表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/69

9話 君は地獄を見て何を思う?

 次の日の朝、俺とアリスは冒険者協会の前に来ていた。「思っていたより早く着いてしまいましたね。」「余裕を持って出てきたが余裕を持ちすぎたな。」まぁ、宿にいてもお互い落ち着かないので出てきたのだが。「お、君たちも遠征に参加する人?」アリスと話していると声をかけられたので声のほうへ振り向くと、8人いた。なかでも2人は魔力が高いな。高いといっても平均より少し高いくらい。平均が50だから70~80といったところか。少しだけ威圧感がある。「あ、俺はこっちの4人とパーティーを組んでるエドワードだ。」4人、と言われたときにエドワードの近くにいた3人がお辞儀をしてきた。俺は少し頭を下げてから自己紹介をする。「俺はショウ。こっちはアリスで、2人でパーティーを組んでいる。」「ショウとアリスか。よろしく。」「こちらこそ。」アリスがふんわり微笑んで応える。「私はノール。残りの3人でパーティーを組んでいるわ。よろしくね。」「よろしくお願いします。」今度は俺が反応する。「おっと、俺たちが最後か?」知らない声がして、振り返ると大きな大剣を持った男と3人フードを深くかぶった人たちがいた。「あぁ、俺はロイルだ。よろしくな。こいつらは俺のパーティーメンバーだ。」「あ、あぁ、よろしく。」なんだ?この人。何か違和感がある。「それでは行きましょうか。」エドワードに促され、俺たちは出発した。

 ゴブリン草原に差し掛かった。「アイシャ、頼む。」エドワードがそういうと、俺たちの周り結界が張られた。「アイシャは簡単な結界魔法が使えるんです。うちのパーティーの魔法使いをしてもらっています。」「よろしくお願いします。」アイシャと呼ばれた人は俺たちに向かってぺこりと礼をした。マジで助かります。アイシャ様、、。こんな中に俺がいていいのだろうか。全く役に立たないと思うのだけれど。「思ったよりゴブリンが少ないですね。」「ラッキーですわね。」エドワードとノールが前方で話している。俺は後ろをすっと見る。やはり、何か違和感がある。どこにその違和感を感じているのか分からない。俺が見ているのがばれた。「そこの兄ちゃん、何か用か?俺の顔をずっと見ているようだが。」「あ、すまない。特に何もない。」「そうか!ならいいがよ!」ロイルは笑い飛ばして俺の後ろを歩いている。それから3日間、俺たちは歩き続けた。、、もちろん、ちゃんと休息は取ったが。

