグ ~最弱までの道のり~
俺の知っている「転生小説」、「異世界転生小説」その多くの世界で主人公は「ぶっ壊れのスキル」やら「最強になった!」やら、とにかくその世界で最強になっている。俺はそんな「転生物」が大好きな大学生、三宅 昇だ。そして今日も大学からの帰り道にある本屋で俺の好みの本を探すとしよう。教授に「三宅くん、君、ちゃんと授業聞いてる?」と90分の授業の中で10回は聞かれた。断じて聞いていないのではない。ただ、頭に入っていないだけだ。これの積み重ねで単位を落としかけているのも分かっている。が、しかし、分かっていても「だから勉強して頑張ります。」とは言っていない。頑張りはするが、頑張ったとてテストの点が2点3点しか上がらないという現実を知っているからだ。「はぁ、」肩を落としてため息をつきながらいつもの本屋に入った。転生物の棚は向こうだなぁ。その時の俺はぼーっとしていた。これがこれから始まる「最弱転生」の引き金になる行動だったとは、この時の俺は全く考えていなかった。「、、い!おい!!」なんだ?こっちは疲れてんだよ。閉じていた目を開けて目線を上げると黒いパーカーを着て本屋の店員に包丁を突き付けている男(?)がいた。「おい!お前、そこに跪け!」これまでの人生で「外で刃物を持った人」なんかに出会ったことがなかった俺は動揺を通り越してパニックになった。「え、、え?えぇぇぇ!?」「うるせぇよ!」黒パーカーに叫ばれてすぐに黙る。「おい!早く金詰めろ!」店員さんが脅されている。こーゆーときに助けられたら後々警察とに感謝状とか贈られちゃったりするんだろうなぁ、と妄想に浸っていると、店員と目が合った。助けを求められている?いやぁ、ちょっと、というかだいぶ無理かな。店員さん、ここはあきらめて金を渡して帰ってもらうのがいいと思いますよ、と必死に目で訴える。「おい!なに目ぇ合わせてんだよ!」黒パーカーにばれた。ほらぁ、だからやめときたかったのに、、はぁ。って、黒パーカーは俺に向かって近づいてくる。なんでなんで?俺はおとなしくしてたのにさ、店員が目を合わせてきたんじゃん?俺は悪くないって。「お前、ほんとに生意気だな」「いや、俺は何もしていませんって。店員が全部、、」「っるせぇよ!」最後まで言わせてほしかったな。黒パーカーは俺の脇腹を蹴った。あぁぁ、、めっちゃ痛い。柔道で受け身取れなくて打ち身した時より痛い。「ムカつくなぁ!」店員にむかっていく。あ、ちょっとその動きはまずいかも。前にテレビでやってた、『逆上した強盗犯が店の店員を刺した』って。ん?でも今の逆上の理由は俺ってことになるのか?「おい待てよ!」待ては俺だろ!なんで声出してんの?黒パーカーは振り向く。「なんだよてめぇ。正義ヅラしてんじゃねぇぞ!?」男が包丁を振りかぶる。あ、まずい。なんだかとても世界の流れがゆっくりに見える。ゆっくり包丁が振り下ろされた。あ、なんか、首筋がどんどん冷たくなっているような。目を開ける力もなくなって、、あぁ、、あのシリーズの最新刊読みたかったな。まだ完結してなかったし。あぁ、もう無理かな。俺はゆっくり目を閉じる。
閲覧いただきありがとうございます。異世界転生と言えば、「最強・ぶっ壊れ」のイメージが強い私が「最弱」の物語を書くとどうなるのか見守っていただけると幸いです。