 「そろそろ砦が見えてきます。」エドワードが言った。「あ!あれですかね?」アリスが言う。この3日間でアリスは皆、ロイルのパーティー以外のメンバーと仲良くなっていた。「そうですね。」「二人とも下がって!」少しアリスとエドワードが前に出て歩いていると、ノールが叫んだ。「まずい!」エドワードが剣を抜いて振る。速すぎてほぼ見えなかったが、地面に折れた矢が落ちていた。「、、はめられたな。ここまで敵がいなかったのは、、」「この狭いところで私たちをまとめて倒すためね。」「木の上だ!」俺たちはエドワードの叫びとほぼ同時に上を見上げる。「、、っ!?」木の枝に、、。「きっ、、きゃぁぁぁ!!」アリスが叫ぶ。「これは、、、人か?」ノールも動揺している。そう、木の上に、ハイゴブリンはいた。しかしそれ以上に恐怖を感じさせたのは、地上から5m木の枝に串刺しにされた大量の人間たちだった。その人間たちから血が地面に向かって落ちている。ピチャッ、ピチャッ、と音を立てているところもある。なぜこんなに奥に来るまで気づかなかった?地面を見るとそこら中が赤く染まっている。「この赤さは、、血だったのか。」エドワードが剣を構える。「ギルギッギ!」「ギギー!」ハイゴブリンたちが木から飛び降りてくる。「全員防御態勢!ハイゴブリンおよそ20体!これだけとは考えられない!ゴブリンだからって油断するな!必ず他に何かある!」「あ、あ、、、あ、、、あ、、。」アリスが上を見たまま固まってしまっている。そりゃそうだよ。こんな惨状はまだなりたての冒険者が見るものではない。そしてそのアリスにハイゴブリンが飛びかかる。まずい!「アリス!風神斬、、」だめだ、アリスが重なって打てない!「ダッシュ。」俺の脇を閃光のような速さで何かが通った。そのままその光はアリスの周りをまわり、止まった。「間に合ったわね。」光の正体はノールだった。「あ、、あ、ノールさん。」ノールはアリスの肩に手を置く。「アリスちゃん!しっかりして!あなたは生きて帰らなきゃいけないでしょ!?」「は、、はい。」「アイシャ!アリスさんが落ち着くまで彼女の周りだけでも結界を!」「ゴブリンが近くにいます!難しいです!」とゆうか、アイシャだってゴブリンに襲われていて短刀で対応しようとしているからスキルの詠唱なんてなかなか出来ないだろう。ん?「ロイルさんのパーティーは!?」いつも間にかロイルのパーティーが消えていた。「どこに行った?」エドワードが剣を振ってゴブリンを切り捨てながら言う。「わからないわ!」ノールも動き回って敵を混乱させながら着実に数を減らしている。「おっと、俺のことを探しているのか?」声がした方を振り向くと、そこには赤く染まった大剣を持ったロイルがいた。ゴブリンの血は青いはず、。しかしあいつの剣には赤い液体がついている。「おい、、それ、、どういうことだ?」エドワードが剣でロイルの奥を指す。「あぁ、こいつか?」ロイルが足を動かすと、奥から人間の腕が見えてきた。腕にはブレスレットが見えた。あのブレスレットをつけていたのは、、「リエット!!」エドワードが叫ぶ。そうだ、エドワードのパーティーの前衛の一人、リエットさんだ。「ふっ、ははははは!!」ロイルが大声で笑う。「お前、、どういうつもりだ?」「おっと、よそ見してるとゴブリンにやられるぜ?」エドワードにゴブリンが殴り掛かる。「くっ!」エドワードはそれを受け流して胴に剣を突き刺す。俺も剣技と風神斬りで着実に倒してはいるが、まったく数が減らない。「おうおう、、だんだん数が減ってきたな。さてと、、」「お前!冒険者殺しは大罪だぞ!?」ノールがロイルに切りかかる。しかしロイルはそれを大剣で受け流した。あの速さに反応できるやつとか俺が相手できるわけないんだけど、、。でも、、リエットさんと話したとき、この人はいい人だ。と心から思った。リエットさんが冒険者をしている理由を、『田舎で暮らしている家族を楽にしてあげるため』と楽しそうに語っていたのを俺は覚えている。「この野郎、、。許さねぇ。」「おっと?お前もやるか?最弱君?」出発してすぐに俺は自分のステータスが最弱であることをみんなに伝えている。その時もリエットさんが真っ先に「そんなの気にしないよ!。もしものときはみんなで守りあえばいいんだから!」と言ってくれた。「お前だけは許さない。」俺は漆黒の剣を抜く。「へぇ、オーズブレードか。意味ねぇだろ。最弱のお前が持ったところでよぉ!あ、こいつもいるか?」ロイルはさらに奥から誰か引きずってくる。「、、っ!」ノールさんの仲間のルノイさんだ。話したことはないけれど、纏う空気がいつも優しい人だった。たった3日間、、でも3日間一緒にいればそれはもう仲間といっていいだろう。その仲間を殺したやつは許せない。『ソードスキル:凶刃の舞・酷×10 を獲得しました。』ソードスキル?あぁ、マドリフさんに教えてもらった。剣には最低1つオリジナルスキルがついていると。そのスキルはある条件で解放される。レアリティが高い武器ほど強いスキルがついている。使ってみるか、、「おいおい、どうした?かかって来いよ。」ロイルは俺を手で挑発する。「みなさん、ゴブリンは頼みます。」「任せなさい。ルノイは、、口数は少ないけど、、いい子だったの。」ノールはロイルから離れてゴブリンを倒しに行った。最後のほうの声は震えていた。「ショウさん。リエットの仇を、、頼みます。」エドワードは涙を流しながら剣を振っている。「ショウさん。頼みましたよ。」アリスの声。ふっと振り向くと、いつものアリスが立っている。「私はもう大丈夫です。」そういうとアリスはゴブリンのほうを向いて、「ドレッドファイアーボール」と無数の小さな火の玉を出現させた。「や!」放たれたファイアーボールはゴブリンたちを焼き尽くしていく。「さぁさぁ、俺たちも始めようか、どうやって俺を楽しませてくれるんだ?」ここまで怒りで体が支配されそうになったのは初めてだ。「今すぐに殺してやる。」俺は剣先をロイルに向ける。「凶刃の舞・酷・乱華千本」こんな技名知らないけど自然に声に出た。俺の体が勝手に動いていく。滑らかに宙へ飛んだ俺は回転しながらロイルに連撃を食らわせる。「なかなかやるじゃねぇか。」ロイルに大剣で受け止められる。でも、、数に耐えられるかな。「ぐっ!」少しづつ後ろに下がっている。また体が勝手に動いて、ロイルの腹に蹴りを入れる。「がはっ!」ロイルは後ろへ飛んだ。俺は完全に怒りに支配されていた。「すぐに殺してやる。」俺は剣を握りなおして地面にうずくまっているロイルに近づく。

閲覧ありがとうございました!今回から少し重めの話が続きますが、、読みごたえはあると思っています!楽しみにしていただければ幸いです。怒りに支配されたショウがロイルをどうするのか。まだまだ続きます!(1話の中で仲間が二人も死ぬのはやりすぎだと私も思っています。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まさかこんな展開になるとは思ってなかったです、、、! そろそろ最弱のショウが覚醒するのかなと思うと、楽しみすぎますね。こんなに感情を露わにするショウは今まででも珍しいので今後どうなるのか本当に気になる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